『逢坂大河に捧ぐ……お前は……』

「あーっダメだ!!どうもうまく書けねぇ!!だいたい今更大河宛の詩をうっかり書いたなんて変だろ!?何し

てんだ俺……今までに書いた奴も変なのばっかだし」

『大河、お前は虎のように獰猛で、凶暴で、人を犬呼ばわりするような奴だが……』

「これだけ見たら喧嘩売ってるよな……」
「何見てんの竜児?」
「おわぁ!?たたた、大河、お前いつの間に!?」
「ちゃんとノックしたわよ」
「き、気がつかなかった」
「気がつかないアンタが悪い。で、これ何?」
「あ、それはダメ……」

『大河、お前は虎のように獰猛で、凶暴で、人を犬呼ばわりするような奴だが……』

「………………」
「……あ、あの大河?これはだな……」
「……アンタ、言いたいことがあるんなら口で言いなさいよね」
「い、いやそうじゃなくて……」
「何が違うっての!?こんなもん書いてアタシへの嫌がらせ?はっ、本人に言えないから書くなんてとんだ根暗ね、ネ・ク・ラ!!どうせこの続きっぽいそっちの紙もアタシの悪口で一杯なんでしょうね!!ふん!!」
「あっ!?バカそっちはもっと見るな!!」
「そんなに見られたらマズイ事でも書いたわけ!?この駄犬!!主人に隠し事するな、んて……」
「ああ!?止めろ、いや止めて下さい!!ある根暗でいいから!!見ないでー!!」

『……その実、寂しがりやで泣き虫で我が儘で、でも真っ直ぐで、いつも生き生きとしてて、俺に『竜児』って何気なく声をかけてくれるそんなお前が……』

「……竜児」
「あ、ああああああ……何て恥だ……」
「竜児!!」
「はっ!?はい?」
「恥だと思うの?これ」
「いや、だって……」
「アンタ、アタシに何て言った?」
「え?」
「アンタにラブレターの件で夜襲かけた時、アンタは私に恥でも何でもないって、そう言ったのよ」
「………………」
「これも恥なんかじゃない。……だからいつか、その続きをアンタの口から聞かせてよね」
「え、大河……」
「今日はもう帰る。また明日ね、竜児」
「おい、ちょっと……ホントに帰っちまった……アレ?あの紙どこいった?……まさか!?」

髪の長い少女の手には紙切れが一枚、いや二枚。

「そんなお前が……か。ふふっ」




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