大河「あたしは…一人でも、平気…だから」

夕暮れの放課後、大河はそう言って微笑んだ。
寂しさを滲ませながら。
今更ながらに思う。
俺が…こんな顔をさせてるんだってことを。
俺は唇を噛み締めながら、ずっと口に出せなかったことを紡ぎだした。

竜児「………俺が………」
大河「え?」
竜児「…俺が…無理だ…」
大河「…え?」
竜児「お前が…平気、でも…俺がダメだ!」
大河「!」

大河の目が見開かれたのがわかった。
ごめんな。
俺のせいで悲しませた。
でももう大丈夫だ。
ちゃんとわかったから。
だからもう、悲しまないでくれ。
俺は顔を上げると、真っ直ぐ大河の目をみつめた。



竜児「俺、気付いたんだ。俺にとって、誰が必要か…」
大河「竜児…」

未だ呆けたように見ている大河に大股で近づいた。
見上げてくるおおきな目。
それを暫しみつめた後、おもむろにその頭を俺の胸板に抱き寄せた。

大河「りゅっ!竜児!?」

戸惑ったような大河の声。
だがそれに構わず、俺は言葉を続けた。

竜児「…高須、竜児は…」
大河「え?」
竜児「逢坂大河を…愛しています!」
大河「っ!」

反射的に胸を押される。
一瞬の抵抗。
しかし、俺は構わず大河を抱き締め続けた。
しばらくしてから、その腕から力が抜けた。
それと同時に、俺はそのまま大河の小さな体ごと、力の限り抱き締めた。

竜児「だから、これからもずっと…ずっと、俺の傍にいてくれ…っ!」
大河「りゅう…じぃ…」

泣き声混じりに俺の名を呼ぶ大河。
その小さな手が背中に回されたのを感じ、俺は初めて微笑んだ。
一つの確信とともに。

竜児『手に入れられたんだ…隠された…たった一つのものを…』




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