外はまだ寒くもなく、かといって暑くもない歩くには丁度良い気温だった。
竜児はきっと、最初からこの時間を見計らって外にでようと思っていたのだろう。
変なところで気が利く竜児は結局良い奴なのだ。
いろいろ口うるさく言ったとしても、結局は全部私の為。
わかっているけど……ううん、わかっているから甘えちゃうのかな。
普段からこうして竜児と歩くことは多いけど、内容は全然色っぽくない。
当然だ、竜児には好きな人がいる。私にも好きな人がいた……いや、いる、かしらね。
過去形から現在形へ変わったのは、元々好きな人はいたけど、いつの間にか好きじゃなくなってたから。
いや、ちょっと違うか。本当はその人よりももっと好きになってしまった人がいるから、だね。
ほんのわずか数cmから数十cmの所に、その今好きな人の手がある。
けど触れない。触っちゃいけない。私はきっと、こいつにとってそういう対象じゃないから。
迷惑をかけるだけなら、そんなことはしない。
普段からの我が儘はいいのかって?あれは……私とこいつのスキンシップよ。いいのよこれは特別!!
と、歩いてる途中で風に乗ってある匂いが鼻腔をくすぐる。
「あっ」
つい声を上げてしまう。目の前にはタイヤキの屋台。
おいしそうだ。今日はおやつを食べてないから特に空腹を感じる。
しかし、今自分はエコの塊&MOTTAINAI精神溢れる竜児といるのだ。
ましてや夕飯前。
「ねぇ竜児」
「だめだ」
ほうらやっぱり。どうせ、夕飯前にMOTTAINAIとか、せっかくおやつを食べなかったのに意味が無いとか、無駄遣いは止めろとか言うんでしょ?
「いいか大河?もうしばらくしたら夕飯なんだ。夕飯前にタイヤキなんてMOTTAINAIだろ!?それにお前がおやつ食べない為に外に出たんだぞ?オマケに最近少額だからって無駄遣いが増えてるぞ」
ほうらやっぱり。アンタが言うことなんて全部わかってるんだから。
わかってるから、わかってるぶん辛いけど、嬉しい。アンタの事を理解できてると思ったら自然とニヤけちゃう。
でもそれはそれとして、タイヤキやっぱり食べたい。


@この駄犬、ご主人様が食べたいって言ってるのよ?
B−1へ


Aねぇ竜児、どうしてもダメ?
B−2へ


Bやだやだやだやだやだやだやだ!!食べたい食べたい食べたい!!
B−3へ




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