きっと、ここは世界が終わる瞬間なんだろう…
おおよそ、人とは呼べない、異形の集団がひとりの男めがけて集結している。
その数は、10いやもっと…

なにがなんだかわからないといった感じで困惑している彼の後ろから爆発音が響く

それも、一度や二度ではない、何度も何度も爆発音が響いている
彼は、ただただ狼狽するしかなかった。この世界の終わりをただ見ているしかなかった。
どんなに、彼が願おうとも「この世界の傍観者」でしかなかった。
手をこまねいて世界の終わりを見ているだけ…

そのとき、異形のものたちが爆発音とともに、倒れ朽ちている光景が目に入る…
一体、誰が…
彼は異形のものを倒している正体を暴こうと、あたりを見回す…が、結局正体は分からずじまい…
いや、正体はそこここにあふれていた…
なぜなら、彼らは彼らで潰しあっていたからだ。

そして、最後の一人がその式神であろう龍とともに朽ち倒れたとき、
その龍の後ろから、いままでの異形のものとは形がちがう異形のものを彼は目にする。

彼は、その異形のものの名前はおろか正体も知らない…しかし、口は勝手に動き
「ディケイド」
と、声にだし、その異形のものをそういう風に呼んでいた。

暗転






「…はっ!」
気づいたら、机の上につっぷしていた自分がいた。
今まではどうやら夢の中であり、そして、白昼堂々と居眠りをしていたようだ…

「また、あの夢」
ぎらぎらと、目を鋭くさせていささか不機嫌な様子を見せる。
安眠を妨害した太陽を消し去りに行こう。というわけではなく、
彼にとってその夢自体が不機嫌をあおるきっかけになっているようだ。

カランカランと、ドアのベルが「ちょっと!!」なった。
というか、ベルと「ちょっと!」という声が同時に聞こえた気がしたが…
「なによ!?この写真!」
女性は、出来上がってる写真を彼に見せた、クレームだ。
「いや…なにって…」
彼は少し、困惑したが、そのクレームの出所を知っている。
あいつか…とひとりごちる。
「世界で一枚の写真っていったから、撮らせてあげたのに、なによこれ!!」
女性はあからさまに怒っていた。
「これは…ひどいですね…」
「そうでしょ!?」カランカラン「ちょっと!」

またか…彼は頭を抱える。

あいつめ、またこんなにいっぱい…
彼はその鋭い目をさらに鋭くさせた。このクレーマーどもを地獄に叩き落そう。とそういうことを考えてるのではない
頭が痛かったのだった。

一体、どうしようか。そう思った瞬間

「竜ちゃんどーしたのぉ?」と間延びのある声が聞こえた。
建物の奥からは長い金髪をたくわえた女性が何事かと顔を覗かせた。

「あなたが、ここの責任者!?」
クレーマーAが彼女を問い詰める。
「ええっ!?」あからさまに混乱してるようだった。無理からぬことだろう。
何事かと顔を覗かせたばっかりに、クレーマーに目をつけられて、平気な人はいないだろう。

「泰子!あと頼む。俺は大河のところへ文句言ってくるから!」
目つきの鋭い彼は、これ幸いとばかりに、泰子と呼ばれる金髪の女性に丸投げして、外に飛び出した
「ああっ!ちょっとぉ〜、竜ちゃ〜ん!」
泰子は困惑してたようだが、相手にはしてられなかった。





彼の家は小さな写真館を経営しており、カメラマン兼オーナーの高須泰子と受付の高須竜児の二人が切り盛りをしていた。
ある日突然、ふらっと、トイカメラを持った少女、逢坂大河が「写真を撮るから現像をさせてくれ」とやってきて、押し切られる形になった。
そこに反対も賛成もなかった。なし崩し的にそうなってしまったのだから、しょうがないのだが…
彼女は、いつも写真館の近くにある公園で撮影をしている。バイクの横に「写しんよろしければ」と張り紙をして

彼、高須竜児はいつも写真くらい漢字で書けよ。と思っているのだが、口には出せないでいる。
そんなことよりも、もっと重大な問題があるそれは…

「大河!」
竜児はトイカメラで風景を一生懸命撮ってる少女、逢坂大河に向かい声を荒げる。
「なによ?」大河と呼ばれた少女は振り返り、竜児をにらみつける。
その容姿はまるで人形そのものであり、華奢で、扱いを間違えば、壊れそうなほどはかないが、
はかないのは外見だけであることを竜児は知っている

「お前は、また妙な写真を撮りやがって!いい加減、うんざりなんだよ!」
声を荒げる、手こそ出しはしないが、一歩間違えば殴り合いになりそうなほど語気は荒い

「なによ?そんな大声出して、ストレスは体によくないのよ?」
大河は、我関せずといった体で、彼の言葉に耳を貸し(フリ)た。

「誰のせいだと思ってるんだ!今日という今日は!食らえ!高須家秘伝笑いのツボ!!」

どすっ

彼の親指は間違いなく秘孔のひとつを指していた。刹那
「あはっ、あはははははははははははははは」
大河はこらえきれない笑いを発していた。なにか面白いことがあったわけではない。
強制的に笑わされてるのだ。笑いのツボを刺激されたことにより

「ちょ。あはは、それ、あははは、反則で、はははははは、しょ?ひー、ひー」
もはや息も絶え絶えらしい。竜児はそのスキをつき話を続ける

「お前なぁ、今までに現像代も払ってねぇじゃねぇか、それに、なんだよ!この写真は!!」
大河の眼前に押しやる。
「だってぇ、あははは、しょうがないでしょ?はーっ、はーっ…すーっ。」呼吸を整える。どうやら効能は切れたらしい
「世界が、私に撮られたがってないの。」もっともらしいことをいう。

大河の写真はどこかおかしい。
それは、誰の目から見てもおかしいと感じる。現に今日のクレーマーなんかは
「私ってこんなにブサイクなの?」と涙ながらに、訴えていたのをドア越しに聞いた気がした。

大河の写真はもやがかかったように不鮮明でぐにゃぐにゃしている。
まるで、水の中から見た景色のように
それも、一度や二度ではない。彼女がカメラで撮る写真はすべて、どこかおかしいのだった。






そんな、どうしようもない写真を現像する。
それを受け取るお客のクレーム対応に追われる。

それが、高須家と逢坂大河の日常だった。

そのとき
「逢坂大河、今日であなたの世界が終わります。」
不穏な声を竜児は聞いた。実際は彼を呼ぶ声ではなかったが
「ん?」大河はふと声のする方向、つまり天を仰ぐ。その時
モノクロのカーテンと呼ぶにはいささか、不恰好な鈍色のオーロラがあたりを包んで…

どごぉぁーん!!

ものすごい音、その音と同時に人の叫び声が、あちこちから湧き出ていた
「「なっ…!」」竜児と大河は狼狽した。
空はさっきまであんなに晴れてたのに。今では、淀んでしまっている。いや、淀んでるのではない。
鈍色のオーロラがあたりを包んで、空すらも色を失ってるのだ。
「なにが起こってるんだ!?大河?」
竜児は叫ぶも、先ほどまでそこにいたはずの大河は忽然と姿を消している。
とにかく、走るしかなかった…





「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
どのくらい走っただろう。あのオーロラが空をも包み、さっきまで隣にいたはずの竜児がいない。
大河は狼狽していた。だから、探すしかなかった。自分の愛機であるバイクの存在すらも忘れて。

「竜児っ!どこ?」
返事の代わりに
「ぐぉぉぉぉぉ、ぐぉぉぉぉ」と獣のような声が聞こえる
身の危険を感じた。
ここにとどまれば、先ほどの声の主に襲われるかも…
大河は恐怖した。
このままでは…

そのとき
「あなたの、バックルとカードはどこです?」
どこからか声がした。それは、宙に浮いている男から発せられたものだった。
誰だろう…この人…
こんな緊迫した状況なのに、大河は冷静さを欠いてはいなかった。
しかし

「私は、クレジットカードは持たない主義なのよ!」
言ってることは混乱の極みだったが。
「急がないと、世界が終わってしまいます。」いうが早いか、男はそのままフェードアウトし
視界から消えてしまう。
「え?どういうこと?バックルとカードって??」
いまだ、混乱してる頭を整理するが、バックルとカードなんかは心当たりがない。
「とにかく、竜児を探さないと…」
走り出した。今来た道を戻る。きっとあの先に竜児はいるはずだ



「一体、どうなってるんだ!?」
阿鼻叫喚の図とはこのことだろう。あたり一面は死体の山だった。
女や子ども関係なく、そこには累々と築かれていた。瓦礫の山に生き残ってるのは彼、竜児だけだった。

絶望しか残らない。なんなんだ!?
そういえば、泰子は?無事だろうか…
大河は、きっと大丈夫だろうから、どこかで落ち合えるようにしないと。冷静だった。

ガシャ

何かを蹴った音がした。竜児はふと下を見る。ベルトのバックルのようなものと、小さな箱がそこにはあった。
竜児は、それをどこかで見ていた。いつも見る夢の中だった。なぜ、こんなところに…と竜児が思考していたその時
ドン!ドン!ドン!と壁を叩く音と「りゅうじ!りゅうじ!」
大河の声だ。
竜児は安堵した。振り向くと大河がそこにいた。
ただ、ひとつ違うのが、彼と大河の間には鈍色のオーロラで区切られていた。ということだけだった。

「大河!無事だったんだな…よかった…」見知った人間の無事を確認し、安堵する。が

「そんなこと言ってる場合!?」大河は狼狽していた。なぜなら、オーロラからは手を出すことができないでいたためだった。
つまり、二人は顔は見え、声が聞こえるが、触れ合うことはできなかった。

そのとき
「…っ!」
大河の顔が凍りつくのを竜児は見た。





その顔を訝しげに思い、竜児はかぶりを振る。
そこには、竜児に似た男。いや、竜児そのものがニヤリと笑っていた。
「え?誰だよ…お前」
竜児は混乱していた。その問いに答える代わりに竜児は
いや、竜児だったモノはまるで粘土細工のように崩れ去り、ゲームの世界でしかお目にかかることのできない、モンスターが姿を現した。
「…!」
もはや、声は出ず、震えるしかなかった。
せめて壁向こうの大河だけは守ろうと、大河に背を向け、両手を広げる。


「竜児!竜児!こんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
壁向こうの男を呼ぶ声がもはや叫び声のようにこだまし、大河はオーロラを殴りつける。
しかし、まったく、壊れる気配はない。
「このっ!このっ!このっ!」
何度も
何度も、殴りつけるが、傷ひとつつかない。

この世の終わり。
目の前の人すら守れない。
最悪の状況

「これが、世界の終わり!?そんなのって…!!」
もはや、涙も出ない。その時、竜児の手に握られれてるものを発見する。同時に
(あなたのバックルとカードはどこです?)見知らぬ男の声が聞こえた。

「竜児…その手にあるものを貸して」
大河の声は震えていた。見知らぬ男の助言すらもすがりたかった

「え?」竜児は手にあるものを見た。
それはさっき、手に取ったベルトのバックルのようなものと小さな箱だった

「世界を…世界を救ってあげる。多分ね」
大河ははっきりとそういった。今度は震えてなかった。

「あ、ああ…」
竜児は振り返り大河にその二つを渡した、その瞬間

「うわぁっ!!」
ドサッ。
モンスターに肩をつかまれ、瓦礫の山に引っ張られた。
先ほどよりもモンスターの数は増え3体になっていた。

「うわぁぁっ!あ゛あ゛あ゛あああああっ!来るな!来るなぁ!!」
顔面蒼白で、その辺にあった鉄の棒を振り回していた。その抵抗も、もはや時間の問題だった。
モンスターは竜児を取り囲み、どこから襲おうかと吟味しているように見えた。

バックルを受け取った大河は、なぜか頭の中に、そのベルトとその小さな箱、カードケースが何のために存在してるのかという
理由が入っていくのが分かった。
つまり、コレは変身するときに必要な道具なのだ。と大河が理解するのに時間はかからなかった。

「竜児!」
目の前にいる人の名前を呼び
バックルを装着する、ガシャンという音とともに、ベルトが腰を巻きつける。
カードケースからカードを一枚取り、バックルのサイドを引くとギュイインという音が響く。

−−−変身!−−−








大河は、そう唱えるとカードをバックル内に入れ、サイドを戻す。
それは、前から知ってたかのように流れるように行われた。

その刹那
−−−Kamen Ride DECADE!−−−
という声とともに9体の鈍色をした人型が大河の周りを取り囲み、
ひとつになり、彼女の中へ入り込み…
彼女は、異形のものへと進化を遂げた。
直後、オーロラが砕け散り、モンスターの背中へと破片が飛び散る。

「ウゴォッ!?」
モンスターはすこし、たたらを踏み、大河だった異形の方を振り向く。

「たい…が?」
竜児は狼狽し、困惑していた。目の前の大河だったものを彼は知っていたからである。
「ぐぉぉぉ!」
モンスターは異形のものを一瞥すると、逃げるようにその場から離れた。その速さはビデオを早回ししたかのようにすばやかった
「ちっ!ちょこまかと!」
異形のものは追いかけるが追いつかない。

その時、カードケースから一枚のカードが飛び出してきた。まるでコレを使えといわんばかりに。
異形のものはそのカードをバックルに挿入し

−−−Kamen Ride KABUTO!−−−

異形のものは形を変え、まるでカブトムシのようなボディに身を包んだ。
さらにもう一枚。今度は自分でカードを取り出す。そして

−−−Attack Ride! Clockup!!−−−
音とともに、今度は世界がスローになる。
正確には異形のものがモンスターよりも早いのだが。
異形のものは、一体ずつ、剣になったカードケースで切り捨てていく。
3体を屠ると同時に、カードがバックルから排出され。

「一体なにが起こったの?」
異形のものは、まるで、自分が行ったことではないことのようにつぶやいた。



「はぁっ、はぁっ。」
竜児はいまだ逃げていた。
このまま定点にとどまっても徳はないと、理解したのだろう。
背後からはブォォォォッとエンジン音が響く。

「竜児!」
エンジン音とともに、聞きなれた声が聞こえる。
大河の声だ。
正確には大河の声がする異形のものだったが。
竜児はその正体を知らないが、つい、夢と同じく
「ディケイド」とつぶやいていた。

「…あんた、なんでその名前を知ってるのよ?」
ディケイドと呼ばれた異形のもの=大河は少し、いぶかしる。

竜児は答える代わりに首を振った。今のことは忘れてくれといわんばかりに。
「どこに行けばいいんだ?」
まるで、幼子のように不安を口にする。

「帰るのよ。やっちゃんのところに」
大河はそういうと、竜児にヘルメットを渡し後ろに乗るよう促した。







「あれ〜?テレビつかないや〜、どうしちゃったんだろう〜」
同時刻、泰子は外の状況を確かめるべくニュースを見ていた。が、突然画面は思考停止し、色を失った。
外に出るのは危険と判断してのことだが、テレビもつかないとなると、どうしようもない。

「外に出るのは危険だから、ここにとどまっていよう〜。やっちゃん賢い!」
そういうと、再びテレビのチャンネルを変え始めた。

********************************************************

「いったい、どうなってるの?」
そこには、変身が解けた大河と竜児がいた。

大河は早足で、先ほどのカードを見ていた。
それらのカードはなぜか色を失っており。
異形のものの姿が忽然と消えていた。

「それは、あなたがすべてを失ったからです。」
その声は聞いたことがある。大河は天を仰いだ。そこには、先ほどバックルとカードは?という質問をした男だった。
「なにか、思い出せましたか?」男は続ける

「なんのことよ?」
わけの分からないまま質問に答える。返答も不明瞭だったが…

その時
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!

親子連れの声が近くで聞こえた。
その背後、炎の龍が雄たけびを上げ親子を飲み込もうとしていた。正確には龍などではなく、炎の塊だったが
「危ない!」
竜児は叫ぶが、叫んだところでどうにもならない。
今はただ、その惨劇から目をそらそうと目を閉じた。

パチン

指をはじく音が聞こえ。時間は静止する。
「な、なんだよ…」
竜児は腰を抜かした。どうやら、空にいる男が時間を止めたようだ。
そして、大河を一瞥し
「今は、私と私の仲間たちが、食い止めてます。」言葉を続け
「逢坂大河、あなたにはこれから9つの世界を巡ってもらいます。」そう告げた。

要するに
今までは9つの世界、9つの異形のもの=ライダーがいたのだが、ここへきて、世界のバランスが取れなくなってしまい。
ぶつかり合い、消滅している。ということだった。
対策として、9つの世界にいき、その世界のライダーを倒すこと。
それ以外はない。ということだった。

「時間がありません。急いでください」
男は大河たちを急がすと。自らもライダーに変身し。炎の中に飛び込んだ





「泰子!」
竜児は写真館=自宅に着くや否や、そこの主人の名前を叫ぶように呼び、部屋に入る。

そこには
「あ、竜ちゃ〜ん!大丈夫だった?」

ガクッ
竜児は脱力した。
最悪の状況にはなってなかったが、それにしても、わが親ながらこの気楽さはなんだ…
「やっちゃん、無事でよかった…」
大河なんかは半ベソをかいている。
とても、先ほどまでディケイドに変身して、モンスターを倒していた人物とは思えない。
「でもぉ、竜ちゃんもぉ、大河ちゃんもぉ、無事でよかったよぉ」
泰子はニコニコと笑いながら、二人の無事を喜んだ。

「竜児…」大河は竜児の袖を引く
「なんだ?」竜児は振り返る。
「これから、どうすればいいの?」
「おまっ!話聞いてなかったのかよ?」
意外な発言に竜児は狼狽した。と、同時に怒りがこみ上げてきた。

「だって!」大河は、そんな様子を悟り弁解をしようと言葉をつむぐが
「あのなぁ…9つの世界を旅する。ってさっき言ったぞ?」
と、先ほど説明された内容を分かりやすくまとめる。
「それは、わかるわよ!どうやって行けばいいの?って聞いてるの!?」
大河は焦れていた。

「人間はねぇ、みんなぁ、旅人なんだよぉ〜、やっちゃんいいこと言った!」
泰子は話を完全に勘違いしているようだった。その時

ガタン!

勢い良く音がなり、写真用の背景がおろされた。
暗幕みたいな背景はあるが、こんな背景見たことないぞ。
竜児はひとりごちる。

それは、町の風景だったが、なにかおかしかった。
道の先には山があり。その頂には、噴煙が立ち込めていた。

大河は何かを感じ取ったのか、外に出て行った。

外に出てまず異変を感じたのが「え?この服って…」
言うが早いか、大河はすべてを理解した。もう旅は始まってるのだと。

「ここは、クウガの世界…」
婦警姿の大河はひとりつぶやく。この格好が意味するところが分からないが、とにかく
私は、私のするべきことがきっとあるはずだ…そう考えていた。

眼前には、あの背景と同じ光景が広がっていた。






「大河!」
背後から、竜児の声が聞こえ
「大河、お前その格好…」
困惑を隠せないでいた。顔を見なくても声で分かるほどに。
「竜児…しょ、しょうがないでしょ!?なんだかわかんないけど、こうなっちゃったんだもん!」
大河は、あきらかに照れていた。
それは、ただ婦警の格好を見られたからというものでもなさそうだった。
「この世界は?」
竜児は世界の変貌に違和感を口にする。一方の大河は
「よくわかんないけど、あの背景に似てると思わない?」
指をさし、注目を促す。
「確かにな、でも、あの山はなにを意味してるんだろうな」
竜児はその鋭い目つきをさらに細め訝しげな表情をする。
その時

ピピッ

−−−警視庁より各入電!大橋2丁目廃工場にて未確認生命体4号発見、直ちに援護に向かってください!−−−

大河の胸元にある、無線機より声が響く
「じゃ、そーゆーことだから!」
大河はそういうと、自転車を操縦し現場といわれる場所へ向かった。と同時に
「ねぇ〜、竜ちゃ〜ん!テレビ、テレビぃ!」
泰子の声が家の奥から聞こえてきた。

『今月に入って、未確認生命体による被害が4件連続でおきてます。
被害者は女性警官が狙われており、警視庁では、対策をすすめています。』
テレビからは、アナウンサーが事件の様子を伝えていた。
「こわいねぇ、竜ちゃん。女性が狙われてるんだよぉ?やっちゃん狙われちゃったらどうしよぉ〜。」
泰子は、話半分でニュースを見てるみたいだった。

そんな泰子の問いには答えず竜児はひとりごちる
「未確認生命体?」
ふと、竜児はテーブルの上にある新聞紙に目をやった。こんな新聞あったけな。という思いも含め、新聞記事を見やる
紙面には

【未確認生命体9号、人間に協力か?】
との見出しがあり、未確認生命体9号と呼ばれる異形のものが、戦ってる写真が載っていた。

「未確認生命体…もしや、こいつがこの世界のライダーなのか?」




「到着!」
大河は少し心が浮き足立っていた。
自分でも、この感情を説明することはできなかったが

動くな!!

けたたましい声が聞こえ、大河は少し身を縮ませたが、
それが自分に向けて放たれたものではないことにたいした時間はかからなかった。
大河の目の前にはパトカーとモンスターとそれを取り囲む同じ制服を着た警官がいた。
動くなという声は、そのモンスターに放たれたものだった。

「通じるわけないのに…」
大河はつぶやいた。
その時、ほかの警官とは姿が異なる女性が、パトカーからほかの警官に聞こえないほどの声で
「祐作、未確認生命体4号確認した。頼む!」
そう伝えると、自ら前線に立ち、銃を向ける。
「グググ」
モンスター=未確認生命体4号はその女性向かって殴りかかる。
「狩野警部、危険です!」
誰かが、これ以上の前進をいさめるが
「分かってる!」
狩野と呼ばれた女性は返答を返すも、まったくひるむことなく銃を構え前進する。

「フン!!」
未確認生命体4号は、狩野に向けて殴りかかり、まもなくヒットした。
「ぐうっ!」
狩野は少しよろめき、その瞬間手から銃を落とした。

それを遠くから見つめる青年がいた
狩野が手から銃を落としたその瞬間
「会長!」
そう叫ぶと、未確認生命体の方向に走り出し
手と手で包み込むように腹部前面に手をあてると、バックルが現れ。

−−−変身!−−−
その声とともに、その青年は赤い異形の者に姿を変えた

「あれが、クウガ…ね」
大河は一部始終を目に焼き付けると、首にかけてあったトイカメラを手に取り、クウガの後をつけた。


********

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