遺憾な状況だわ…
逢坂大河は思案する。体重計を見ながらとく思案する。
下の画面を何度見てもそこに映し出されるのは自己新記録となる体重表示。
過去最高にやばかった去年の秋よりもさらにやばい状況に大河は立たされていた。
肥えた、のである。

■■■

別に竜児との間に子供ができたから、とかそんな素敵な状況でもなんでもなく
まあ将来的にそれもありよねそうすれば私の胸もふくらむかしらそうなったらいいわね……もとい、ただ食べ過ぎてしまったのだ。
だって竜児のごはん美味しいし!用意してくれるオヤツも美味しいし!そんでもってごはん美味しいし!
とても大事なことなので2回言ったが、本当は10回でも20回でも言いたいくらいなのだ。
竜児の前では照れくさくて言えないけど。

「はふぅ…」

食事制限かしら…でも毎晩タケノコだけとかシイタケだけとかレンコンだけとか嫌…
でも竜児なら…竜児ならきっと美味しくしてくれる…いやいやそれじゃ意味無いじゃん…

そんなこんなで悩む虎乙女の前に救世主が!


「おう大河。後でこれやらねえか?」
「…何これ?『いっしょにとれーにんぐ』…?」
「能登から貸してもらったんだけどな。なんでも、こいつを見ながら筋トレすると良いらしいぞ」
「んー…ビリー隊長みたいなやつ?」
「おう、それそれ、そういうみたいなやつだってさ。最近運動不足だし、
 これから受験も控えて風邪なんか引いてる場合じゃねえし、どうせ運動するなら二人でどうかと思ってさ」
「へぇー…(グッドタイミングじゃない馬鹿犬!)そういうことなら付き合ってあげてもいいわ。
 早速今からやりましょう!ホラホラさっさと準備する!」
「いつにも増して乗り気だな… まあいいや、んじゃテーブルどかすからDVDの準備をしておいてくれ」

■■■

「よーし、下に響かないようにマットを敷いた。汗拭き用のタオルと着替えも用意した。
 水分補給のための飲み物も用意した。大河のほうは準備いいか?」
「おっけーよ! それじゃ再生スタート!!」



 『わたし、ひなこ! これから毎日ず〜〜〜〜っと筋トレつきあってね(はぁと)』
 『いっち…にぃ…さん…し…!』
 『ふぅ…ふぅ…』





「……」
「…………」

「…ねえ、竜児」
「……は、はい…」

「…私に喧嘩売ってるでしょ? 買うわよ倍プッシュで…モルグどころか地下帝国に送ってあげようか?」
「……焼き土下寝だけは勘弁してくれ……」

「………最後に言いたいことは?」
「…そ、そういえば大河、最近体つきがふっくらしてないか? 胸もなんか大きくなった気がす」
「1ミリたりとも成長しとらんわああああぁぁっっ!!!こちとらそっちは毎日計ってるんじゃあああああっ!!!」
「ええええ…「そっちは」…?」


ドガドガベシベシゴキャゴキャザクザクゴスゴスメメタァゴシカァンギシギシアンアン


後に大河の乱と称された今回の事件は、隣街まで虎の咆哮が響き渡り、
手乗りタイガーの伝説にまた新しい一ページが追加されたとかされなかったとか。


あ、大河の体重は標準に戻ったそうです。
つうかあのDVDトレーニングにならないよね!よね!そうだよねえええ!!!





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