「ねえ竜児?」
「なんだよ?」
「『愛してる』って言ってくれない?」
「は?」




以前聞いたことがある。
その人が受ける愛情は定量しかないと。
だからそれ以上を望むことは出来ないんだと。
それを聞いたとき、妙に私は納得した。
ああだからかって思った。
だって、私は極端に愛情を受けてなかったから。
親も親類も友人も。
唯一、私を愛してくれるのは親友のみのりんだけだったから。
だからこそ、この言に妙に共感を覚えた。
でも今は違う。
傍らには・・・好きな人がいる。
私を好きな人が。
私の好きな人が。
信じらんない事態。夢かもって思える。
どれだけ求めても、私を好きな人は手に入れられなかったんだもん。
でも・・・でもね?
そう思ったら途端に不安になったの。
もしこの手が・・・離れてったらって思っちゃったの。
そうして訪れたのは漆黒の闇。
私を取り囲む黒い牢獄。
そうして泣いている私。
いつまでもいつまでも・・・。
涙が溢れて止まらないその中、手を差し伸べてくれたのはあんた。
だからこそ聞きたい。
あんたの口から。

「・・・ったく、いきなりなに言ってんだよ・・・」
照れながらいじるのは前髪。
もう知ってるよ?
「・・・言わなきゃダメか?」
コクリと頷く私に、真っ赤な顔を向ける。
ああ、その顔大好き。
「一回しか言わねーぞ?」
うんと頷く。それだけで満ちる幸せ。
「・・・愛してる、大河」
そう言って俯いたあんたに、身体ごと飛び込む。

『あたしの方が愛してるよ』

そんな思いを込めて。




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