「・・・ドンだけ腹減ってたんだよ?」
高須竜児の、半ば呆れ気味な声が耳に届くが私の動きが止まることはなかった。
すでに1/3は胃の底に詰められている。
それでもこのチャーハンは、まだまだ食べられるほどにおいしかった。
「・・・落ち着いて食えよ。誰もとらねーから」
どこか優しげに響くその言葉にはたと我に返る。
「・・・」
カチャン。
スプーンを皿に置きながら、私はゆっくりと正座し直した。
「・・・ん?どうした、まだ残って・・・」
困惑気味に聞いてくる高須竜児に、私はおずおずと聞いた。
「あ、あのさ・・・」
「ん?」
「こ・・・こんなにガッつくのって・・・お、女の子として恥ずかしいかな・・・?」
消えたい気分で私はそう聞いていた。
やらかした。
いくらお腹が空いていたからといってこれはない。
好きな人の前で、おいしいからって我を忘れて貪り食う女子。
それが今の私だと気付いて、思わず目頭が熱くなった。
羞恥にますます頭が下がる。
私のバカ私のバカ私の・・・!
「どっちかって言えば嬉しいかな?」
・・・え?
驚いて目を上げた先、高須竜児がはにかんだように笑っていた。
「だってそうだろ?美味いぞって作ったモン、美味しい美味しいって食べてくれてるんだぜ?」
報われるよな。
そう言ってまた笑った顔に・・・私は涙が溢れた。
それを乱暴に拭い、私も笑顔を浮かべる。
「あ、あのさ・・・残り・・・食べていい?」
「ああ勿論だ」
そう言って笑った高須竜児の顔がまぶしくて、私は無言でコクコク頷きながら残りのチャーハンを食べた。



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