大河「ねえ竜児」
竜児「ん どした大河」
大河「この前頼んでおいた北村君の写真、撮ってくれた?」
竜児「いやまだだ。なかなかチャンスが無くてよ。明日の放課後、一緒に撮りにいくか?」
大河「早くしてよね。まったく役立たずの駄犬だわ。いいわ。明日一緒に行くから」
竜児「へいへい」


     *  *  *  *  *


大河「んふふ」
実乃梨「お、たーいがー、なにやら機嫌いいねえ。何見てるの?」
大河「みーのりーん。見てこれ、北村君の写真」
亜美「何?あんた。祐作の写真なんか眺めて顔ニヤニヤさせてんの?しょうもな〜」
大河「うっさいばかちー。勝手に覗くな」
実乃梨「おおー、北村君の顔、よく撮れてるじゃん。大河、北村君の事好きだもんねー」
亜美「趣味わる……」
大河「は!ばかちーなんかには北村君の良さは永遠に理解できないわ」
実乃梨「でもさー大河、いっつも北村君の写真撮るときボケちゃってたけどさ、今回はしっかり撮れたんだねー。おじさん感心したよ」
竜児「ああ、それは俺が撮ったんだよ」
実乃梨「へぇーそうなのか。どうりで!」
大河「まあ駄犬は駄犬なりの役割があるというものよ。ご主人様の役に立てて幸せでしょ?」
竜児「わかったわかった」
亜美「それにしてもまあ……大河あんたさあ、高須君の膝の上に座りながら高須君に別の男の写真撮らせて、その写真眺めてるってどういう事よ」
竜児「いいぞ川嶋、もっと言ってやってくれ。こいつ家でもずっとこの調子なんだ。飯食う時すらずっとこうだ」
大河「ふふん。竜児はあたしの犬なんだから当然でしょ。はー…北村くん……」
実乃梨「あはは、大河はすっかり北村君に夢中だねぇ」
女生徒A「逢坂さん、ずいぶんご機嫌だねー。何見てるの?」
女生徒B「あ、これってまるおの写真じゃない? 逢坂さんってまるおの事好きなの?」
女生徒C「ばっか、見てればわかるじゃない。ていうかさー、うふふ。高須君、お気の毒〜」
竜児「いや、俺は…何か勘違いしてないか?みんな」
女生徒A「高須君ってば、何するにも必ず逢坂さんと一緒で尽くしてるのに。今も人間椅子にされてるのに、すっかりまるおに逢坂さんを取られちゃったね〜」
女生徒C「ねー。かわいそ〜。くすくす」
女生徒B「えー、そういう事になってんの?」
竜児「いや、だから…」
大河「ふふん。ほら駄犬、オレンジジュース買ってきてよ。3分以内よ」
竜児「まったく世話が焼けるな。よし待ってろよ。すぐ買ってくる」
実乃梨「…………」

     *  *  *  *  *

大河「ねぇ竜児、今日の晩ごはんは何?」
竜児「おう。今日はバイトの給料が出たからな。特別に牛肉だぞ!」
大河「でかしたわ。褒めてあげる」
竜児「んじゃさっそく買いにいこうぜ。お前の好きなプリンも買ってあげられるぞ(なでなで)」
大河「えへへ……」



祐作「みんなおはよう!」
竜児「よう。おはよう」
実乃梨「おっはよー北村君」
大河「お、お、お、お、は、よう、北、北、北むらくん」
亜美「やれやれ…」
祐作「今日も高須と逢坂は一緒に登校か。相変わらず仲がいいな」
竜児「いや、誤解だぞ北村」
大河「ちちちちち、違うの!違うの北村君、こいつはただの犬!犬なの」
祐作「はっはっは、そうか、高須は犬だったのか。いやあ気がつかなかったよ」
竜児「あのな……」
ゆり「さあみんなホームルーム始めるわよ。席についてー」
亜美「…………」

     *  *  *  *  *

実乃梨「さあお昼だぜ〜 今日のおかずは唐揚げじゃ〜☆」
竜児「お、櫛枝の今日の弁当、すごくおいしそうじゃないか。何だか最近、どんどん料理の腕が上がってないか?」
実乃梨「へっへ〜、実はね、毎日料理の練習してるんだ……………どう?高須君も一つ食べてみない?」
竜児「え、いいのか?悪いな何だか。じゃ、かわりに俺の弁当のおかず、少し分けるよ」
実乃梨「本当?じゃあもらっちゃおうかな。高須君のお弁当っていつも美味しそうで食べてみたかったんだよねー」
大河「ちょっと竜児!あたしの分の弁当早く出してよ!!」
竜児「あ、ああ。悪い悪い。ほら」
大河「まったく…。そんなに鼻の下伸ばしちゃって。みっともないったら無いわ。きもいし。このエロ魔人」
実乃梨「………」

     *  *  *  *  *

女生徒D「逢坂さん、ちょっといい?」
大河「何?」
女生徒D「話があるんだけど……少しだけ付き合って欲しいんだけど」
大河「別にいいけど。で、何?」
女生徒「ここだとちょっと……(ちらっ)」
竜児「(…?)」
大河「で、話って?」
竜児「あー、ちょっと俺コーヒー飲んでくる。ほら大河、降りてくれ」
大河「さっさと買って戻ってきなさいよ。あんたの膝はあたしの椅子なんだから」
竜児「はいはい」
女生徒D「……………」
大河「あーイス硬い。冷たい。で、何の話なの?」
女生徒D「あのさ、逢坂さんと高須君ってさ、すごく仲良さそうに見える……っていうか付き合ってるふうにしか見えないんだけど……やっぱりそうなの?」
大河「はー?冗談でしょ。竜児はあたしの犬。奴隷みたいなものだから。あたしは人間だしー。犬とは付き合えないわ」
女生徒D「ホントにホント?」
大河「……?本当よ。あたし、他に好きな人いるし」
女生徒D「じゃあ、高須君とは何でもない?」
大河「何かある事なんて絶対ありえないわ。犬だし」
女生徒D「………そっかぁ!よかったぁー!」
大河「…?」
女生徒D「実はさ、別のクラスにね、高須君の事が好きだって友達がいるの。その子に頼まれちゃってさー、高須君の事、紹介して欲しいって」
大河「え?竜児を?」
女生徒D「そう!それでね、その子すっごくいい子でね、高須君の事、一年の時からずっと片思いなんだって。でも高須君っていっつも逢坂さんと一緒にいるでしょ?だから二人は付き合ってるんじゃないかって思って声かけられなかったみたい」
大河「あらそう…」
女生徒D「ほんと、その子すごくいい子でさ、失恋させちゃったら可哀想で。だから逢坂さんと高須君が何でもないって知ったらきっと喜ぶわ。あーよかった」
大河「でも、その女の子とどうなるかは竜児が決める事だと思うけど」
女生徒D「絶対上手く行くと思う。その子、すごく可愛い子だもん。よかったぁ。じゃあね逢坂さん、それだけ確認しときたかったんだ。ありがと!」
大河「あ…」



大河「ねえ竜児、おやつはまだなの?早くしなさいよ」
竜児「今作ってるだろ、おとなしく待ってなさい」
大河「ふん」
竜児「……? 何だ大河、放課後からずっと機嫌悪いみたいだけど。何かあったのか?」
大河「別に」
竜児「ほら、やっぱり機嫌悪いじゃねーか。………よし、できたぞ。俺の特製イチゴケーキだ。食えよ。美味いぞ」
大河「さっさとよこせ」
竜児「まだ機嫌悪いな……。そうだ、ほら大河、お前がこの前喜んでた北村の写真あるだろ。あれ焼き増しして、ラミネート加工しておいたから」
大河「………」
竜児「どこだったっけ……あ、あったあった。これだ。ほーら大河、北村の写真永久保存版だぞ。これ見て機嫌なおせよ」
大河「………」
竜児「な?きれいに仕上がってるだろ。大事にしろよな(なでなで)」
大河「………」
竜児「まだ、機嫌なおらないのか?どうしたんだ?大河」
大河「うっさい。よくわからないけど、とにかくイライラする」
竜児「わからないって……なんだそりゃ。ほーらよしよし。明日はお前の大好きな黒豚のとんかつ作るからさ。な?」
大河「…………」

     *  *  *  *  *

実乃梨「おはよ大河!」
大河「おはよーみのりん」
竜児「よう櫛枝」
実乃梨「あれ?たいがー、なんか元気ない?」
大河「え?そんなことない。いつも通り」
実乃梨「そう…?」
女生徒D「おはよー。高須君もおはよう」
大河「!」
竜児「(ん?大河が俺の手を強く握ってくるなんて……何だこの反応。昨日、なんかあったのか?)」
女生徒D「ねぇ高須君、ちょっといい? ………実はさ、高須君に会いたいって子がいるの」
実乃梨「……!?」
竜児「……は?」
女生徒D「その子ね、高須君の事、すごく好きだっていうの。だからお願い!会ってあげて欲しいの」
実乃梨「おおう、高須君ってば隅に置けないねぇ〜。おじさんびっくりだよ。あはは」
大河「……」
竜児「え、いやでも」
実乃梨「ねぇ大河、そう思わない?驚いちゃったぜ〜」
女生徒D「逢坂さんには、昨日教えちゃった。ね、逢坂さん。それで逢坂さんからも高須君がフリーだってお墨付きもらってね。こうやってお願いしに来たわけなの。ね、いいでしょ?一度だけでもいいから会って欲しいの」
実乃梨「……!? タイガー…?」
竜児「俺が……女の子に好かれるなんて……初めてだ……信じられねぇ……」
女生徒D「そういうわけだから!放課後、私と一緒に校舎裏に来て!お願いね!」
竜児「え?え? お、おい……まいったな…こんな事生まれて始めてだ…どうすりゃいいんだ」
大河「……」


--> Next...




作品一覧ページに戻る   TOPにもどる
inserted by FC2 system