4月、大河と竜児は近所の公園にお花見に来ていた。
公園の桜にはすでに緑の葉が混じっていた。

大河「はあ、今年も桜を見れるのはあと少しね」
竜児「そうだな」
大河「きれいなものはみんなすぐに消えてしまうのね」
竜児「そうか?」
大河「花火や流れ星だってそう。きれいなものはすぐに見えなくなってしまうのよ」
竜児「別にそれでもいいじゃないか」
大河「なんでよ。私はきれいなものをずっと見ていたいけど」
竜児「だって考えてみろ。花火や桜をずーっと見上げていたら首が痛くなるだろ」
大河「はあ…」
竜児「なんだよ、その溜息は」
大河「せっかく人が真面目に話してるのに、興ざめだわ。なにが首が痛くなるよ。
   もっとロマンチックなこと言えないの?」
竜児「うるせえな。どうせ俺にはロマンが無いんだよ」

だが竜児は気付いていた。
決して消えることがなく、見続けても首が痛くならない、きれいなもの。
それがずっと自分の傍にいるんだということに。





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