「あんたってさ……ほんと忠犬だったよね」
「毎日毎日私のためにご飯作って、掃除して、洗濯して……」
「気付いたら60年だよ?60年」
「ねえ、覚えてる?校庭で私が北村くんに振られちゃった時のこと」
「『俺は竜として、ずっと虎のそばにいる』……そう言ってくれたこと」
「あんたすごいわ。ホントにやっちゃうんだもん」
「私ね……今すっごい幸せなのよ?こんな人生が私を待ってるだなんて、あの時は考えもしなかったわ」
「……ありがとね」
━━おう。
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「ちょっと!そんなとこで寝てたら風邪ひいちゃうよ〜?」
「大河……俺は……」
「……?おじいちゃん?」
「ハッ……おぉ竜河か、スマンスマン、ついウトウトとな」
「おじいちゃん、寝言でおばあちゃんのこと呼んでたよ??」
「ハハハ、恥ずかしいな」
「おじいちゃん、おばあちゃん死んじゃってさみしい?」
「いやいや、さみしくなんかないさ。お前たちがいるからな。それに……」
「それに?」
「いいや、なんでもない。さ、お母さんのお手伝いをしてきなさい」
「……?はぁい」トテトテ
「……それにな」
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『大河……俺は別に
『あんたに飼い主からの最後の命令よ!心して聞きなさい』
『私はしばらくあんたの顔が見たくないの。60年も同じ顔見てたらなんか飽きちゃったわ』
『だから、あんたには休みをあげる。当分の間は孫の面倒でも見てなさい!』
『せいぜい長生きするのよ。竜児。』
『それでも、どーしてもどーしてもどーしても飼い主から離れたくないってんなら……』
『また暮らしてあげるわ。いいわね?』ニッ
━━━
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「……飼い主様からのご命令があるんでね」
完
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