4間目が終わった鐘が響いて、各人それぞれに昼休みへ突入していく。
そんな中私は、お昼を食べる気にもならず、机に突っ伏したままだった。

『1話if・5』

「どーした大河ー?お昼食べないのかい?」
「うん・・・なんだか食欲なくて。・・・外の空気吸ってくる」
机をつけたみのりんが聞いて来るけど、それに答えるのもなんだか億劫。
適当な言い訳をつけて席を立つ。
背中に、心配そうにみつめる視線を感じる。
ごめんねみのりん。
でも今はそっとしておいて欲しいの。
この・・・自己嫌悪が私を苛む間は。
後ろ手に扉を閉めて溜め息を一つ。
頭に思い浮かぶのは・・・高須竜児とのやり取り。
「なんで・・・あいつ・・・」
歩きながら知らず洩れる呟き。
それはさっきのあいつの言葉。

「おまえは苛ついてるだけだ」

はっきり言って衝撃が走った。
今まで誰も・・・みのりんすらも気付いてくれなかった私の感情。
それを、初対面でずばり言い当てた奴。
驚いて、嬉しくて、でも怖かった。
そう、私はあの時怖かった。
歩きながら唇をギリと噛む。
私に優しくしてくれた人。
優しくしてくれようとした人。
それら全ては、私の元から去っていったから。
みのりん以外。
みのりん自体が奇跡のような人。
だからそれ以外に、私を受け入れてくれる人など皆無だと思った。
それは高須竜児も一緒だ。
口では調子のいい事を言いながら、結局私から離れていく。
私の心をズタズタにして。
なら最初からいらない。
後で傷つくくらいなら、いっそ最初から拒絶してやる。
だから・・・
「あいつの優しさなんていらないんだ・・・」




そう呟いた時に、ふと落ちる雫。
なんだろうと思って見る。
そしたら立て続けにパタパタと床に落ちる。
落ちて染みになる。
「・・・な、なにこれ・・・?」
呟いてふと触れた頬。
その感触に戦慄した。
「・・・私・・・泣いてるの・・・?」
溢れ出した涙は、自覚した途端その勢いを増した。
拭っても拭っても出てくる涙に、頭の妙に冷静な部分が自分に言い聞かせてくる。
本当は優しくして欲しいんだろ、と。
「そんなことない・・・」
そんなこと無い。私はそんなに弱くない。
一人で生きてくって決めた。
家族も捨てた。
誰にも縋らないって誓った。
だから私は弱くない。
でもどんなに思ってみても、どんなに言い聞かせても、涙は止まってくれない。
いっそ止まらないなら、せめて誰にも見られないところへ。
私は流れる涙をそのままに、屋上へと続く階段に駆け出した。
そのまま一気に駆け上がり、扉に手を掛けた。
その時、誰かの声が聞こえた。
どうやら屋上に誰かいるらしい。
なんて間の悪い。
イライラしながらも、そっと扉を開けて覗き見る。
隙間が空いたおかげで、声もよく聞こえる・・・え?
聞き覚えのある声に、その人物の姿をさがす。
程なくして見つかった後ろ姿。二人の。
視線の先に、北村君とあの高須竜児が並んで会話をしていた。


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