【話したくない夢もある】

竜児「……やっぱりさ、こういう関係を続けても良くないと思う。お前にとっても……。
   考えりゃあ判ることだよな。お前が言ってたように、櫛枝が勘違いするように、北村だって勘違いするに決まってる。
   だから、たい……逢坂、さん。俺達はただのクラスメイト。それ以上でもそれ以下でもない、その関係に戻ろう。
   大丈夫、逢坂さんはやれば出来る人っだってことは、俺が一番良く知ってるから。料理だって洗濯だって、絶対に出来るし、みんなが助けてくれる。
   俺? ……言っただろ、ただのクラスメイトに戻るって……いや、正確には、元クラスメイト……。高校辞めて、働くことにした。
   泰子ばっかりツライ思いをさせるわけにもいかないからさ。だから、来週からもう俺はいない。
   ……本当は俺の存在が、お前の幸せを潰してるってことに気付いたからかもしれない。
   兎に角、お邪魔虫はこれにて退散、だな。……さようなら、逢坂さん」

がばっ!

大河「…………」


大河「りゅーじっ、りゅーじっ……!」
竜児「……またですか……ってか、今度はボロ泣きかよ……、とにかくベランダの戸を閉めろ……」
大河「う、ううっ、私の……ぐすっ、名前、呼んで……」
竜児「……はぁ? 大河……だよな?」
大河「……もっとぉ……ぐしゅぐしゅ……もっとぉ!」
竜児「…………え〜い、大河、大河、大河、大河、大河、大河大河大河大河!」
大河「…………りゅーじぃ、りゅーじぃ……」
竜児「あっ、コラ。布団の中に入ってくるな。せめて泣き止んでから……あ〜、もう良いや」
大河「ぐすっ、ぐすっ」
竜児「……怖い夢でも見たか?」
大河「コクコク」
竜児「ほら、もう大丈夫だ。このまま背中ぽんぽんしてやるから、寝ろ」
大河「……また夢……」
竜児「見ない見ない、頭も撫でててやるから、寝ろ」
大河「うん……」
竜児「それでも怖い夢を見たなら、直ぐに俺を起こせ。どんな夢か知らんがこうなったら、不本意ながら目付きが悪いまま生まれてきたことを利用して
   その夢を俺の眼光で黙らせてやる!」
大河「……ふふっ……なにそれ」
竜児「よっし、ちょっとは笑えるようになったか。さぁ、寝よ寝よ。正直前回起こされた時より30分も早いベストタイムを叩き出してて俺は限界なんだから」
大河「りゅーじ……ありが、と……」
竜児「おうっ、ホント直ぐ起こせよ」
大河「うん……」


2時間後

大河「―――でね、悲しそうに寂しそうに、理由にもなってない理由を言ってどこかへ行こうとするあんたに私は問い詰めたわけよ。
   そしたらさぁ、実のところ私のことを『好き』になったから、逃げようとしてたのよ。ったく、迷惑な奴よねぇ、それで逃げるとか普通有り得ないでしょ?
   仕方ないから主人として、不本意ながらあんたを説得して、一緒にいることを許可したってわけ。そしたらあんた―――」
竜児「…………怖くなかったんなら起こすな……!」





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