「おい。早くしないと遅刻だぞ?」
竜児はピタリと立ち止まると、有に3歩は遅れている大河を振り返った。
「わ・・かってる・・・わよ・・・」
どこか苦しそうにしながら大河は答える。
荷物はすべて竜児が持ってくれていた。
しかしその両手は、片方は壁に、片方は下腹を押さえたままで、青ざめて見える顔は、確実に具合が悪そうであった。
「なんだ?腹でもこわしたのか?」
その言葉に揶揄する響きを感じ取って、キッと大河が睨みつける。
しかしその双眸も弱々しく、普段の力強さは感じられない。
「いい・・から・・先・・行きなさい、よ・・・」
「それは出来ない相談だな」
にやりと笑われて、大河がギリッと奥歯を鳴らした。

「お!おっはよーい!!」
いつもの待ち合わせ場所に10分は遅れて着いたのだが、そこには実乃梨が律儀にまだ待っていた。
途端に大河の顔から、先程よりも血の気が引いたのがわかった。
「おっそいぞー?なにや・・・あれ?なんか大河具合悪い?」
「へ?な、なんで?」
「な・・なんでって・・・」
どこか怪訝そうに実乃梨が呟く。
そんなものみれば分かるからだ。
血の気の引いた顔は、青いを通り越して白く見える。
カタカタと身体が凍えてるかのように震えている。
歯の根が合わず、歯がカチカチと鳴りつづけている。
そして全身どこか・・・おかしいのだ。
「た、たい・・・」
「なんか腹こわしちゃったみたいでさ」
思わず近寄ろうとした実乃梨の前に、竜児が割って入った。
「昨日食べたスイカが悪かったらしい」
「そ、そうなの?」
「ああ。遅れたのだって、トイレに篭ってたからだもんな?大河?」
「あ・・う、うん・・そう・・!ひあっ!!」
不意に、ビクンッ!と大河の背筋が伸ばされた。
「あ!あ!あ!だ、だめ・・!!」
「た、大河!?」
へたり込むように座り込んだ大河に、実乃梨が駆け寄る。
「大丈夫!?大丈夫、大河!」
「だい・・じょう・・ひああ!!あ、やめ、だめ・・あっ!!ああああああ!!」
大河はガクンガクンと体を痙攣させると、そのまま糸の切れた人形のように地面へと突っ伏してしまった。
余韻のように、その身体がビクンビクンと時折跳ね上がる。
「た、大河!?大河!?ねえしっかり!!」
オロオロとその身体に触れていいものか分からず、宙を右往左往していた実乃梨の手が不意につかまれた。
「櫛枝。ここは俺に任せろ」
「高須君!?だ、だめだよ!こんなに具合の悪い大河放っておけないよ!!」
「でも俺達にできることは、救急車を呼ぶか、どこかで休ませることぐらいだろ!?それなら俺一人でできる。大丈夫。後で連絡する。お前は学校に遅れる旨を伝えておいてくれ!」
「!!わ、わかった!!」
実乃梨は少し躊躇するように、まだ蹲っている大河をみつめた。
しかし振り切るように踵を返すと、一目散に学校へと駆けて行った。



残されたのは虎と竜。
「・・・あーあ、やっちゃったな」
口を開いたのは竜。
そうして右手をポケットから取り出す。
握られているのは小さなリモコン。
そこにあるメモリは、Lv8を示していた。
「あ、あんた・・ずる・・っ!い・・き、なり・・パワー・・あげ、っ!?ひああああっ!!」
「あんた・・・?」
スッと竜児の目がほそめられた。その凶悪な相貌に相応しく残忍に。
「口のきき方がなってないな、大河?」
「あ!あ!や、やめ!!い、イッたばかりで、び、敏感・・・っああああああああ!!」
ビクンビクンと身体を震わせながら、地面の上を大河が悶えながら跳ね回る。
そう。
今大河の体内には3個の遠隔ローターが仕込まれていた。
2個は膣に。
1個はアナルに。
その振動が容赦なく、大河の狭い内壁を擦りあげていたのだ。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!い、言い直します!い、言い直しますからぁ!」
「だめだ」
「ひっ!」
ぴしゃりと言われ、大河の顔に絶望が走る。
「このまま10回イけ。そうしたら許してやる」
「そ・・そんな・・し、しんじゃ・・っひゃあああああああああ!!」
「ほら3回目だ。安心しろ。壊れる前にはやめてやる」
「ああああああああっ!!いクッいクッいクううううううううっ!!」
「10回イッた後には罰ゲームだ。学校までイくのを我慢できなかった罰として、お前のショーツを取り上げる。ノーパンのまま学校まで行け。気をつけろよ?もし万が一途中で落とすようなことがあれば・・・今度はスカートを没収するからな?」
「あう!あう!あう!あ、ああああああ!!」
「周りに知られたくなけりゃ、せいぜい頑張れよ?俺の可愛い肉人形」
「あ!ああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」






朝のベランダ。
日課の洗濯を竜児がしていると、おもむろにマンションの窓が開いた。
目を向けると、、なにやら不機嫌な手乗りタイガー。
「ん?よう大河」
「・・・いやな夢を見たわ・・・」
「え?」
「犬が主人で・・主人が鬼畜で・・・あたしが躾られて・・・とにかく最悪な夢・・・あんな・・・あんなの・・・」
そう呟いてわなわなと震える大河に、竜児が不思議そうに首を傾げた。
「・・・その割には・・・」
「なによ?」
「なんでお前嬉しそうなんだ?」
「え!?」


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