「夢っていいよね?」
夕飯が終わった居間で、寝転がりながら大河が言った。何やら本を読んでいるらしい。


『日常の一コマ』


「なんの話だ?」
洗濯物を畳みながら、気のない風に竜児が聞き返した。
しかし大河はそれには気付かず、ニコニコと竜児に笑顔を向ける。
「夢に逃げるんだよ。だってさ、夢ならどんなことでも叶うんだよ?好き放題!すごくない!?」
興奮気味の大河をスルーし、ちらりと読んでいる本に目を向ける。
『ポジティブに逃げる10のメソッド』
内容はわからないが、とりあえずろくでもなさそうだなと竜児は思った。
「そんなの、いいか?」
洗濯物を畳み終えて、竜児が立ち上がる。
「いいに決まってんじゃん。なんでも思い通りだよ?」
同意を得られなかったのが気に障ったようだ。
座り直して、見上げながら口を尖らせる大河。
「そうか?俺は・・・」
顔をあげた大河の傍に片膝をついて少し屈む。
ちゅ
「お前にこうして出来る現実の他はどうでもいいけどな」
そう言い残して洗濯物をしまいにいく竜児。
残されたのは真っ赤になった虎一匹。
「・・・」
しばらく身動きせずにいた大河だが、
ボスッ
手に持っていた本をゴミ箱に放り込むと、頭から座布団を被ってじたばたと身悶え出した。
「なにしてんだ?」
「うるさい!?」
戻ってきた竜児にぶっきらぼうに言い放つ。
とりあえず、この真っ赤になった顔は見せてやるもんか!!
そんな風に思いながら。

たぶん大抵こんな毎日




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