「おーい。高須ー!!」
親友の北村に呼び止められ、竜児は足をとめる。

竜児「おぅ。めじらしいな。今日は生徒会ないのか?」
北村「ああ。あらかた仕事は終わっていて、
   富家と狩野さくらがあつくて出てきた。」

そうか、といいつつ、帰り道を一緒に歩く。
大河は弟の世話で早めに帰ったことを伝え、
竜児が一人帰っていることに、北村は納得する。

北村「しかし、逢坂がかえってきてよかったな、高須。」
竜児「ああ。よかったと思う。」

北村は、バレンタインデーからの1ヶ月半、竜児は元気がなかったという。
竜児は、顔には出さないでいたのだが、ばれていたのだろう。

北村「逢坂は、前よりかわいくなったな。」
竜児「そうか?俺への対応は前と変わらないが・・・・」
北村「逢坂が帰ってきてから、1週間しか立っていないが、
   笑っているところしか見ていないぞ。」

そういや、そうかもしれない。
この1週間で、ビンタという名の掌底は、3発ぐらい喰らったが、
大河の機嫌ずっとすこぶるよいのだ。

北村「そう。逢坂は前よりかわいくなった。」


***********************


そう北村が言い終わった後、ふと疑問に思った。
北村は、大河のことをどう思っていたのだろう。

竜児「なあ、北村。
   おれと大河が付き合わなければ、北村は、大河と付き合っていたか?」

北村は、自分の嫁さんを俺にゆずるのか? などと言いながら、
突然真剣な顔になり、話し出す。

北村「俺は、やっぱり、会長が好きだ。それはずっと変わらない。
   だが、逢坂の泣きそうな顔をみて、一瞬ぐらっときたのは事実だ。」

北村ほどの真面目な人間が、「ぐらっときた」のかと思うと、すこし、意外だった。

北村「正月の話、少ししただろ?
   逢坂が、竜児のことわすれさせてください。って涙目で、言ったとき、
   本当にぐらっときたぞ。」
北村「女の涙って卑怯だよな。」

そうだな、と答え、そのまま二人して歩く。

北村「俺が、男だからっていうのもある。
   が、高須も、逢坂も俺の親友だ。親友が悲しむのは耐えられない。」
北村「逢坂に『願いは聞いておくが、高須を信じろ』と言ったんだが、
   あの時、高須を少しでも信じられなかったら、そうは言えてなかったかもしれないな。」

北村が慰めて、いつしか付き合うことになっていたかもしれない。
そういうことだろう。
分かる気もする。

北村「念のため、言っておくが、今は微塵も思っていないぞ。
   二人が正式に付き合って本当によかったと思っている。
   本当に、お前たちお似合いだよ。
   他の誰がつきあってもお前たちのようにはならない。」

そういわれるとてれてしまう。

竜児「おぅ。
   なんか、北村の人間臭いところを聞けてよかった。」
北村「おいおい、俺はロボットじゃないぞ。
   女子の涙目には弱いし、親友だって大事にする。」
  「高須は、もう、逢坂を泣かせるんじゃないぞ」
竜児「おぅ。」

北村は本当にいい親友だ。
多分、一生親友でいることが出きるだろう。

また明日な、と挨拶をかわし、二人は自分のかえるべき道へかえっていった。


おわり




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