「なにあいつ・・・」
当たった額をこすりながら独り言る。
あいつ、私の事を知らないようだった。
こんなにも悪名・・・有名になってる私を。
「んー?大河どうした?」
「な、なんでもないよみのりん」
目の前で覗き込む親友に、曖昧な笑顔で返す。
そうこんなことはなんでもない。
私を知らなくても、どうせどっかのうるさく気の利いた奴等が吹き込んでくれる。
ありがた迷惑、どうでもいい。
「・・・嫌われるのには慣れてる・・・」
小さく呟いて目を伏せた。
あれ?私落ち込んでるの?
「・・・みのりん」
「ん?」
「さっき私がぶつかったあいつ・・・誰?」
「ああ。ヤンキー高須君?」
ヤンキー?
「あいつ不良なの?」
「いやーそうでもないらしいんだけどね」
みのりんはいろいろ話してくれた。
いろいろ感情も混じっていたけど、要約するとこんなところか。
見た目が怖いから。
親の職業が原因。
目つきが殺人鬼。
最後の一つで笑ってしまった。




「でもね、話を聞くとそんなことは無いんだってさ。大河は・・・同クラの北村君知ってたっけ?」
「え?」
その名前にドキリとする。
みのりん。それは私の好きな人なんだよ。
言葉には出せずにコクリと頷く。
「う、うん知ってる・・・」
「あの人、私と同じソフト部なんだけどね、高須君の親友なんだって」
そっちの言葉に驚いた。
なんで北村君があんな目つきの悪い奴と?
「その北村君がよく言ってたんだ。同クラの奴等は、外見のみで高須の中身をまるで見ようとしない。あんなにいい奴は他にいない。せめてお前達だけでもあいつを色眼鏡で見ないでやってくれって」
「・・・」
みのりんの言葉に少し俯いた。
私も他の連中と一緒か。
あいつをただの目つきの悪い奴としか認識してなかった。
北村君に申し訳ない。
「だからね、私は高須君と仲良くしてみたいなって」
「みのりんが?」
「うん、そうさ」
少し胸を張るみのりん。
その姿に、なんだか・・・胸が痛んだ。
なんで痛むの?わかんないよ。
だから・・・これだけ言った。
「わ・・・私も・・・一緒に・・・仲良くしよっかな・・・?」
ポショポショとした呟き。
でもそれを聞き逃さず、目の前のみのりんが破顔して手を握ってきた。
「おー!一緒に彼を真人間に戻そうぜ!!」
みのりんそれ違う・・・。
苦笑しながら呟いて、私は何故か熱い頬に手を当てた。

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