竜児「そういや、もうすぐクリスマスだな」
大河「・・・そっか。もうそんな時期なんだ・・・」
竜児「今年のクリスマスはみんなで集まるか?北村も生徒会長引退したし、パーティーは家でってことで」
大河「・・・」
竜児「大河?」
大河「・・・去年のイブの夜は、絶対に忘れないわ」
竜児「?ああ。俺が着ぐるみきて、なりきりサンタしたあれか?我ながら恥ずかしいことしたよな」
大河「ううん」
竜児「違うのか?ああそしたら北村主催のクリスマスパーティー。お前と川嶋が・・・」
大河「あたしが・・・」
竜児「ん?」
大河「あたしが、あんたへの気持ちに気付いた大切な日だから」
竜児「・・・へ?」
大河「・・・言ってなかった?」
竜児「あ、ああ・・・何も、聞いてない・・・」
大河「そっか・・・」

そう呟くと、大河は夕焼けの空をどこか遠い目で見上げた。

大河「・・・あの日ね、あんたをみのりんのトコへ追い出したあと、あたし部屋戻って・・・あんたのマフラー握り締めてボロボロ泣いちゃった」
竜児「!」
大河「最初は自分がなんで泣いてるのか分からなくて、それで考えたの。そしたらわかった。これは、あたしが竜児に縋ってたから・・・竜児をずっと好きだったからなんだ、って」
竜児「・・・」
大河「ホントにあたしはバカで、取り返しのつかないとこまで行かないと自分の気持ちにも気付けなくて、それで泣いて泣いて・・・笑っちゃうよね。送り出したあんた追いかけて、路上で号泣しちゃったわよ」
竜児「・・・」
大河「でも今あんたはこうして傍にいてくれる。あたしを好きでいてくれる。それは全部あの日に気付いたことが始まり、だから・・きゃ」

不意に被さるように、竜児が背後から大河を抱き締めた。

大河「りゅ、竜児!ちょっとここ商店街!」
竜児「ごめん、な」
大河「え?」
竜児「お前がそんな風になってたなんて、全然気付かなかった」
大河「あ、当たり前よ!あの時はあたしがみのりんとあんたをくっつけようとしてたんだから!あんたが謝ることなんて、一つもないわよ!」
竜児「お前がバカだってんなら、俺も同格だ」
大河「え」
竜児「俺もお前が好きだって気付かなかった。それまでお前がどれだけ傷ついてたのかも。だから・・・ごめん」
大河「竜児・・・」
竜児「もう二度と間違えない。二度と離さない。お前が離してって言っても絶対離してやらないからな」
大河「竜児・・・」
竜児「覚悟完了しとけ」
大河「うん。・・・ありがと、竜児・・・」
竜児「俺もありがとうだ。出会ってくれて、好きになってくれてありがとな、大河」
大河「えへへ・・・」
竜児「よし帰るか!大河なにが食べたい?今日はお前の好きなもの作ってやる」
大河「いいの!?そしたらねぇ、えっとぉ・・・」

人差し指を顎に当て、楽しそうに献立を考える大河。
それを優しく微笑みながらみつめる竜児。
夕焼けに伸びる二つの影は、今しっかりと互いの手を握り締めて離れることはない。きっと永遠に。



作品一覧ページに戻る   TOPにもどる
inserted by FC2 system