目覚めて30秒。
鳴った気配の無い目覚ましを探して、枕元を手探り。
手応えが無いので、仕方なしに目を開けたその視界、最初に飛び込むのは、いつもと同じ豪奢な金髪。

『ある春の日曜日』

「・・・なあ大河・・・?」
しばらくの沈黙。
たっぷり10秒は間を置いてから、面倒臭そうな声が耳に届く。
「んー・・・なぁにぃ?」
寝起きで朦朧としているんだろう。
俺の胸から少し顔を上げて、寝惚け眼で俺を見る大河。
その額におはようのキスをすると、途端に『ふにゃ』っと大河の顔が緩んだ。
「おはよ・・・どしたの?」
「ああ、今何時だ・・・?」
おはようと返してから問い掛けると、その顔がみるみる嫌そうに歪んだ。
本当にこいつは面白い。朝から百面相だ。
「しんない。・・・自分でみなよ・・・」
どうでもいいとばかりに、またもぞもぞと寝にかかる。
確かに自分で見りゃ良いんだけど・・・溜め息混じりに小さく呟く。
なぜなら、寝る前、確かに枕元にあった時計は、いまやなぜか大河の身体の下に行ってしまっていた。
全くどういう寝相だそりゃ?
何とかして手を伸ばすが、如何せん大河の身体が邪魔で届かない。
「・・・見えねえ・・・」
呟いて、ちらりと大河を見るが、
「・・・・すー・・・」
「既に夢の中・・・か」
溜め息を吐いて天井・・・というか、ベッドの天蓋を仰ぐ。
「・・・明るいんだよな・・・」
部屋に差し込む光は、下手をすれば昼前の様相を呈している。
「でもまあ、いいか・・・」
小さく縮こまって傍らに眠る小さな虎。
もう小さな頭を、優しく両手で抱え直す。
「んー・・・?・・・あったかい・・・」
もぞもぞっと胸のあたりで動く髪が、時折頬に当たってくすぐったい。
思わず微笑みが洩れる。
ホントに猫みたいだこいつは。
「・・・朝飯、少し遅れるけどいいか?」
耳元に小さく語りかける。
「うん・・・。も少しこのまま・・・」
言いかけてまたスーっと寝息を立て始めた、大河の頭を優しく撫でる。
「ん。たまにはこんな、ゆっくりした日曜日も良いか・・・」
小さく呟いて、俺もまた夢の中の住人へとその身を移し変えた。

END




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