「ねぇ大河、本当に高須君とは付き合っていないの?」
「しつこいよみのりん、アイツとは何でもないって」
「う〜ん、でもなんか大河と高須君って永年連れ添ったカップルっていうか……」
「永年って……どれくらい?」
「う〜ん、10年くらい?」
「10年もアイツといたら……」




『ねぇ竜児』
『なんだ?』
『あんたと付き合いだしてもう10年ね』
『まだ10年じゃないぞ、9年と11ヶ月だ』
『あんたのその細かいところ変わんないわね』
『お前も変わらないよな、背が低いところとか』
『血の雨が見たいようね……』
『その短気な所も可愛いところも変わんないな』
『なっ!?』
『ん?どうかしたのか?』




「なーーーーっ!?」
「どしたの大河?」
「りゅ、竜児が……」
「ん?俺がどうかしたのか」
「りゅ、竜児!!ああ、アンタが変なこと言うから……」
「は?」
「あ、アタシのこと可愛いとか……///」
「へ……?」

こうしてお互いは意識していく。


「うぅむ」
「うわっ高須君だ、めっちゃ怒ってる!!」
「恐っ!!殺される!!」
「うぅむ」
「どうした高須、『困った顔』して」
「おお北村、いや大河に言った覚えが無いことを俺が言ったって言われて……」
「言った覚えの無いこと?」
「ああ、初めて会った時から思ってはいたんだが、口したことは無かった筈だし」
「どんな内容だ?」
「え……そ、それは……またにしておく。じゃあな」
「あ、高須?どうしたんだあいつ。お、逢坂じゃないか」
「あ、北村君」
「そうだ、丁度良かった逢坂。さっき高須に会ったんだが……」
「えっ!?りゅ、竜児?あ、あれはただの思い違いというか妄想だったというか……とにかく違うの!!」
「何を言っているんだ?」
「ああ、えっとそれは……そ、それより竜児は?」
「高須なら帰ったようだぞ。それとさっき高須から聞いたんだが、高須が言った覚えの無いことって何だ?」
「へ?あ、あああそ、そそそれは……りゅ、竜児は何か言ってた?」
「何でも、初めて会った時から思っていたことだが口にしたことは無いと言っていたぞ?何のことだ?」
「え……思ってた?」
「ああそう言っていたぞ?」
「……///」

本人の知らぬ所で物語は加速していく。



「なぁインコちゃん」
「なっ、なンだい?何だ、い?」
「俺大河に可愛いなんて言ったっけかなぁ?」
「大河、可愛い、大河、可愛い」
「ヤバいなぁ、無意識に言っちゃのかなぁ?」
「い、意識、意識意識」
「あ、そろそろ大河が帰ってくるな、今日はスキヤキだから下ごしらえしないと」
「スキ……ヤキ……スキ……」
「ただいま〜お邪魔するわよ〜」
「おぅ」
「あ、りゅ、竜児」
「ん?どうした」
「な、なんでもない」
「そうか、俺は晩飯の支度すっから」
「わかった。あっブサ子」
「大河、たい、が」
「おお、アタシの名前を言えるようになったか」
「大河、可愛い、大河可愛い」
「えっええええど、どこでそんな言葉を……」
「いし、き、意識、スキ……スキ……大、河……」
「ええ?ブブブサ子が何でこんな事を?まさか竜児がブサ子に……?」
「ふんふんふん〜♪あとはこれとこれを切ってと……」
「……竜児///」

歯車はもう回っていた。



『大河、実は俺お前が好きなんだ』
『……知ってるわよ、アンタブサ子にそのこと言ったでしょ?』
『あ、まさかインコちゃんが……』
『もうばっちり言ってたわよ』
『し、しまった』
『あんたもドジね』
『た、大河はやっぱり北村が……』
『……竜児、アタシね……』
『?……待て大河、お前凄い顔が赤いぞ?風邪じゃないか?』
『えっ?あ、違うの、これ……ひゃっ!!』
『う〜ん少し熱っぽいな』
『りゅ、竜児、ちち、近い。竜児のおでこが……』
『どうした?』




「わーーーっ!!」
「わっどうした大河!?」
「え……あれ?」
「もう遅いから丁度起こそうと思ってたんだが……何か変な夢でも見たのか?」
「ゆ、夢?」
「?……待て大河、お前凄い顔が赤いぞ?風邪じゃないか?」
「えっ?あれ、これ現実?……ひゃっ!!……手?」
「う〜ん少し熱っぽいな」
「〜〜〜っ!!!」
「スキヤキ食った後そんな所で寝るからだ。今風邪薬持ってきてやるよ」
「あ……行っちゃった」
「風邪ぐす、り、風邪、薬」
「ブサ子、アンタのせいで変な夢見たじゃない」
「変な、夢、ユメ」
「そりゃあアタシだって竜児が嫌いな訳じゃないけど……」
「りゅう、じ、りゅうじきら、いじゃない」
「あんな夢見るなんて……まっるきり恋人じゃない」
「コイビ、ト、恋、ビト」
「大河〜あったぞ〜こっち来て水と一緒に飲め〜」
「あ、わかった〜」
「今日はちゃんとあったかくして寝よ」
「わかってるわよ」
「それじゃおやすみ」
「おやすみ」
「ふぅやっと帰ったか。ごめんな、インコちゃんも眠いよな、今カバーかけてやるからな」
「りゅ、りゅうじ」
「おお?俺の名前を!?」
「きき、きら、いじゃない、竜児の、こい、びびと、ユメ」
「!?」



「たっだいま〜って竜ちゃん?まだ起きてたの?」
「……俺、嫌いじゃない?恋人が夢?……俺、きら」
「竜ちゃん?」
「おわっ!?泰子?帰ってたのか?」
「今帰ったんだよぅ。竜ちゃんこそまだ起きてたの?」
「げ?もうこんな時間かよ!?」
「そうだよぉ。竜ちゃんがちゃんとしてないと大河ちゃんも心配するよぉ?」
「大河が……?」
「そうだよぉ大事な大事なお嫁さんなんだからねぇ」
「は?」
「大河ちゃんはぁ、私の娘になるんだからぁ」
「おい?ちょっと泰子?」
「大河ちゃんらってもう納得してるんらからぁ」
「待て待て待て!?初耳だぞ!?だってアイツは……」
「スー……スー……」
「寝たのかよ!?おい!?泰子!?」
「スー……スー……」
「ダメだ、こなったら起きやしない」
「……う〜ん、竜ちゃぁんアタシもうお婆ちゃんになっちゃったよぉ……」
「気が早すぎだ!!変なこと寝言で言うな!!大体俺が大河とけけ、結婚なんて……」
「何の話し?」
「だから俺が大河と結婚するなんて……た、大河?何でここに?」
「何でってもういつもの時間だし……そ、それより今、アタシとけけ、結婚がどうのとか……」
「あ、ああ、そ、そそそれは……そうだ!それはインコちゃんが……」
「たい、がとけっこ、ん、大事、な、およ、めさん♪」
「「!!!」」



「やぁやぁお二人さん、昼だぜぇ!!って……何かあったの高須君、大河?」
「くっ櫛枝?い、いや何でもないんだ。ほら大河、今日の弁当」
「あ、ありがとう竜児……あっ!?」
「〜〜っ!!」
「?二人ともなにやってんの?ちょっと手が触れたくらいで……」
「な、なんでもないよみのりん」
「そお?何か妖しいなぁ。いつにもまして恋人同士というか……」
「ここ、恋人だなんて……」
「そ、そうよ、結婚なんてまだ早いわ!!」
「バ、バカ!!」
「あっ!?」
「結婚?」
「「な、何でもない何でもない」」
「ふ〜ん。ねぇ大河、本当に高須君とは付き合ってないの?」
「え……と……」
「即答しないの?いつもの大河なら即答するのに!?これは……決まりだべぇ〜!!」
「いや、違うのみのりん!!本当に付き合ってないの!!ただ結婚の約束しただけで……」
「あ、大河!!」
「結婚の約束?えっ嘘?」
「あっ!?」
「なんだいなんだい大河?アタシに隠しごとかい?言っちまいなYO!!聞くぜぇ、超聞くぜぇ!?」
「……今朝竜児(の飼ってるインコ)に大事なお嫁さんって言われた……」
「おおう!?高須君!?」
「いや、俺は大河が俺と恋人になりたいって(インコちゃんから)聞いたから……」
「いいねぇいいねぇ!!眩しすぎるYO!!」
「そうだったのか……」
「き、北村!?」
「水臭いぞ高須、この間から言っていた、『最初に会った時から思っていたこと』とはこのことだったんだな!!」
「えっ!?あ、いや……」
「!!りゅ……竜児///」
「おおう!?二人は巴里もよりも熱く燃えているぜ!!」
「考えてみればやはりお似合いな二人だな!!」
「いや、確かに大河の面倒見るのは嫌いじゃないって言うかむしろ好きなんだけど……」
「……///」
「でも俺も大河も年齢的にもまだ結婚できる歳じゃないし……ってそうじゃなくて」
「はっはっはっ!!気にするな高須!!もうすぐお前は18歳、両親の合意があれば結婚できるぞ」
「はっ!?そういえば、泰子が大河は娘だとかなんとか……」
「えっ!?やっちゃんが?」
「おお、もう親公認の仲に?」
「私にも自分を見てくれる親が出来る、竜児が傍にいてくれる……」
「た、大河……?」
「竜児……アタシでもいいかな///」
「〜〜っ!!!///」
「言うまでもないようだな」
「そうだね。高須君大河を泣かせたら許さないんだから!!」
「逢坂も末永く高須を慈しんでやってくれ」
「「///」」


−高須家−

「いい、いっけ、んらくちゃ、く♪」



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