「おーい。高須ー!!」
親友の北村に呼び止められ、竜児は足をとめる。
竜児「おぅ。めじらしいな。今日は生徒会ないのか?」
北村「ああ。あらかた仕事は終わっていて、
富家と狩野さくらがあつくて出てきた。」
そうか、といいつつ、帰り道を一緒に歩く。
大河は弟の世話で早めに帰ったことを伝え、
竜児が一人帰っていることに、北村は納得する。
北村「しかし、逢坂がかえってきてよかったな、高須。」
竜児「ああ。よかったと思う。」
北村は、バレンタインデーからの1ヶ月半、竜児は元気がなかったという。
竜児は、顔には出さないでいたのだが、ばれていたのだろう。
北村「逢坂は、前よりかわいくなったな。」
竜児「そうか?俺への対応は前と変わらないが・・・・」
北村「逢坂が帰ってきてから、1週間しか立っていないが、
笑っているところしか見ていないぞ。」
そういや、そうかもしれない。
この1週間で、ビンタという名の掌底は、3発ぐらい喰らったが、
大河の機嫌ずっとすこぶるよいのだ。
北村「そう。逢坂は前よりかわいくなった。」
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そう北村が言い終わった後、ふと疑問に思った。
北村は、大河のことをどう思っていたのだろう。
竜児「なあ、北村。
おれと大河が付き合わなければ、北村は、大河と付き合っていたか?」
北村は、自分の嫁さんを俺にゆずるのか? などと言いながら、
突然真剣な顔になり、話し出す。
北村「俺は、やっぱり、会長が好きだ。それはずっと変わらない。
だが、逢坂の泣きそうな顔をみて、一瞬ぐらっときたのは事実だ。」
北村ほどの真面目な人間が、「ぐらっときた」のかと思うと、すこし、意外だった。
北村「正月の話、少ししただろ?
逢坂が、竜児のことわすれさせてください。って涙目で、言ったとき、
本当にぐらっときたぞ。」
北村「女の涙って卑怯だよな。」
そうだな、と答え、そのまま二人して歩く。
北村「俺が、男だからっていうのもある。
が、高須も、逢坂も俺の親友だ。親友が悲しむのは耐えられない。」
北村「逢坂に『願いは聞いておくが、高須を信じろ』と言ったんだが、
あの時、高須を少しでも信じられなかったら、そうは言えてなかったかもしれないな。」
北村が慰めて、いつしか付き合うことになっていたかもしれない。
そういうことだろう。
分かる気もする。
北村「念のため、言っておくが、今は微塵も思っていないぞ。
二人が正式に付き合って本当によかったと思っている。
本当に、お前たちお似合いだよ。
他の誰がつきあってもお前たちのようにはならない。」
そういわれるとてれてしまう。
竜児「おぅ。
なんか、北村の人間臭いところを聞けてよかった。」
北村「おいおい、俺はロボットじゃないぞ。
女子の涙目には弱いし、親友だって大事にする。」
「高須は、もう、逢坂を泣かせるんじゃないぞ」
竜児「おぅ。」
北村は本当にいい親友だ。
多分、一生親友でいることが出きるだろう。
また明日な、と挨拶をかわし、二人は自分のかえるべき道へかえっていった。
おわり
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