「わたしとやっちゃん」


竜児「本当にいいのか?」
大河「今日はいいの。留守番してる。」


家出をしたバレンタインデーから、2ヶ月ほどたち、
久しぶりに竜児の家にきた日のことだった。

泰子「大河ちゃーん。いっといでよぉ。」
大河「いいの。竜児、お買い物お願いね。」
竜児「お、おぅ、じゃあすぐ帰ってくる。」

ガチャ

どうしても、やっちゃんに言わなければならなかった。
正座をして、・・・

泰子「ほんとによかったのぉ?、ひさしぶりだったでしょぉ?」
大河「いいの。
   それより、やっちゃん、本当にごめんなさい。」

頭をつけてあやまった。

泰子「・・・・・」
  「ほぇぇぇ?????
   なんでぇ???
   なにがぁ???」
インコちゃん「な、な、な、な・に・があ・あ・あ・った」

大河「あ、あのね。
   バレンタインデーの日、竜児の手を引っ張って、
   そ、その、逃げてしまったこと。
   ごめんなさい。」


****************


竜児がいたら、おまえがあやまることねぇよ。っていっただろう。
だから、やっちゃんと二人(+一匹だが)の場所であやまりたかった。

泰子「あれー?」

やっちゃんの手が私の頭をもちあげ、大きな胸につつみこむ。

泰子「あやまることないよぉ。
   やっちゃんがお礼を言わなきゃいけないぐらいだよ。」
大河「え?」

泰子「あのとき、りゅうちゃんは、本当におこっていた。
   わかるよ。家のこと、進学のこと、大河ちゃんのこと
   いっぱいおこったんだとおもう。
   あの時、大河ちゃんが手を引っ張って逃げ出してくれなかったら、
   どうなっていただろう。やっちゃん、こわれてたかなぁーって思うんだぁ。」

やっちゃんが私をきつくだきしめる。

泰子「って、りゅうちゃんも言ってた。」
  「だから、感謝しているよ、大河ちゃんに。ありがとう。」

竜児が?、そんなこと聞いてなかった。
たしかに、あの時、このままでは竜児もやっちゃんも傷ついてしまうと
おもったかもしれない。


****************


やっちゃんは、小さい子を諭すように話をつづける。

泰子「はじめて、大河ちゃんにあったとき、この子が
   りゅうちゃんのお嫁さんになるんだーぁって思ってたよ。」
大河「な、な、なんで? あの時は・・・・・」
泰子「知ってるよ。北村くんが好きだったんでしょぉ?
   ぜぇーんぶ、知ってるよ。りゅうちゃんが他の子をすきなことも。
   でも、りゅうちゃんのお嫁さんは大河ちゃんだとおもったよぉ。」

しってたんだ。
やっちゃんの胸が苦しい。少し暴れる。
大河「く、くるしい・・・」

やっちゃんは、ごめんごめんと言いながら、少し力を弱めてくれた。

泰子「りゅうちゃんは、やさしいけどぉ、自分で決められないでしょぉ?」
インコちゃん「そ、う、めめ、し、い」

そう思う。竜児は、私のことを心配してくれて、いろいろしてくれるのに、
自分のこととなると、全然決められていない。わたしもそうだけど。
そうだね。っと笑いながら返した。

泰子「りゅうちゃんが、自分から女の子にご飯をつくってあげて、
   おうちにつれてきてくれたとき、やっちゃんうれしかったぁ
   大河ちゃんが、くるようになってから、りゅうちゃん、
   ちょっと明るくなったかなぁ。」


****************


そうだったんだ。
もっと二人が、早くお互いの気持ちにきづいていれば・・・・
うぅうん、この1年があったから。今みんな幸せ。

泰子「それに、大河ちゃんは、いつも、りゅうちゃんのこと、
   みていてくたでしょ。
   ずーと、みていてくれた。」

そう、ずーとみていた。
たぶん、はじめから。
気づいたら、自分の中は竜児一色になっていて、笑って、泣いて、
そして今ここにいるんだ。

泰子「りゅうちゃんは、ちょっと背中を押してあげれば、
   すぅーごく頑張れる。
   だから、大河ちゃん、これからもよろしくね。」

うん。
素直にこたえられた。
誰かに期待されるってきもちがいい。

泰子「そんな、大河ちゃんに、うっすーい超能力をあげよう。
   もう、やっちゃんには必要ないからねぇ。
   相手の心が離れそうになったときに、つよく念じるんだよ。
   3回だけつかえるから、大事につかうんだよぉ」

ありがとう、だいじにつかうよ。
といったとき、


ガチャ

竜児「ただいまーぁ。今日は黒豚が安くてさぁ、とんかつ・・・
   って、何でだきあってんだ?」

そうだ、抱き合ったままだった。

大河「竜児。わたしも手伝う。ママにちょっとは教えてもらったんだからね。」
竜児「そ、そうかぁ、そいつは楽しみだな。」
泰子「ふふふ」

やっぱり、みんな幸せがいいとおもう。
だから、私も頑張ろうと思う。


おわり

****************


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