仮面ライダー


コタツに入りながら大河と二人でみかんを食う。
季節は一月。外に出るのが面倒でテレビを見ながらまったりと過ごす。

『新ライダー 仮面ライダーディケイド! テレビ朝日にて絶賛放映中!』


竜児「今年も仮面ライダーが始まったな」
大河「意外よね。アンタが特撮見てるだなんて」

大河の言葉に頷く。
子供のころから俺はヒーローが好きだった。

竜児「憧れたんだよ。大切な人を守りながら戦う戦士に」

子供のころ、高須竜児は非力だった。
泰子が必死に働いている時、自分は家事と勉強することしかできなかった。
力がないのが嫌だった。早く彼らのような大人になりたい。ずっとそう思ってた。

父親がいない俺にとって、彼ら――仮面ライダーが理想の兄であり親父だったんだ。

竜児「ガキっぽいって思うか?」
大河「笑わないよ。あたしのサンタさんの時だってアンタは笑わずにあたしの側にいてくれた……ねえ、竜児」
竜児「なんだ?」
大河「今でも、ヒーローに……仮面ライダーになりたいって思う?」

俺は黙って大河を抱きしめた。

竜児「今の俺にはそんな大層な力はいらない。ただ、俺の大切な人を守れるだけの強さがあればそれでいい」
大河「……大丈夫。それなら竜児はきっと強い戦士になるよ」

黙って抱き返してくる大河。


そのぬくもりが心地いい
俺は抱きしめる腕に力を込める。

大河「もう離さないでね。あたしの仮面ライダー」
竜児「ああ、何があろうとお前は、俺が守る――幸せにするから」


仮面ライダー。
幼いころに憧れたあなたたちとは違うけど。
俺も見つけたんだ。
自分の夢と生きる目的を。
大切な人――大河とずっと一緒に生きていく。
当たり前だけど何よりも尊い幸せを。
俺はずっと守るよ。

『それでいいんだ』

ブラウン管ごしに、10人の仮面ライダーがふと、そういってくれた気がした。

FIN




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