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チャポン
湯気が天井からポタリと背中に〜♪
ではなく湯船に落ちる。

「はい後ろ終わり。次前ね。ほらさっさと手どけなさいよ男の子らしくない!」

もし本当に神がいるなら……願い事が一つ叶えられるのなら…どうか時間を戻して下さい。
別に小さくなる前に戻せとの我が儘は言いません。
せめて大河に会った時に真実を語らせていただければいいのです。
それだけでいいのです。そしたらこんな拷問を受ける事もなかったでしょうから……

先ほど無理やり脱がされ全て見られた。
「あら可愛い♪」とも言われた。
ついでに軽く指で弾かれた…。
…ちょっと痛かった。
もうお婿に行けない…。
プライドもズタズタだ。
「前は自分でするからいいよぉ〜」
「なぁ〜に今更恥ずかしがってんだって」

恥ずかしいに決まってるだろ!!
せめてタオルくらいくれよ!!
何が悲しくて隣人のクラスメートに2度も見せなくてはいけないのだ!?
それに…
「いいからさっさとこっち向けい!!」
抱きかかえられ半回転させられ大河と目があった。
「よし♪じゃ洗うよぉ♪」
頼むからせめてお前だけはタオルを巻いてくれ!!

そう大河はもう完璧なまでに全裸なのだ。
全体的にミルク色で透き通るような肌。所々赤みがかっているのは風呂場の熱気のせいだろう。
腕も足も本当に折れそうな程細くて綺麗だ。
あの哀れと言われ大河のコンプレックスの元は,やはり小さい……が,俺は哀れとは思えない。
ちゃんと膨らみがあるし形も綺麗。それに先ほど講義し暴れた時に肘がちょっと当たってしまったのだが,とんでもなく柔らかかった…。
そして下腹部は…

「よしオッケ♪流すよ。」
大河の声でハッ!!っと顔をあげ目を開けた。
竜児はずっと目を瞑り俯いてた。
当たり前じゃないか。こっちは目のやり場に困ってるんだから。
それでも頭ん中は不覚にも全て見てしまった大河の体でいっぱいだった。



*****


リビング。
ブォーっとドライヤーの音と熱を耳元で感じる。
竜児にとって天国とも地獄とも言える試練は気付けば終わってたのだ。
殆ど記憶がない。
あるとすれば、全て大河任せだったて事だけだ。
体洗うのは勿論。
シャンプーもコンディショナーも。
湯船では大河に抱っこさせられてた様な…?
曖昧だ。
風呂上がってから体拭くのもあまつさえ着替えも大河だった。
もちろん俺だって反論はした。
だが全て「いいから」とか「おとなしくしな」とか終いには「黙れ!」と…。
あぁ。流石手乗りタイガー。子供にも容赦なしか。
幼児体型のおかげなのか,それとも俺の理性が勝ったのかは分からんが俺の息子は上り竜になる事なく済んだ。

で,もちろん今このドライヤーで髪を乾かしてくれてるのも大河だ。

なんかもうどうにでもしてくれ状態だ。
プライド?何それ?おいしいの?
今なら【大河お姉様】でも何でも言えらぁ〜!ハハハハはぁ〜…


しかし昼にも思ったが,髪を触られたり頭を撫でられたりするのは本当に心地よくて気持ちいい。
何度か大河の頭を撫でた事あるけど,あいつもこんな気持ちだったのだろうか?安心を感じていたのだろうか?


カチッと音と共に「はいお終い」と言う声。
なんだかちょっと寂しい感覚になった。

「喉乾いたでしょ?牛乳飲む?」
「あっいただきます」
有り難い。息も困難な状態が続いたので喉もカラカラだ。
「はいどうぞ。私髪乾かしてくるからゆっくりしてて」
「どうも………はぁ〜」
そう言って牛乳を俺に渡し洗面所に入る大河を確認し俺はどっとため息をついた。
だがこう気を緩めてしまうと風呂での大河を無意識に思い出してしまう。
滑らかな肌。軽く塩を盛ったくらいの綺麗な胸。その先端に桃色の突k……いかんいかん!!
頭を大きく振り思考を妨げる。
「って言うか俺だってバレたらこの世界にはいられなくなるな」
血の気が引いて行くのを自ら感じていた。


*****


ここにきて第二試練。
就寝だ…。

予想はしていだがこうなるよな。
天井付きのお姫様ベットに潜り込んで2人で横になる。

まぁこの家に来て幾度となく掃除したが客用布団なんて見たことも聞いた事もない。
その前に人が来る事もないと聞いた事があるな。
あのクソジジイにこのマンション捨てられ一度だって顔も見せた事ない……あぁ…一度あったな。
大河を引き取るとかなんとか勝手に言い出して勝手に振り回して終いにはまた裏切った。
思い出しただけでも腹立たしい!!
あと俺以外来た事ある奴は櫛枝ぐらいだろう……

「電気消すわよ」
…あぁ、思い出した。俺櫛枝に振られたんだった。
あの夜の事を思い出し胸が痛くなり大河に背を向けて顔をしかめる。

「ねぇ…竜児」
「えっ!?なっなに!?」
突然声をかけられ驚き軽く声が裏返る。
「あんた好きな子とかいる?」
こいつはこのタイミングでそんな話しを振ってくるのか…
「いっいるよ。一応…」
「そっかぁ」
「…大河お姉ちゃんは?」
「…うん。いるよ。大好きな人が…」
「へぇ,そうなんだ」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙が続く。なんだか耐えられず
「どっ,どんな人なの?お姉ちゃんの好きな人って?」
分かっている事を聞いてしまう。
「ん……好きになっちゃいけない人かな」
だが返ってきたのは意外な答え。
「えっ!?…何それ?」
なんだそれは?お前の好きな人は北村だろ!?
なんで好きになったらいけないんだ!?
「その人には別に好きな人がいるから。それに…」




好きな人!?
…あぁ、兄貴の事か…。
確かに北村は全校生徒の前で兄貴こと元生徒会長の狩野先輩に告白した。
それで誰もが北村は先輩が好きだって事を知ってる。
でも先輩は北村を振った…?
振ったのかどうかは曖昧だったがもう留学先のアメリカに旅立った。
北村もその曖昧な先輩に対する大河の襲撃のおかげで吹っ切れ今では失恋大明神として活躍中である。

それでも大河は北村が好きだったではないか。
なぜ急にそんな弱気になってんだ。

「それにね。その好きな人の好きな人って私の親友なの…」
「……えっ?」

親友?大河の親友…。
兄貴…は,どう考えたって親友ではない。
香椎?木原?違う!!
あの2人は友達だが親友と呼べる程でわない。
なら川嶋?
いや…あいつは大河にとっちゃ親友より悪友だ。
…だったらやっぱり親友と言える奴は櫛枝しかいねぇ。

「その好きな人はね…」

櫛枝の事が好きな奴を好きだと…?
思い当たる奴がいない。
ただ俺を除いて。

「竜児って言うの」


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