【嫌よ嫌よ、も】

実乃梨「あーみんは子供って好き?」
 亜美「あー、ダメダメ。全然嫌い。泣くわ、喚くわ、手が掛かりそうだわで百歩譲っても好きになれないわ」
実乃梨「え〜、可愛いのにぃ〜」
 亜美「可愛いで許されるのは亜美ちゃんだけで十分」
実乃梨「ん〜、おいちゃん、そういう意見はちょいと悲……あっ、大河」
 亜美「あらあら、愛しの高須君が風邪で欠席してて、随分寂しそうにしている逢坂さんじゃない」
 大河「……うっさい、ばかちー」
 亜美「あ〜らやだぁ〜、ほんとに弱ってやんのぉ! って、あんた膝怪我してるじゃない」
実乃梨「あっ、ほんと! って言うか制服も汚れてるし、もしかして大河、転んだ?」
 大河「……転んでない」
 亜美「そんな恰好で否定してもモロバレだっつーの。あ〜あ、ほんとアンタって高須君がいないと何もできないのねぇ〜、アホ臭ッ」
実乃梨「ちょっと、あーみん!」
 大河「!!……っるっさい!」
 亜美「なに、なに? 泣きそうなの? そうやって痛いところ突かれると直ぐ泣くのって、どうなの? 卑怯じゃね? これじゃあ高須君が愛想尽かすのも時間の問題かなぁ」
 大河「うっ……ぐすっ」
実乃梨「あーみん! いい加減に―――」
 亜美「ほら、膝見せて。ちょっと待ってね、確か飲料水があったから、これでハンカチを濡らして、っと。……染みない? 痛くない?
    ……ったく、あんた見てるとホンット、イライラすんのよねぇ〜、そうやって……、良し、綺麗になった。後は、絆創膏貼って、っと。完璧!
    んっ、甘えてばっかりで自分からは何もしない癖……、ちょっと大河、鼻水出てる! ほらほら、女の子がそんなのだしたらダメだって!
    ティッシュ! ティッシュ! ほら、ち〜んして。何遠慮してんの、いいからほら、ち〜〜ん! はい。はい、良くできました。
    あ、いいのいいの、別に手に掛かったぐらい気にするもんじゃないし。
    ……え〜と、なんだっけ? ああ、そうそう。自分からは何もしない癖に周囲の人に色々求めてさぁ、そんなんで都合良く生き……、
    もう、何時までも泣いてないで。可愛い顔が台無し! もうひとつハンカチあったはず……。ほら、拭いてあげるから動かない!
    んっ、おっけぇ。うん、可愛い可愛い。
    で、続きね。そんなんで都合良く生きていけると思うんじゃないわよ!?(大河の頭を撫でながら)」
実乃梨「…………」
 亜美「ん? どうかした、実乃梨ちゃん?」
実乃梨「……あーみんって子供好きだよね?」
 亜美「えっ? 嫌いだって。聞いてなかった? 人の話」







【揉みしだく】

大河「ここにゴム毬があるとするわね」
竜児「おう」
大河「で、何となしに触っちゃうわけよ、ゴム毬を」
竜児「あー、なんとなく判る気がする」
大河「全体重を掛けて乗っかってみたり、手で押し潰そうとしたり」
竜児「うんうん」
大河「ぎゅむぎゅむと手で揉んでみたり」
竜児「確かに、やってしまいそうだ」
大河「で、そんなことばっかりしてると、ゴム毬のゴムが伸びてくるわけよ」
竜児「普通は空気が抜けてるんじゃないのか?」
大河「違う違う、あーいうのはゴムが伸びてるのよ」
竜児「そうだったのか……」
大河「で、そうなると面積的に大きくなったと言えるけど、それはもうたるたるなのよ」
竜児「たるたる? ゆるゆるじゃなくて?」
大河「黙って聞け。そうなってくると遊べないし、存在価値がなくなるわけよ」
竜児「まぁ、そうなるわな」
大河「だから揉んで大きくなるというのが本当でも、大した意味がないわけよ」
竜児「…………なんの話だ?」
大河「ゴム毬に決まってんでしょ」



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