幸福の手乗りタイガー伝説再び

「なぁなんであの富家幸太が彼女作ってんだ?」
「ほんと富家のくせに」
「不幸の申し子のくせに」
「なんでも、幸福の手乗りタイガーに触ったらしいぞ」
「何だって?噂は本当だったのか!?こうしちゃいられん!!」
「お、おい!?」
「みんな行くぞ!!」

***

「どうだ大河、今日の弁当はお前の好きなミートボールを自作してみた」
「んー、まぁまぁね」
「ってそういいながら俺の分まで食うな!!コラ!!ちゃんと冷水につけたレタスも食べろ!!」
「うっさいなぁ。ほらあーん」
「なっ!?だ、騙されないぞ、今日は騙されないぞ。そうやって可愛い顔して俺にレタスを食わせてお前はミートボール食う気だな?」
「可愛い顔……///」
「あ……///」
「たのもぉー!!幸福の手乗りタイガーはいずこ!?」
「なんだあの1年生集団?」
「手乗り、タイガーですって?」
「わっバカやめろ!!人は殺すなよ人は!!」
「あっ、手乗りタイガーだ、触らせて!!」
「ん?何だい1年生諸君、手乗りタイガーに触りたいのかい?」
「あっ櫛枝先輩!!そうなんです、幸せになりたいんです!!」
「ほぅほぅ、しかしのぅ手乗りタイガーに触れる人間はもぅ一人しかいないのだよ」
「そ、それは一体?」
「その名は、ヤンキー高須!!」
「えっ!?あの有名な!?って恐!?こここ殺される!?」
「………………」
「りゅ、竜児?その、元気出して?」
「あ、ああ」
「いや、でも俺達は諦めない!!絶対に触ってみせる!!とうっ!!」
「触んな……カス」
「ぐわぁ!?」
「ああ!?1年生Aが手乗りタイガーに触れる事も無く吹き飛ばされた!?くそっみんな続けー!!」
「おわぁ!?何で1年生が50人から来てるんだぁ!?」
「仕方ないわね……高須君、大河」
「く、櫛枝?」
「ここは私に任せて逃げるのよ!!地平線の果てまでも!!」
「え、いや櫛枝」
「み、みのりん……」
「いやお前も泣きそうになるな!!」
「さらばだぜベイビーたち。俺の屍を超えてにげるんだZE!!」
「みのりん……わかった!!いくわよ竜児!!」
「いやまだ弁当が……おわぁ!?腕に抱きつくな!!」
「……ふっ、いったか。さぁ君たちの相手はこの櫛枝だ!!」



「ふぅようやく生徒会の仕事が、って何だこの教室の荒れ様は!?学級委員の俺がいないと昼休みにこうまで荒れるものなのか!?」
「き、北村君……」
「櫛枝?どうした大丈夫か?傷は浅いぞ?」
「高須君と大河を頼む……ガクッ」
「おい!?」



「追手はないようね……」
「なぁ大河」
「何よ」
「いろいろと間違ってる気がするんだが……」
「何が?」
「とりあえず腕離してくれ。校内では流石に恥ずかしい」
「あっ!?アンタいつの間にアタシの腕を!?」
「お前が掴んだんだお前が!!」
「あぅ……」
「あ、いやあのな……」
「いたぞー!!手乗りタイガーだ!!」
「げっ見つかった!?」
「みのりんがやられたっていうの!?」
「触らせ……ぶぉっ!?」
「だから触んな、カス」
「おお、あの手乗りタイガーがヤンキー高須に護られている!!」
「へ……って大河!?俺の腕を武器代わりにするな!!」
「うるさいわね、だったらあんたが私を護りなさいよ」
「へ……」
「私があんな奴らに触られてもいいっていうの?」
「それは……イヤだ」
「なら……」
「わかったからとりあえず逃げるぞ!!昼休みさえ終わればこっちのもんだ!!」
「そうね、死んでいったみのりんのためにも私たちは逃げ切らなくちゃいけないわ!!」
「いや、櫛枝は死んでないと思うぞ」
「あ、そっか」
「チャーンス!!ぶおわぁ!?」
「危な……って北村!?」
「油断大敵だぞ、高須、逢坂」
「お前まで何して……」
「櫛枝から話は聞いた。俺もお前らを助け……」
「おい北村!!」
「あ、会長」
「そこの校則違反の二人組み、高須と逢坂を捕まえろ!!その二人廊下を走ったばかりか校内で腕を組んでアタシに見せつけやがった!!」
「……すまんな高須、逢坂」
「お前……」
「会長には逆らえないんだ……」
「こ、この裏切り者ーーっ!!」

友を失い、裏切りにあい、それでも二人の逃避行は続く(笑)



「あれー?どこいったんだ二人とも?」
「いないな……?」
「………………」
「……行ったな」
「……行ったわね、ってちょっと竜児、頬に胸が当たる」
「仕方無いだろ、狭いんだから」
「そうだけど……ひゃっ!?ちょっとアンタ何処触ってんの?」
「えっ?何処って?」
「アンタむむ、胸さわさわ触ってる!!」
「えっ!?」
「は、離れてよ!!」
「バカ、今更ここから出られるか!!出たらソッコー見つかる!!」
「ちょっあんまり動かないで……ひゃっ!?」
「大体、お前がこの掃除用具箱に隠れようなんて言うから!!」
「前隠れた時は大丈夫だったんだもん!!」
「前って北村と俺の鞄間違えたあの時か!?お前出てきたじゃねぇか!!」
「う、うるさい!!」
「ちょっ!?背中に腕回すな!!くすぐったい!!」
「し、仕方無いでしょ!?狭いんだからあんたも我慢しなさい!!」
「我慢しなさいって……」
「?どうしたのよ?急に黙って?」
「……いい香りがする」
「ばっ!?な、なに嗅いでんの!?このエロ犬!!」
「い、いやすまん!!なんか胸にあたる柔らかい頬と、腕に当たってるのは、これは……」
「あ、ち、ちょっと動かさないでって!!きゃ!?」
「これは、まさか……胸!?」
「っ!!」
「何か、思ったより気持ちい……いやいや弾力がある、じゃなくて……」
「〜〜っ///」
「うわっ!?あんまり背中の手の力を強くすんな!!痛いって!!」
「〜〜っ///って……あれ?」
「な、何だ?」
「アンタの胸、思ったより硬い……」
「そりゃ悪かったな」
「そうじゃなくて、男の人の胸なんて初めて触ったけど……なんかがっちりしてる」
「はぁ!?」
「思ったより、たくましいんだ、竜児……」
「う……///」
「ちょっ黙んないでよ、恥ずかしいじゃない!!」
「仕方ないだろ!!腕に気持ちいいのが当たるわいい香りがするわオマケに胸の中にお前がいるんだから緊張くらいする!!」
「あ……///」
「お前だって黙ってんじゃねぇか!!」
「し、仕方ないでしょ!?」


「なぁ、何かあの空き教室の掃除用具箱から人の気配、ってか話し声が聞こえない?」
「さぁ?そういえばさっき1年生が大勢誰か探してたみたいだったけど?」
「生徒会も誰か探してたよね」
「ここに隠れてたりして?」
「どうする?開ける?」



「しっかし、まさか北村が裏切るとは……」
「そうね、北村く……」
「どうし……!!」

「とりあえず開けて見ようか」

「マズイ……」
「くっ……」
「よいしょ……ぐわぁ!?」
「た、大河?何もいきなり殴るこた……」
「い、いいから逃げるわよ、竜児!!」

「ちょっ!?大丈夫?」
「痛タタタタ、アレ?」
「どうしたの?」
「ああ!?今朝から痛かった親知らずが抜けた!?もう全然痛くない、スッゲー!!」
「一体何が起きたんだ?」
「さぁ?」

「逃げるって何処へ?このままだと屋上だぞ!?」
ギィ……。
「ほっ、良かった、屋上には誰もいないみたい」
「そうだな」
キーンコーンカーンコーン。
「おっ!?チャイム鳴ったな。これで一年も教室に戻るだろ」
「………………」
「大河?」
「幸福の手乗りタイガー……か、バカみたいだよね」
「どうしたんだ?」
「私に触っていいことがあるなんてあるわけないのに……」
「………………」
「本当にみんなバカみたい」
「そうか?そういや今日は随分とお前に触ってたけど……」
「エロい言い方すんな!!」
「なんか、幸せな気分になれたぞ?」
「………………」
「でもさ」
「………………」
「お前の幸せは誰に触れば良いんだろうな?」
「竜児……」
「ん?」
「アタシはずっと前から手乗りタイガーって呼ばれてたけど、幸福のって呼ばれるようになったのはアンタに出会ってからだったんだ。だから……」
「だから?」
「……なんでもない。教室に戻ろ?」
「お、おぅ」

「捕まえなくていいんですか?会長?」
「そのつもりだったんだがな。まっ今回は先に騒いでた1年生を取り締まる事にしよう」
「はははっ」
「お前、何笑ってる?そういやお前は逢坂に触ったことがあるのか?」
「ありますよ」
「……何かいいことがあったか?」
「良い出会いがありました」
「そうか」

その後、親知らずが抜けた生徒がきっかけで、幸福伝説はさらに輪をかけるのであった。

おわり。


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