「大河って、目線がたまに上に飛ぶよね?誰か見てるの?」
「え?」
言われて気付いた私の癖。
それはそう確かに・・・。



『視線の先には・・・』



「なんてゆーか・・・この辺?」
学校の帰り道、言いながら彼女は自分の身長より、20cm程の高さに手の平をかざす。
「この辺の高さに目が行くんだよね」
「う・・・」
言い淀んだ私の目に、彼女の目がキラリと光ったように見えた。
高三という半端な時期に転校した私。
当然知り合いもいないこの状況では、なじむことなど出来ないと思っていた。
そんな時に声をかけてきてくれたのが彼女だ。
元気一杯で物怖じしない性格。
どことなくみのりんに似ていて、私も少しづつ仲良くなっていった。





「え、え?そ、そんなことないよ」
「ウソウソ」
私の必死に弁明に、ちょんと私のホッペをつつくと彼女はニッコリと微笑んだ。
「だってそのときの大河、すごく嬉しそうに見えるもん」
言われて頬が赤くなったのを自覚する。
「おやおや〜?顔が真っ赤ですぞ〜?」
「もーやめてよー」
両手で頬を挟んでいやいやをするように首を振る。
「おー可愛い仕草だぜハニー。でーも、追及の手は緩めねーぜ?誰を見てるのかなー?もしかして・・・彼氏かなー?」
前の学校の。
言われてドキリと心臓が跳ね上がる。
勘の鋭いとこまでみのりんそっくりだよ。
「あう・・・」
「ほーら、言っちゃえって。ぶっちゃけ、別れた前彼とかかな?」
キラッキラの、好奇心旺盛な目で私を見る彼女。
・・・嬉しそうに言ってくれちゃって・・・あ。
・・・ふふん。なら・・・。
「ううん違うよ?」
言いながら私は首を振る。
「お?なら今彼?」
「それも違う」
「んー?ならなによ?」
困惑顔の彼女にニンマリと笑顔を向ける。
そしてできるだけ大きな声を出した。
「フィアンセ!」
「へー・・・フィアンセね・・・っって!?えっ!?たた大河!!?」
案の定混乱した声。ざまーみろ。
そしてとどめの一言。
「あ、私こっちだから!じゃあまた明日ねー!!」
「ちちちちょっとー!?こんな半端なままで行かないでよー!!」
絶叫する彼女の声にぺろりと舌を出す。
してやったり。
彼女の「ばかやろー!」を聞きながら、小さく呟いた。
「・・・そうだ。竜児にメールで教えてやろっかな。・・・なんて返してくるかな、あいつ?」
携帯を手に鼻歌混じりに歩きながら、私は傍らの、今は見えない奴の目を見あげて微笑んだ。

END




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