〜竜児の戦い〜

ダンダンダン!
「ちょ、竜児、いつまで入ってんのよっ」
「待て・・・ちょっと待て・・・うう」
高須竜児は絶賛腹下し中である。キリキリと痛む腹を抱え原因を探るが心当たりがない。
冷蔵庫の管理は完璧で期限の切れた食材はない。
夕食の食べ合わせだって問題はないはず。
ご飯、豆腐とワカメの味噌汁、あじの開き、里芋の煮っ転がしにほうれん草の和え物。
本日の大河様のご希望通り和食で調理も完璧だ。
なのにこのざまは何だ。
そうだ、大河、大河はどうなんだ?
「おーい大河!大か小かどっちだ?うおっ」
声を張上げるとまた強烈な腹痛が。
「小よ小!早く出ろ!!」
そうか、下痢は俺だけか。
「・・・おい大河・・・今無理だ・・自分の家帰って・・しろ」
「無理!そんな暇ない!漏れる早く!」
トイレの前でペタンペタンと裸足で跳ねる音がする。
すぐにでも出てやりたいのは山々だが出られる状況じゃない。
一応拭いてはみるがパンツを上げようとするとまた便意が。
このまま出れば悲惨なことになるのは間違いない。
「あ〜竜児もう無理もう出る」
今度は廊下をベタベタと歩き回る音がする。すまん、大河もう少しだけ辛抱してくれ。
ガタンッ
不意に足音は途絶え静かになった。さすがに自分の家に帰ったかな?
竜児は少し落ち着いて腹をさすり便意との格闘に専念する。

ガタンッ
お、帰ってきたか。大河、正直すまんかった。
しかし次の瞬間竜児は足下に生ぬるい水が入ってくる。なんだこれ?
「竜児〜漏らしたぁ〜」
「ちょっバカ!お前何やって・・・」
竜児は無理矢理便意を押し込め尻を素早く、しかし念入りに拭き流すと同時にドアを跳ね開けた。
が、そこにはコップ片手にニヤニヤしている大河が立っている。
「え?」
「フン、ぬるま湯よ。あんたがあまりに私を苦しめるからいたずらしてやったまでよw さっさとパンツ上げなさいよこの駄犬w」
「おうわ!」
急いでパンツとズボンを上げる。ちっ、大河やつタダ見しやがったな?

しかし大河は平気そうで良かった。
俺の飯のせいでコイツを苦しめるわけにはいかないからな。
竜児はテレビを見ながらニコニコしている大河の横顔を見てフッと笑みを浮かべ
足下のぬるま湯を拭き取ると再び戦場へと帰って行った。




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