或る晩。
竜児はなにやら、夢にうなされていた。
甘い香りと、くすぐったさ。それに伴う・・・気持ち良さ?
「ってなんだこれ!?」
「ふぁ、おふぃふぁ(あ、起きた)」
「っ大河!?」
・・・目の前の光景が信じられず、竜児は数瞬凍りついた。
ガバッとめくった布団の中、大河が竜児の股間に顔を埋めていた。



「な、なにやってんだ、お前・・・?」
混乱した頭はそのままに、とりあえず竜児は聞いてみた。
その体勢のまま上目遣いで大河は竜児を見る。
「みふぇのふぉうりふふぁふぇふぇんふぉふぉ(見ての通り咥えてんのよ)」
「うあ!咥えたまま喋るな!つか、なに言ってるかわからねーからまず離せ!!」
「ふるっふぁいふぁふぇー・・・ん(うるっさいわねー・・・ん)」
「うあっ!!」
ズルルッと、吸いながら口を離す大河。
腰にくる感触に思わず竜児が身悶える。
「お、お前・・・も少し丁寧に・・・」
「なんなのよ一体?」
竜児の抗議をきれいにスルー。
やはりそこは手乗りタイガー。
「そ、それはこっちの台詞だ!!」
なんとか体裁を保ちたい竜児だったが、下半身露出のままでは格好がつかない。
とりあえず、先程剥がした布団を引き寄せた。
「おおおお前何やってんだ!?」
「だから咥えてたんだって」
あっけらかんと言われ、竜児の拍子が抜ける。
「な・・・なんでそんな・・・?」
とりあえず口にした言葉。
それに答える、さも当然といった口調。
「ああ。それは私が竜児を犯したいからよ」
「・・・は?」
いわれた言葉が理解できずに、竜児の顔がポカンと呆ける。




その目の前で、大河が祈りを捧げる聖女のように両手を重ねた。
「ほら、いつも私って竜児に任せっ切りじゃない?いっつも気持ちよくしてもらってるじゃない?それって不公平だと思うのね?」
「な、なんで?」
混乱した頭はいまだ定まらず、とりあえずの相槌しか打てない。
「だってほら、竜児は私のために色々してるけど、私何もしてあげてないじゃない?それってフェアじゃないわよね?」
そこまで言われてはっきりする頭。
その原因は・・・嫌な予感。
「い、いやだってそれは俺が男だから、リードしないと・・・」
「それにね?」
「え?」
遮られた言葉。
その竜児の目の前で、大河はそれはもう本物の聖女のように微笑んだ。
「竜児、感じてる私の顔じっくり見てるよね?私恥ずかしいって言ってるのに、いつも、じっくりたっぷりねっぷり眺めてるじゃない?」
「そ、それは・・・」
「不公平だと・・・思わない?」
ニッコリ。
問い掛ける言葉はあくまでソフト。
しかしその裏に隠された感情に、竜児の背筋が凍る。
「い、いや待て・・・だ、だからって俺を感じさせたって、そ、そんなにいいもんじゃ・・・」
「それはね?」
一呼吸置いて大河は微笑みをより深くした。
悪魔の笑みで。
「私が決めることだから」
「ま、待てーーーーーーっ!!!」
絶叫する竜児の目の前、悪魔の笑みを貼り付けたまま、大河が一歩一歩近づいてくる。
「ま、待て大河・・・も、も一度考え直せ。そ、そんなことしても・・・」
「残念ね竜児?お喋りの時間はもう終わりなの」
竜児の眼前に立つ大河。
そして。
ふわりと竜児に抱きついた時、耳元で囁く愛の睦言。

『覚悟決めてね?』

「い、いやだああああああああああああ!!」
竜児の絶叫は、夜の闇に紛れて・・・消えた。



亜美「あっれー?高須君、今日なーんか元気なくない?」
実乃梨「うんそだね。なんか元気ないっていうか、生気ないっていうか・・・あ。おーい大河ー!」
大河「なーにみのりん?」
実乃梨「高須君さ、一体どったの?元気バリ無いんだけど?」
大河「ああ。なんか、男としてのプライド根こそぎ奪われたとかなんとか言ってた」
実乃梨「はえ?なんだそれ?」
大河「さあ?(ニッコリ)」
亜美「・・・ん?タイガー?あんた今日やけに肌の色艶良くない?」
大河「そっかな?・・・ああ。昨日沢山栄養取ったからかもね」
実乃梨「そうなの?」
大河「うん」
亜美「・・・なんか亜美ちゃん、わかりたくないことわかっちゃたかも・・・」
実乃梨「ん?なんだよあーみん?一人でわかってないで教えろよ」
亜美「・・・実乃梨ちゃんは、まだ知らなくて良いことよ。たぶん。・・・でしょタイガー?」
大河「さあね?(ニッコリ)」
実乃梨「?」

ごちそうさま竜児。

ギシアン・・・orz





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