2008.12/25、AM1:00、逢坂大河は目を閉じていた。眠っているわけではない。
彼女はつい先ほど、自分の恋心を封印した。
彼女は高須竜児という男に惹かれていた。
だが、彼には櫛枝実乃梨という彼女の親友に好意をもっていた。
はじめは、お互いの恋を応援する。

だったはずなのに

「どうしてこうなったんだろう…」
大河はひとりごちる。
涙も枯れた。

寝室のすぐ隣、本当にすぐ近くに彼の寝床はある。
電気はまだ消えたままだ。
「こんなに近いのに」
まるで、バリケードが貼られてるみたいだ。

大河は目を閉じ
「ねぇ、竜児」

今日のことが夢だったらいいのにね。
今までのことが夢だったらいいのにね。

お互いがすれ違うことなく
私たちがそれぞれ思いあって、好きになって、それで…

今日がもっと…

「・・・・・・っ」
涙は出ないが、脳と涙腺が「泣け」と命令している。
肩は振るえ、誰が見るわけでもないが目元を隠す。

ふと、窓を見る。
やっぱり明かりはついてない。
涙は枯れたが、自分は水の中をただよっている。

もう一度目を閉じる、嗚咽という疲労感が今度は眠りへと連れて行ってくれるだろう
眠りから覚めたら、今度はどんな景色が広がってるんだろう

「…が。…いが。大河。」
竜児の声がする。
大河は陸地へ浮揚した。



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2009.12/25、AM1:00、高須竜児は狼狽していた。
自分の隣で眠る女性、逢坂大河が急に涙をこぼし始めたからだ。

つい2時間ほど前二人は、全世界の恋人がするような行事を行い。そのまま、彼の家へとなだれ込み。
大河は疲れたのかすぐに眠ってしまい、竜児はその横顔を見守るように見つめていた。
そんな大河の閉じられた瞳から涙がこぼれていた。

なんだってんだ?
竜児は困惑する。悪い夢でも見てるのだろうか、起こしてやらないと、肩に手をかけようとしたその時
「これが、夢だったら」
大河の声を聞いた。

「そうだよ、大河、お前は今、夢をみてるんだよ。」
そういうと、肩に手をかけてゆすりおこす

「たいが。たいが。大河。」
何度も呼ぶ。

「ん…」
目が覚める。視界はぼんやりしているようだが、ちゃんと竜児の顔は見えてるようだった

「大河、大丈夫か?」
「うん。ね、りゅーじ」
大河は、ごしごしと目をこすると竜児の手をとり
「夢見てた。」
「ああ、そうみたいだな。」
竜児はその手を握り返す。
「手、つないでくれた」
「?」
当たり前だろう、と思ったが、大河は言葉を続ける
「嫌な夢だった。昔の夢見てた。去年の、全部夢だったらいいのに、夢の終わりに竜児がそばにいて」
続ける
「手をつないでくれたらいいのに。ってそう思ってた。」
だから、うれしい。と大河はまた泣いた。

「夢じゃないだろ?」
ほら
竜児は手を握る、愛しい人の手を、体温や気持ちが溶け合って…
「竜児・・・・ありがとう。」
大河は、温かいその手を握り、見つめあい

やがて二つは一つになった。

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