大河「ねえ、竜児!みのりんからエアメールがきたよ!」

ある夏の日、久々のオフの大河が、ベランダへと顔を出した。


『そして続く今』


竜児「へえ!櫛枝なんだって?確か今、海外でソフト連戦中だよな?」
大河「うん!負けてねーぜって写真にも書いてある」
竜児「写真?」

洗濯物を干す手を止めて、竜児が大河の手元を覗き込む。

竜児「!・・・ははっ」

思わず笑いが漏れる。
大きく『負けてねーぜ!!』とマジックでかかれた写真の中、初恋の人は、彼女の今最も大切な人と抱き合っていた。

竜児「・・・川嶋も元気そうだな」
大河「うん」

写真を見て目を細める大河。
その瞳には、親友を託して間違いなかった、悪友の顔が映っていた。

大河「モデルの仕事、1年以上も休んでみのりんに付いていったんだもん。元気じゃなきゃ」

大河が安心したように頷く。二人ともが今幸せなのを確認して。
それでもかつての親友を奪われたのが気に入らないのか、

大河「・・・今度会ったら、『みのりん泥棒』じゃなくて、『みのりん強奪女郎』って呼んでやろうかしら・・・?」
竜児「やめとけ。不穏だ」

そう言って嗜める竜児の顔にも、笑顔。笑顔。
そうして繋がってく今に、喜びを現して。





『ピンポーン』

そんな中、響き渡る呼び鈴。
顔を見合わせる竜児、大河。

大河「きたかな?」
竜児「多分な」

もう一つの繋がって行く今。
この間の電話で、今日ウチに来ると言った親友。
シーッと二人で口に指を立て、わざと黙っている大河竜児。
そのまま放置したら、案の定、ドンドンと叩かれる扉。
合わせた顔が、思わず苦笑する。

???「開けろ高須ー!いないのかー!?」

響き渡る懐かしい声。
竜児が一呼吸置いてから声をかける。

竜児「開いてるから、乱暴すんな北村!」
北村「なんだ居るなら返事しろ!俺はともかく、彼女を待た・・・」
竜児「つか、お前じゃ壊れそうだから、嫁さんに開けてもらえ!自己紹介つきでな!」
北村「・・・えーと・・・それは本気で言ってるのか?高須?」

数瞬の間を置いた返答。
動揺を隠せない親友に、声を出さずに竜児は笑う。
大河に至っては、痙攣寸前だ。

竜児「当たり前だ!その為にきたんだろ!?」
北村「・・・わ、わかった・・・」

それからしばらく話し合う気配。
北村も苦労するな。
そうだね。
竜児の言葉に、大河も笑う。
暫らくのあと、再び鳴り響く呼び鈴。

竜児「どうぞー!」
狩野「お、お邪魔する。こここの度、北村の嫁になった、かか狩野すみれと・・・」
大河「ぷ!あはははは!!なんだそれ!?あ、あんた緊張しまくりー!」
狩野「て・・・手乗りタイガー・・・」

玄関まで飛び出して指差して笑う大河。
真っ赤になりながら、飛び掛かろうとする狩野を北村が後ろから抱き止める。
竜児が、笑顔をたたえたまま二人を室内へ迎え入れる。
そうして繋がる今を、彼らは生きていた。

大河「そういえばさ、竜児?」
竜児「ん?」
大河「さっき、北村『も』苦労するな、って言った意味、あとでゆっくり話し合おうね?(ニッコリ)」
竜児「・・・」

END





作品一覧ページに戻る   TOPにもどる
inserted by FC2 system