09:40
泰子が弁財天国の買出しに出かけてすぐ、大河がやってきた。
「ふぅ〜、すごい雨ね。少ししか歩いてないのにずぶ濡れだわ。4月だってのに寒いし。」

「おう、とりあえずバスタオルで拭いてからあがれよ。」
「あーい」
そうやって、バスタオルを大河に向かって投げる。傘をさしてきたとは思えないほど濡れていて、どこか色気すら感じる。
もし至近距離にいたら、そんな大河の匂いにドキッときたに違いない。
当然、その後「発情してんじゃないわよこのエロ犬!」と言う罵りとともにアッパーカットを食らっていただろうが。

09:47
「はちみつ金柑飲むかー?」
「飲むー。温かいやつね。」
「温かくしても冷めるまで飲まないだろーが。」
「細かいことに突っ込まないの、寿命縮むわよ。」
そういって、大河はバスタオルで頭を拭きながらぺたぺたと歩く。
「♪ピッチ・・・ピッチチャッ・・・プチャップランラン・・・ラン・・・?」
リビングには下手くそで陽気な歌声っぽいのが響く。
「・・・このブサ鳥の歌、何とかならないの?」
「せっかく覚えた芸だぞ、それこそ突っ込むなよ。ほれ、はちみつ金柑。」
「・・・まったくもって遺憾だわ・・・。」





11:24
『続いてお天気です。雨はどうなってますか〜?』
『は〜い、こちら赤坂サカスはご覧のとおり強い雨が降っています。この後も関東地方の雨はこのまま降り続ける見込みです』
「午後も雨だってさ。」
「外出する気にもならないな。」
「ね〜。」
はちみつ金柑も2杯目を飲み干すころ。
「竜児、そろそろおなかすかない?」
「そうだな。何食べたい?」
「生醤油(うどん)」
「・・・は?」(←ちょっと聞き違え)
「生醤油うどん!さっきテレビでやってたから食べたいの。・・・って何赤くなってんの」

「いや、なんだ・・・、『い』じゃなくて『ゆ』か・・・。びっくりした」
「?・・・って、真っ昼間からそんなこと口走るんじゃないわボケ!///」
「ぶぐぉっ」(←鼻フック)

13:49
プルルルル プルルルルル
(トイレから)「大河ー、悪い、電話出てくれー」
「しょうがないわね。(ガチャ)はい、高須です。」
「おっと〜、やっぱりラブラブランデブー中だったかい大河くん♪」
「みのりん・・・ランデブーって・・・」
「いやいや、大河のケータイに掛けたんだけど出なかったから、高須君ちに掛けてみたんだ。見事にビンゴ(ニヤリ)」
「〜〜っ///」
「ところで、今日の晩ご飯みんなで食べようかと思ってたんだけど、君らはどうだい?」

「食べたい!それで、何食べるの?」
「まだ決めてないんだー。もし君らがOKならどこに行くか決めるのよ。」
「いいわよ。私問題ないし。」
「ん?高須君は?」
「トイレに引きこもってる。まあでもいいわよ。」
「オッケー!じゃあまた電話するね。」
「うん、あとでねー」
ガチャ
「お前…、何勝手にきめてんだよ…。」
「あれ、トイレ終わったの?って言うか電話聞いてたんでしょ?とりあえずそう言う事だからよろしく」
「さすが…、完全スルー…。っていうか櫛枝まで…。」





17:30
「竜児」
「何だ」
「耳掃除」
「自分でやれよ」
「あんたがやって」
「何でだよ?」
「いいからやれっつの!ほら、早く正座する!」
「…ったく、しょうがない。ほれ」

17:34
「どうだ、こんな感じで。」
「うん、全然。………竜児の…、膝枕…。」
「いや、こういうのって、ふつう立場が逆じゃないのか」
「いいから黙って続ける!…………にゃはは…。」
「笑い方が気持ちわるいぞ」
「あんたの阿修羅顔に比べたらマシよ」
「ほっとけ」

(↓こっそり忍び込んで影から覗いてる二人)
「あー、やっぱりあの二人はいつ見ても甘々ですなぁ」
「よだれ垂らしてるわよ。チッ、亜美ちゃんなんかイライラしてきたんですけど〜。」





18:32
結局晩飯は竜児、大河、実乃梨、亜美、能登、春田、木原、香椎で弁財天国。
竜児の手料理という案もあったが、材料があまりにも少なかったため却下された。
しかも、息子の顔に免じて半額でOKとなれば選択肢はこれしかないだろう。
大河「ったく、恥ずかしいったらありゃしないわ」
竜児「お前がやれっつったんだろ」
実乃梨「でも、あんだけラブラブオーラ出してりゃきづかないって」
亜美「そそ、あんた達ぐらいなもんよ、堂々と入ってきたのにあれだもん。…って、能登君と麻耶、なんで赤くなってるの?」
木原「いや…///」
能登「俺、昨日してもらった…///」
香椎以外「………」
香椎「うふふ、こっちも順調ね」
春田「俺もやってもらった事あるけどさ〜、けっこ〜下手なんだよね〜。耳掃除するのに血が出るしさ〜」
泰子「は〜い、みんなお待たせー。メニューにはないやっちゃんスペシャルだぞぉ☆」

一同「おぉーっ」
そしてさらに盛り上がる弁財天国。




21:50
弁財天国を出て、各々が帰宅の途へつく。
いつの間にか雨は止んでいた。星が見えるところをみると、明日は良い感じに晴れそうだ。
「あー、満腹満腹」
「お前は食い過ぎだ。ったく、デザートまでたかりやがって」
「いーじゃない。やっちゃんだって喜んで出してくれたじゃん。しかもタダで。」
「…しかし、あれでよく経営が成り立つもんだよな。」
高須家近くの角で別れる。今日、二人一緒の時間はここまで。
「もうここまで来ちゃったか」
「そうねー。早く明日にならないかな。」
「そうだな。晴れそうだから、明日はどっか出掛けようか。」
「そうだね。明日は二人きり♪」
大河の弾んだ声のあと、わずかな沈黙が訪れる。
「ねえ竜児、ちょっと屈んで。」
「?おう。」

チュッ

「じゃねっ!おやすみ!!///」
「……///」

頬の火照りが冷めるまで、少し時間が掛かった。
これは明日仕返ししなきゃ駄目だな、このいたずらタイガーめ。


 -end-








その頃、フロリダ州某所

北村「会長、俺ってエロかわいいですか?」
兄貴「会長言うな。あと服着ろ、殴るぞ。」
北村「すみません」





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