「旅行は家に帰るまでが旅行だぞ、気を抜くなよ!」
「まったねー大河」

「ふぅ、帰ってきたな……スーパー寄って買い物していくか」
「……疲れてるんだから主婦臭い用事で話しかけないで」
「はいはい」
「……竜児」
「ん?呼んだか?」
「……なんでもない」
「なぁ大河」
「………………」
「洞窟の中でもうダメだって思った時さ、不謹慎かもしれないけど思ったんだ」
「………………」
「あの夢、俺がいて、泰子がいて、犬小屋だけど家があって……お前がいる。そんな未来も悪くねぇなって」
「!!」
「お前は嫌がってたけどさ、俺は、何かそれも幸せな気がしたんだ。川嶋に言われたからかな」
「……ばかちーはなんて?」
「俺に櫛枝は合わないってさ」
「………………」
「夜中に、あんだけ広い部屋なのに2DKの時と同じ距離感で一緒にいるのは不思議と違和感を感じなかった」
「……私も感じなかった」
「なんかさ、あそこにインコちゃんとか泰子がいたらもうウチと変わんねぇよな?」
「そう……かもね」
「俺思ったんだ、こんなに気を使わないで一緒にいられる女子って大河くらいだろうなって」
「私も北村君と一緒で緊張の連続だった……竜児と一緒だとそんなことないのに」
「この旅行で一番安らげたのはあん時だったなぁ」
「……私も、あの夢は意外と……」
「あ!!今日は肉の特売日じゃねぇか!!どうした大河?何か言いかけてなかったか?」
「うるさい駄犬」
「何怒ってんだよ?」
「怒ってないわよ」
「じゃあ今日の特売なんだが……」
「……行ってあげるわよ」
「本当か?サンキュ」
「せいぜい私のためにおいしい夕飯を作りなさいよね」
「たまにはお前も手伝えよ」
「ヤダ」
「そっか」
「……?何で嬉しそうなのよ?気持ち悪い」
「き、気持ち悪いとか言うな!!」
「じゃあなんなのよ?」
「いや、やっぱり大河とこうしてるのっていいなって思って」
「……主婦臭い」
「う……」
「でも、嫌いじゃない」
「あ……?」
「……あの夢は予知夢だったのかもね」
「え……今なんて……」
「いいからさっさと行くわよ特売!!キリキリ動きなさい!!」

(……アンタは、いつかみのりんよりも私を見てくれるかな……?)

虎は竜を待っている。いつまでも、いつまでも。



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