時刻は午前三時。
竜児は仕事の疲れからかぐっすり眠っていた。
竜児の隣にはもちろん大河。

その大河は激しくうなされていた。
「りゅ、竜…児…」

〜〜〜〜大河の夢のなか〜〜〜〜
「おっと、買うの忘れてたやつあった、大河、ちょっと待ってろ。すぐ戻ってくるから。」
「え?竜児っ!私も行く!」
「いいから!そこで待ってろ!」
竜児は今来た道を走りはじめた。この時大河には見えていた。竜児の前の信号は赤。竜児は赤信号に気付いていない。その横からは大型トレーラーが走ってきているのを。

「竜児!前見て赤だから!」

竜児は走りながら大河の方を振り返った。
その瞬間色々な音が大河の耳に入ってきた。

クラクションの音、トレーラーのブレーキ音、竜児とトレーラーの衝突音…
この時大河の目線から竜児が消えた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!竜児ぃぃぃぃ!!!!
「おぅ!」
竜児は大河の大音量の悲鳴で目が覚めた。
大河は全身汗だくで激しく息を吐き続けている。
「おい!大河!なんだよ、どうしたんだよ!」
「はぁ…はぁ…ぁ…竜児が…はぁ竜…児…が…」
「大河!しっかりしろって!ちょっと待ってろ水持ってきてやるから!」
「いやっ!竜児っ行かないで!」「でもっ!」
「お願いだからっ!今はどこにも行かないでっ!」
「……大河…。」
大河が落ち着くまでかなりの時間を要した。
「どうだ、落ち着いたか?」
「……うん。ごめん……。」
「何があったんだよ?怖い夢でも見たのか?」
「竜児…竜児が私のせいで車に轢かれて…それで…っう…死んじゃ…う夢を…」
「大河泣くなって、俺ここにいるだろ?ほらっ触ってみ?」
竜児は大河の小さい右手を自分の心臓にあてた。
「うん…動いてる…よかった…夢で…。」
「もう大丈夫。心配すんな、お前残して死んだりしねぇから。」
「お願い竜児…一緒に寝てよ…私を抱き枕にして…」
「よし、来い。安心して寝な。」竜児はギュッと大河を抱きしめ、大河も体を預けるように抱かれた。
「竜児の匂い安心する。ホッとする。」
「大河…ありがとよ。」
大河はすっかり安心しきってゆっくりまた眠りに落ちた。
そして朝。大河を起こさないように布団から離れ、竜児は職場の先輩に電話をかけた。
「あ、先輩。朝早くすいません…今日なんですけど、少し都合悪くなってしまって…休ませてください。」
休むのを承諾された竜児はもう一度布団に潜り込み大河に抱きついた、起こさないようにゆっくり抱きしめた。
「お前残して死ねるかよ。」
竜児は大河を見た。
大河は楽しそうにも、嬉しそうにも笑っていた。大河の右目から一粒の水滴が流れた。



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