*****


俺は今大河と学校に向かっている。
と言うか大河に思いっきり手を繋がれ…いや掴まれ無理矢理連行されてる。
櫛枝が部活で学校にいるらしい。さっき大河が電話で聞いてた。

爺さんの話しによると好きな子からキスをされると男性ホルモンが活発され,あーだらこーだらなって戻ると言うらしい。
あの爺さん適当過ぎる。
因みにキスは口じゃなくても顔の一部だったら頬でも額でもどこでもOKみたいだ。

それを聞いた俺はホッと安心した。
……安心?なんでだ?むしろ悲しむべきなじゃないのか?
昨日から俺の様子がおかしい。

「あっ!みーのりーん♪」
「YO!!大河ぁ〜♪」
どうやらいつの間にか学校に着いてたらしい。
俺の手を離して櫛枝に抱き付く大河。
あぁ…櫛枝。イブ以来に見るぜ。
明けましておめでとう。

「みーのりーぬ。会いたかったよぉ〜」
「おうおう。可愛い奴め。あーしゃしゃしゃ」
とムツ○ロウさんよろしく大河の頭をワシャワシャする。

「ところで大河。あの高須君にクリソツなチビッコは何だい?」
「!!」
やっぱ似てるのか!?って当たり前か…。
「はっ!!もしかして高須君の生まれ変わり!?」
お前もかよ!?だから俺は死んでねぇ!!

「…あーちょっとした知り合いかな?それよりみのりん聞きたい事があるの…」
「おっ!?質問かい?構わんよ。この櫛枝になんでも聞くがよい」
「うん…クリスマスイブの日、竜児と会ったでしょ?…その時何かあった?」

ちょっ!?おい!!
キスの事頼むんじゃなかったのかよ?
なぜ今その事を…

「…会ったけど、何もなかったよ」
…えっ!?
竜児が驚くのも無理はない。
そんなニッコリ笑顔で何もないと言われたら…

「本当に何もなかったの?」
「本当だよ。元気がなかった私を励ましてくれただけさね。いやー本当高須君はいい人だねぇ」
「…そうなんだ。」


あぁ。櫛枝はあの日の事を何もなかった事にしたいのか…。



「大河お姉ちゃん。僕お腹空いちゃったから帰ろう」

この場から一刻も早く離れたくて俺はそう口にしていた。

「えっ!?りゅ…」
「やや!?大河〜,お姉ちゃんなんて呼ばれてんじゃん。」
「え?あー…うん、まぁ」
「いやしかし本当に高須君ソックリだね。僕お名前何て言うの?」

そう言いながら俺の前に来てしゃがみ目線を合わせる櫛枝に
「竜太だよ。」
と動揺することなく笑顔で嘘の名前を答える。

「ちょっ!?りゅー…たぁ〜!??」
えっ?あれっ?っと動揺してるのは大河の方だ。
「へー竜太君って言うんだ。いくつ?」
「5歳です」
「わぁ〜ちっちゃいねぇ〜可愛いねぇ〜オバチャン食べちゃいたいくらいだわよ。もぉ〜チュッチュッ」
「「あっ…」」
今…確かに…

「櫛枝キャプテーン。そろそろ時間でーす。」
グラウンドの方から声がする。
ソフト部の後輩だろう。
「ありゃりゃ。もうそんな時間なんだ」
校舎の時計を見ながら立ち上がる櫛枝
「じゃ私戻るね。大河また新学期にねん。竜太君もまたねぇ〜」
ウワーハハハハっと笑いながら去って行く櫛枝の背中を見つめながら2人は唖然としていた。


「…今,俺頬にキス…された…よな?」
「…えぇ。されてた…はず…よね?」
そう竜太…もとい竜児は櫛枝に不意打ちのキスをされていた。
爺さんの話しでは顔の一部…つまり頬にでも好きな子からキスをされれば元に戻ると聞かされていた。
しかしどうだ!?

「俺,戻って…」
「ないわね。竜太君のままよ。」
竜児の体は何一つ変わってなかった。
どうゆう事だー!?あのジジイー!!!!

竜児は倒れた。
竜児のライフは0になった…。



*****

暖かい。
なんだか体がフワフワする感覚だ。
それに柔らかくて気持ちいい…いや心地いい。
ここはどこなんだろう?

「気が付いた?」

うっすらと目を開けたら大河の顔があった。
本当こいつは綺麗な顔立ちしてるな。
…って
「おうっ!?」
「わっ!?いきなり起き上がるな!ビックリするじゃないこのバカ犬!!」
「わ,わりぃ」

いやいや。それよりなんだこの状況。
ここは近くの公園のベンチか?
で,なんで俺大河に膝枕とかされちゃってんの!?
気持ちいい感覚にもなる訳だ。

「ったく。あの後いきなり倒れたからビックリしたわよ」
「あっ…そうか。」
倒れたんだな俺…
「どうせ。みのりんにキスされたのが余程嬉しくて興奮して倒れたんでしょ?」
あーやだやだ。これだからエロ犬は
っと、ヒドい言いようだな,おいっ!!

「アホか!!普通に元に戻れてないのがショックだったんだよ!!」
「あらそう。別にどーでもいいけど」
本当にこいつは…
「まぁ取り敢えずここまで運んでくれたんだな。ありがとう。」
「ななななに素直になっちゃってんの!?べべべ別にこれくらい。」
何こんくらいで動揺してんだよこいつは?

「いやマジで昨日から大河にはお世話なってるからな。本当感謝してるよ」
「まぁあれくらい……はっ!!!」
「ん?どした,たい…がぁっ!!…さん?」

大河の様子がおかしい。
なんだこれは?
顔は「お前らの血は何色だー!?」「赤ー!!」っと小学校の運動会の応援を思い出させるような程に真っ赤じゃないか!
だがしかし!
後ろに黒いオーラが…虎が見えるのは気のせい…
「ききききのうの事,すべて,ききき記憶から消せぇぇぇぇー!!!!」
ではなかった。





「おおう!!?ま,待て待て」
待て待て待てー!
お前一体全体その木刀はどこから出して来たんだ!?
どこに隠し持っていたんだ!?
お前はいつマジシャンになったんだ!?
ワン・ツー・スリー・ポン☆
はい。鳩じゃなく木刀でましたーってか!?
竜児はまたまた混乱した。
この体になって何回混乱してんだか。

「待てるかー!昨日のお…おふおふ,お風呂でWAWAWAわたしの,は…はだ…はだ…はだはだはだはだ…っっ!!」
噛みすぎだバカヤロー!
WAWAWAって谷○か!?お前は!!
「ちょっ!待て大河!!落ち着いてくれ!!」
ほんとマジ落ち着いて!!

「うるさい…」
「えっ…?」
「うるさいうるさいうるさーい!!見たんでしょ!?聞いたんでしょ!?」
「いや…見せたのも聞かせたのもお前な訳で…」
「シャラーップ!!」
おう!流石英語得意なだけあってナイス発音…じゃねぇ!!
「裸を見られたからには…あの話しを聞かれたからには…もうあんたを殺すしかないの!」
「殺すな!」
あれっ?このシチュどっかで…デジャブ?
「死にたくなけりゃ記憶を全部消せー!!」
振り下ろされる木刀。
わーわー死ぬ!!
ちくしょー…
「嬉しかったんだー!!」
「………え?」

あ…あれっ?痛みが来ない。
目を開くと目の前で木刀がピタリと止まってた。
ふぅ。助かっ…じゃねぇ!俺なんて言った?

「なななななに言っちゃってんのあんた!??嬉しかったって…私のはははだはだ,裸見て嬉しかったって…どんだけ変態犬なのよ!!!」
おう。まぁ多少ながら嘘ではない。俺も男だ!
女の子の裸を見たらそれなりに嬉しい…って
「そっちじゃねーよ!!…あっ…」
「えっ?」

俺また墓穴掘っちゃった?




「…そっちじゃないって?」
あーつまりーなんだー。
そんな真剣な表情で見つめないでくれ。
「そっちじゃないって…じゃあどっちよ!?」
「あー…その…あれだ」
そんな真剣な表情で追い詰めないでくれ。
「竜児!」
「だー!つまりだな!…その俺の事をす……好きだって言ってくれた…事を…」

――ボンッ☆
一気に大河の顔が耳が首が赤く染まった。
声が出ないようで口をパクパク?…あわあわ?しているご様子。
釣られて竜児も赤くなる。

「いや,最初はマジでビックリしたんだ。困惑もした。…でも。俺,人から好かれた事とかねぇし…お前は冗談のつもりで言ったのかもしんねぇけど…」
やっぱ嬉しかった……んだと思う…。
と最後の方は消えそうな声で呟く。
「……………」
大河は顔色は真っ赤なままで俯いてちょっと涙ぐんでる様にも見える。

「……たい…」
「竜児」
動かない大河に声をかけようと試みた竜児だったがそれは大河よって中断された。
竜児の心臓はさっきからドキドキしぱなっしだ。
そして今余計に高鳴りが大きくなった。
今から何を言われるのだろう?改めて告白されるのだろうか?
「……おう」
息を呑み言葉を待つ。
「お爺さんの所…戻ろ?」
「…へっ?」
しかし耳にした言葉は予想外の想定外だった。

「お爺さんの所に戻って原因聞かなきゃ。ちゃんと言われた事実行したのに竜児元に戻らなかったんだから」
まぁ,確かにそうだ。
だが話しがぶっ飛んだな。……いや,流されたのか?
どちらにせよ大河の言ってる事は正論だ!
このままじゃ俺は元には戻れない。
うん。そうだな。今はこんな恋話をしてる場合じゃないよな?
俺が悪かったよ大河。
だからそんな涙ぐんで上目使いで見るのは止めてくれ。どうかなっちまいそうだ…。
「あぁ,戻ろう」
「…うん」

俺たちは公園を後にした。


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