繋がってる場所を探る。うん、ちゃんと硬いな。……じゃなくって!
馬鹿な事を意識したからか頬が熱い。その頬に刺さる視線も痛い。
だから、最近いつもそこは控えめだったのか。悪い事をした……かも。

「黙秘か? 大河、なぁ大河、おーい大河ー?」

眼力で爆破できるのであれば、今こそその時!さぁ爆ぜよ!
しかしそんな都合よくごまかせやしない。……ちっ、お前も敵か、おんぼろコンポ。

「…………何よ?」
「マナーのなってない奴はどっちだろうなぁ?」
「…………っ!」
竜児をキッと睨み付ける。

「ちっ、ニヤニヤしてんじゃないよ!」
「へーへー。何でも構いませんよーっと」
「あんたさ…………最近、動じなくなったわよね?」
「自分が悪い時は素直に謝るからな、大河は。今のは単なる負け惜しみだろ?」
「…………フンッ」

白旗を掲げよう。悔しいけど、こればっかりは負けだ。


「そ、その事については、あの……謝って、あげても、いいわ」
「おう。分かってくれて嬉しいよ、大河」

と、胸元を隠してる私の手首をグッと竜児が掴む。

「あぁ、あのあの、もう殴ったりしないから、ね?」

その力強さに反射的に言ってしまう。

「あぁ、俺もさすがにもう一回は御免だな」
「…………悪かったわよ………」

掴んだ両手を持ち上げられる。顔の横、布団にポンと置く。
それから全部の指を絡めてくれる。これ好き。
もう繋がってるのに手を繋ぐのがこんなに嬉しいだなんてね。
どこもかしこも繋がってたいの。それって変かな?

竜児の顔が近づいてくる。
優しく微笑んでいる竜児の顔を閉じるまぶたに映して口付ける。
止まっていた腰もゆっくりと動き始める。
よかった、そんなに気にしてないみたいでよかった。




止まっていた時間を取り返そうとでも言うのか。
竜児の動きがさっきよりもずっと心地よい。
入れられつつも動かさないなんて事を続けられてたもんだから、
さっきよりずっと敏感になってるみたい。

「ふ……んぁ………んっ……」

竜児はキスを続けてくれる。優しい感じ。
そのまま、指を絡めたまま頭の上の方に持っていかれる。
やる気のないバンザイみたいな格好。

「んんっ!……」

ぐっと奥まで突き入れてきた。と思ったらゆっくり腰を回し始める。
これも好き。ずっと竜児が奥まで入ったままだから、好き。
ゆっくり回すのは疲れるんじゃないかとも思うけど、そうでもないのかな?
ずりずりと内側を擦られると、ふにゃふにゃと力が抜けちゃう。

もう乱暴しないからそんなにいじめないでよ、竜児――



「ぷあっ……はぁ……ん…………」
「はぁ……はぁ……大河、さっきの、いいよな?」

なんて、まっすぐ見つめてくる。腰の動きも抜かりがない。

「ぁ……ぁん…………うん。い、いいよ」

こんな風に言われて、どうやったら断れるんだろう?

唇から頬、首筋にキスを降らせる竜児。
こいつの熱い唇が、舌の粘膜が私の肌に触れるたびに微かに震える。
両手はそのままに顔だけ動かして左の首筋から二の腕へ。

「や、やぁ…………汗、かいてる……かも」

そのまま下に動くのを察知して声を発する。

「ん? おう、シャワー浴びたんだから全然平気だぞ。それに俺はそんなの気にしない」

あんたじゃなくて私が気にするのよ!と、心の中でだけ毒づく。


唇を這わせていた感触が変わる。ヌルっとした粘膜を腋の下に感じる。

「ひゃっ!……ちょ、そこは腋じゃないのよ……」
「いいんだよ、ここから始めるんだ」

……何をだろう?
そんなことより、こいつは腋の下フェチだったのか。





なんて思ってると舌先が更に下に降りてくる。
わき腹?ちょっとだけある私のふくらみの下辺あたりまで……

「んっ!…………ひゃあああぁ!?」

ビクビクと身体が震える。今のなに?
もう一度と言わんばかりに同じ位置に頭を戻すのが見える。
今度は舌を大きく広げてゆっくりと舐め上げてくる。
下から上に、脇腹のあたりから腋の下まで一直線に。

「んあっ!…………ぁぁっ!」

ヌルヌルの唾液とザラザラな舌の感触が気持ちいい。
ちょっとだけくすぐったいけど、それすらも快感に変わるよう。
おまけに舐めるラインがだんだん心臓の方に近づいてくる。

「そんなとこ……なんか変態っぽいよ……っ」

悲鳴をあげる。なんかこれおかしくなりそう。

「どほらへんが? ふぇんふぇんふぇいきだろ?」
「でっ、でもっ!……何でそんなところ舐めんのよ?」
「んっ。……おう、つまり、だ。この前はいきなり舐めてビックリされたから失敗したんだ」

と顔を上げて言う。

「だから今度は失敗しないように、刺激が弱いところからって思ってな」
「そう……なのかな? 適当にそんな理屈付けてんじゃないの?」
「まぁ、現時点で俺が無事なだけ大きな進歩だ。あながち間違いとも言えないだろう?」
「だっ! だから……もう、殴らないって言ってん、のに……ひゃっ!」

肋骨の出っ張ってる辺りに唇を押し当てる竜児。
それから、ゆっくりゆっくり、毛穴を全て塞ぐかのように舌がじわじわ進んでいく。
皮膚の下の肉を押しのけて肋骨の表面まで舐められてるみたい。
熱い粘膜と触れ合っている肌はぴりぴりした刺激と肉が溶けてしまいそうな錯覚を起こす。

「やっ!………あっ!…ああっ!!」

何度も繰り返されて、どんどん滑りも良くなって、熱くなって。

「やあっ!…………やっ!…あっ!…………だめっ!」

首筋には鳥肌が立ちっぱなしで、竜児の腰も回ってて、なんかもう……っ

「りゅ、竜児、それ……だめ……なんか変になっちゃう」
「変って、いやな感じか?」
「いや、じゃ……ないけど…………」
「なら、続けるな、大河」





段々と中心に近づいてくる竜児の舌がふくらみのはしっこを通過する。

「あんっ!!!」

じわじわと周りから敏感にされてたからだろうか。
今日は竜児の舌の感触がダイレクトに伝わってくる。
もう、くすぐったさなんかどこにもない。
なぞったところから甘い毒が広がっていくように私を虜にしてく。
私の意志とは関係なく、竜児の舌の動きに合わせて身体をくねらせる。

「あっ………あぁっ…やっ!…あっ!………」

水着の圧力にすら負ける私の柔肉は、竜児の舌に押されてぷにぷにと揺れる。
声が抑えられない。口を塞ぎたくても両手の自由は奪われたまま。
と、不意にペロッと。ここにきて動きが変わった。

「ふ………っ……」

舌先で柔肉を弾かれる感触に、ビクンと腰が浮き上がるように跳ねた。
と、その時に竜児の顔も一緒に跳ね上げて、偶然にも鼻先が胸の突起を。

「あぁぁああああ!!」

大きな声を出しながら首が仰け反る。鋭く電流が走った。
白い光が確かに脳を駆け巡った。全身がぎゅうううっと縮こまる。
サッとかすっただけ、それだけなのに。
なにこれ!? やばい、やばいやばい!



こんなに敏感になってたんだと自覚する。
同時にさっきから感じていた物足りなさを理解する。
だから……いつまでも周りばっかり舐めてないでよって思うのか。
でも竜児はそんな私の気持ちはお構い無しに舐め上げてる。

「っ………あっ……あっ!………」

もちろんそっちも気持ちいいの。
けれど、一度刺激されてしまった先端に意識が向いてしまう。
さっきはかすかに触れただけなのに……これで舐められたらどうなっちゃうの?

――そして、冷静に今の自分の状態を把握する。
両足の間には竜児の楔が打ち込まれてる。
竜児の体重のほとんどを使って縫いとめられてる。
そして両手は頭の上で10本の指に繋ぎとめられてる。

そう、私は、全く動けない。






「あ…………」

そんなポーズで敏感な胸やお腹を竜児の前にさらけ出してる。
自由に動く竜児の舌に翻弄されて、いやらしく身体をくねらせてる。
こんな、こんな――まな板の鯉そのまんまで何も抵抗できないってこと?

そこに追い打ちのようにピンク色の脳みそが余計な映像を送り込んでくる。

天井から見下ろす視線。

その先にはピチピチと活きが良い私を生きたまま食べようとする凶悪面が。
そいつが、ぱく!ぱく!と食いつく度に私の身体は大きく跳ねて汗の雫が飛び散る。
これじゃ、まな板の鯉どころか、踊り食いされてるみたいじゃない!?
でも……そこに見える私はとけそうな表情で甘い声を出して喜んでて。

――そんな数刻先の未来が再生された瞬間。
ゾゾゾっと背筋から首筋、頭の後ろまで一気に寒気が突き抜けた。

「―――――――――っ!」

だ、だめだだめだ、このまま続けたらおかしくなっちゃう。逃げないと。


「だ、だめっ!」

ぐっと腕に力を入れて押しのけようとする。
……が、竜児と絡めた指が外れない。

「んんっ!?……ねぇ竜児、手を……離して」
「ん? おう。離さないぜ、大河?」
「はぁ? なんで、なんでよ? なんで離してくんないの?」
「んー。分からないかな?」

え、なになに? どういうこと? ちょっと混乱して竜児の顔をまじまじと見る。



「逃がさねぇって言ってるんだよ」

と言って顔を上げる。ニヤリと唇の端を歪める。

「っっっっっっ!」

瞬時に顔が茹で上がる。
こいつは…………こいつは始めっからそのつもりで!

「な、何よなによなによ! そそそそんなのずるいわよ!」

竜児は答えずにまた私の胸にしゃぶり付く。

「だめっ……竜児、それだめ……あっ!あああああっ!」

力が入らない私をがっちり押さえ付けて、竜児が本気になる。
袋から出したアイスキャンディーを下から上まで舐めるみたいに
スピードを上げて何度も何度も私のふくらみを刺激していく。

「ああっ……だ、めええぇ……んんんっ――!」




私の言葉を聞いてくれない。
竜児がそれを執拗に繰り返す度に、ぞわわ、ぞわわと粟立つ。
痺れるような刺激が止めどなく脳みそに叩き込まれる。
焦らすように何度も何度も舌先でねぶりながら、それでも着実に先端に近づいてくる。

ゴクリと喉が鳴る。これは恐怖か、それとも期待か……



真っ赤にした顔をいやいやと振ってみても、私の上半身は全く動かない。
見なくても分かる。痛いくらいに先端が尖ってて期待に震えてる。
見られたくないのに、とうとう竜児はその先端と周囲の桜色に到達する。

「あんっ!……」

色が変わる境界線をかすめるように舐められる。
舌の熱さを、湿気を、竜児の吐息を感じる。
鳥肌が全身にぶわーっと広がる。
だめだ、もう逃げられない!――と観念し、ぎゅっと目を瞑る。

心臓が破裂しそうで、もう…………

でも、竜児は決して中心には触れないように周りだけを舌先でねぶる。
しわを伸ばすように丹念に丹念に乳首の周りをくるくる回る。

「あっ!……ん――――――っ!――――――!」

声が……出ない。呼吸を忘れたように息を詰める。
抑えようとしても身体がビクビク震えて止まらない。

…………なのに、本当に欲しい刺激が来ない。
そこだけはどうしても触れてもらえない。
いつまでたっても満たされないもどかしさで胸が張り裂けそうになる。
飛び出したいのに飛び出せない快感が喉の奥に留まって焼けるようだ。

あああああもうだめ。お願い、お願い。
もうそれ以上焦らさないでよ、ねぇ竜児。
だめ、だめなの、だめだめもうお願いお願いだから触って!
その熱い舌でめちゃくちゃに舐めてほしいの!もう我慢できないの!
やだよ、やだやだやだ!周りだけなんて「やああああだあああああああ!!!!!」



あ……………………声が……出ちゃった。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




竜児がビックリした表情でこちらに顔を寄せてくる。心配そうな視線がぶつかる。
そりゃそうだろう、いきなり『やだああああああああ!』なんて絶叫したんだし。
もう…………ほんとにもう! 自分のドジさ加減がいやになる。
あのまま我慢してれば、舐めてくれたかもしれないのに……

そんな後悔もすぐ掻き消えるくらい、先端がじんじんと痺れて刺激を求めてる。
寂しい。辛い。…………他の事なんか考えられない!!!
キッと竜児を睨みつける。

「た、大河? その、そんなにが………………ぐっ!?」

口を塞ぐ。
いや、そんな生易しいもんじゃない。
自由になる首だけを渾身の力で突き出して唇に噛み付いた。
だまれだまれだまれ!そんな言葉なんか聞いてらんない!

竜児の下側の唇を引っ張って顎の力で引き寄せる。

「痛っ……お、おまへはぁっ!?」

バランスを崩した竜児の大きく開いた口に私の唇をねじ込む。
みっともなく思い切り舌を伸ばし、竜児の舌を絡め取る。
たっぷり唾液で潤した私の舌全部を使って巻き込むように締め上げる。

あんたが、どうしようもなく鈍感なんだとしても……
分かっていて焦らしているんだとしても……そんなの関係ない!

「んんっ!………んっ……」

もし……どうしてもしたくないって言ったって、私と同じように燃え上がらせてやるだけ。
ほら、あんたの脳みそも溶かしてやるから、こっちに来なさい?

と、引き寄せた竜児の舌を唇で捕まえておもいきり吸い込む。
舌先で細かくなぞりながらくすぐる。
唾液をたっぷりまぶした表面同士を擦り合わせる。
この熱くてぬめったので舐めてほしいの!と満たされない感情をぶつける。
ちゅく、ちゅぷと唾液の音が頭の中に響いてくる。

「……おっ、ら、らい、ぐむっっ!」

私の唇から逃れて引っ込んでいく竜児の舌をすぐさま追いかける。
話す事なんかないでしょぉ!?……逃がさない。ぜったいに!

沸騰したような感情のまま、竜児の口腔に飛び込んで舌先で荒らし回る。
閉じてる歯と、歯茎に舌全体を押し付けて無理やりこじ開ける。
口腔の下に留まっている竜児の舌をすくい上げて絡め取る。
そのまま、唇を唇で塞ぎ、深く、深く絡めあって……


そして私は溺れていく。

「――――ぶはあっ!!」
「ぁ………ん……」
「こ、の…………窒息しちまうだろうが!」

それには答えないで睨み付ける。
どんな感情か、なんて、今はそんなの分からない――





「ねぇ、竜児……こんな事を言うのは反則かもしれないって思うの。でもだめなの。もうだめなのよ!」

はぁはぁと酸素を求める吐息の合間で話し掛ける。興奮、もしてる、してるに決まってる。

「恥ずかしいんだけど、本当にもうおかしくなっちゃいそうなの。だからお願い!」
「あ、あぁ。そんなに何度も言わなくても、もう分かったから」
「う……ん。…………ん、何度も? ――――へっ?」
「さっき叫んでただろ、竜児の舌でめちゃくちゃにして欲しいとかなんとか」
「ひぅ?!?!」

心臓がドクンと痛いくらい脈打つ。竜児は今なんて言った??

「……って、うそ、あれあれ? ななな、ななんで? 私そんなこといった?」
「ああ、だからそんなに我慢させて悪かったなって言おうとしたら、おまえが噛み付いてきたんだ」
「………………」

なんてこと。ほとんど全部聞かれちゃってるじゃない。
恥ずかしすぎる……と俯いてる私に、

「だから、おまえの気持ちはよく分かった。もう心配するな」
「な、何よ、これ以上辱められるくらいならあんたを殺した方がましよ……」
「暴力的な事を言うんじゃありません」

聞き慣れた、いつものため息を付かれる。

「……だったら…………ちゃんとしてよ、これ以上焦らさないでよ…………っ」

なんだろう、いつの間にか涙が溢れて止まらなくなってる。
さっきのキスでどっか焼き切れちゃったのかもしれない。

「…………っ」

竜児から目を逸らして窓の外を見る。涙はポロポロとこぼれるがまま。
目の内側に白い光が走る。いつの間にか月明かりが窓辺に差し込んできてる。
そうね、お月様の柔らかい光ならここにも届くのよね、白いマンションのおかげかな――






「ごめんな、大河」

反省でもしたのだろうか? 竜児は私の両手を解放し、指先で涙を拭ってくれる。
それから顔を寄せてきて包み込むように優しくキスしてくれる。
さっきと違ってトーンダウン。舌の感触を確かめ合うように。
ゆっくりと竜児の指先が胸元を滑る。マッサージするように円を描く。

「ふっ……ふあっ…………」

今度は迷いなく、その円を小さくしていく。3本くらいの指で先端に近づく。

「あぁっ……っあぁ…………ん……」

名残惜しそうに竜児の唇が離れる。伸ばした互いの舌先に糸が引いて、
そして、きゅっ――――とほんの僅かの力で竜児の指先が先端をつまんだ。

「んあぁぁああぁあぁぁぁあ…………」

ため息と共に肺の空気が全部出て行くような気がした。
じわわぁっと快感の波が広がる。痺れるような波が胸全体を包み込むよう。
竜児の唇は私の顎とか、鎖骨とか、心臓あたりにキスを降らせる。

それが心地よくて、両手で竜児の頭をさらさらと撫でてやる。
胸の肉を唇で吸い上げるようにちゅばっ。ちゅばってしてる。
もちろん、それも気持ちいいんだけど、なんか可愛くってニヤけちゃう。

「んっ……竜児、気持ち、いいよ……んん、もっと…………」

その瞬間、ぱく!と食われた。
先端を。大きな口を開けて。





「んああっ!!!!!」

唇の熱さと粘膜の感触に背筋が、いや全身がぷるぷる小刻みに震える。
でも、口の中のあたたかさは感じても、まだ触れてはくれない。
思わず、竜児の頭を掴む。無意識に押さえつけちゃう。

「や…………だぁ――――――――――お願い。おねが……いぃ」

声が掠れる。とびきり甘くて高い声が口をついて出る。



ちゅるんっ!と舌先で乳首が弾かれた。

「あああああああああっ!!!!」

口を窄めて周りの肉と一緒に吸い上げられて転がされる。

「あ、ぁあんっ!ん……あ!…………あ!………あっ!」

ちゅるちゅると唾液をたっぷり含んだ舌先が押し付けられる。
押しつぶされたと思ったら舌のザラザラでこすり付けてくる。
その刺激があまりにも強すぎて、とろけちゃいそうで。

「だっ、だめっ!りゅ、りゅうじっ!あっ!んあっ!…あっ!」

竜児の頭を掻き抱きながら叫ぶ。腰が何度も跳ねる。



そして跳ねると。そう、竜児の熱い塊がお腹の奥を擦るのだ。
竜児はゆるゆると動いてるだけなのに、自分で自分をいたぶってるみたい。
ゴリ……ズリ……なんて効果音が出そうなほど擦れてしまう。

「ひっ、あ!ぁんっ!やあっ!あっ!」

自分で動いて自分で喘いでるなんて、いやらしい。
でも竜児はしゃぶり付いたまま、先端に刺激を与え続けてくる。
自分の乳首がどうなってるかなんて分からないくらい熱くて……
溶けてなくなっちゃったの ?ああぁ、もうだめ、考えられない!

「あっ!…あっ!…あ!あ!あんっ!あっ!」

頭の中に何度も何度も電流が走る。ビクビクして震えが全然止まらない。
胸からもあそこからも絶え間なく信号が走ってどうしようもなく気持ちいい。





…………それなのに。


竜児は乳首を吸いながら器用に、でも力強く私を突き始めるのだ。
まるで、『休憩はこのくらいでいいかな?』と言わんばかりに。

「!?りゅう、じっ!竜児、ああんりゅうじぃぃっ!今はだめ!今はだめだめだめぇえぇっ!」

るろっ……と先端からようやく口を離して言い放つ。




「だめ?……いいや、大河。俺は止めない」

その瞬間、ゾクゾクゾク―――――っ!と背筋が震えた。
また、ちゅるんと竜児がしゃぶり付く。
今は、今はだめなの、にぃっ!

「あっ!……だ、だめ!………やっ!………あっ!」

そう、か。竜児は止めてくれないんだ。それじゃ私は、
と考えたところでお腹の奥が勝手に竜児を締め上げる。
うねうねと絡み付いて、もう二度と離すまいと蠢くのを感じる。

なんて貪欲なんだろう。
こんなに怖いのに。これから先の自分が分からなくて怖いのに。

けれど繋がってる私自身は必死に竜児を飲み込むように動く。
破裂しそうな心臓で。目の前にある竜児の頭を必死で押さえつけて。

もっと…………もっとして!もっと舐めてよ!
ああああ、いや、いやいやいや怖い怖いよりゅうじ!
でも止めないでお願いだから止めないでもっともっとぉ!

「ああんっ! あ……あああああああああああああああああ!」

何かが身体の中で破裂する。頭の中が真っ白にスパークしてる。
なんだこれ!?こんなのは知らない。こんな気持ちいいのは知らない。

「んあぁああぁ! ふあああんあぁんあぁぁ!」

声を出し続けてないと壊れてしまいそう。嵐のような快感が吹き荒れる。

「おうっ!? う、おおぅ……たい、が、きつ……っ」

竜児の形が手に取るように分かる。脈打つ血管もその中を通る血液すら感じる。

「ぁああぁ……あぁ、ん…………あぁぁぁ」
「大河? いっちまったのか? おぅ、これがイクってやつか……?」

ビクビクと腰が、お腹が震えてる。
お腹の奥は痙攣するように細かく振動を伝えてくる。

これがそうなの?まだよく分からない。





「あぁ、りゅ、う、じ。……ん…………気持ちいい……っ」
「おう。おまえ今すごかったぞ? そんなに、その、気持ちいいものなのか?」
「んぁ………はぁ………ぁぁ………………ばか……今の今で聞かないでよ」
「わ、わりい」
「気持ち……よかったよ?……竜児。…………すごく、ね」
「…………」

きまりの悪い顔をして目を逸らす。頬に添えてる私の掌がほんのり熱い。
ふふ、可愛い。でも馬鹿。ばかばかばか。

「これが、その、そうなのかな?」

嵐が過ぎ去るのを感じながら竜児に問いかける。

「おう、おまえが感じてるところは色々見てきたけど、今のは何か違った」
「……そうなの、かもね。――――って何を言ってんのよ!」
「いやいやいや! 聞いてきたのはおまえだし、俺も必死で、その、こらえて……」
「…………?」
「うわあああああ! 何を言ってるんだ俺はあああぁぁ!」

身悶える竜児を見て気付く。
目尻もほっぺたもとろけ落ちちゃいそうで、ふにゃふにゃと笑っちゃう。
そうか……あんたも気持ちよくなってくれたんだね、と。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




「まだ、ちょっと敏感すぎて、お腹が変な感じなの。腕にも力が入らないし……」
「そうか。ま、まあ始めての事だからな。落ち着くまでこうしてよう」
「うん。…………ね、竜児、聞いてもいい?」
「おう、なんだ?」
「ずっと硬いわよね? そそそ、その、その竜児のコレ……」
「おう!?……って、おまえの好奇心は恥じらいってやつを丸ごと消しちまうんだな……」
「うっさい! いいの! それとも普通にご飯時とかに聞いてやろうか?」
「ごめんなさい。何でも答えます。いや答えさせて下さい」

「フン! …………で、これってさ、疲れないの?
 そ、その、ずっと血液が流れてるわけでしょ? なんか、心臓に悪そうっていうか……」
「あーなるほどな。でも、そんな何時間も動きっぱってわけでもないし、まだまだ平気だ」
「そそそそっそそ、それにずっと動いてて、あの、そ、その、終わっちゃったりしないわけ?」
「あぁ、コツは大体掴んだからな。自分のペースならある程度コントロールできるぞ?」
「………………………………」
いま、さらりとすごい事を言った。
私のコンプレックスを刺激するのは得意のようね、竜児!?


「な、何たるハイスペックなのかしら!? 憎たらしいったらないわね!!」
「なんなんだよ、いきなり!?」
「そう、あんたはまるで地上に打ち捨てられた報われないエコの怨念が乗り移ったエコカーのようね!」
「…………よくもまあ、そういう悪口がポンポン飛び出すよな、大河……」
「ケッ! なんなのよ! ハイブリッドだと思っていい気になってんじゃないわよ!」
「お、おまえ! もはや意味不明だぞ!?」
「うう、うううるうるさい! 何よその低燃費は! しかも、高性能で、その、乗り心地がいいっていうか……」
「おう!? そ、それは微妙に、というか、かなり褒めてくれてるのか?」
「そ、そそそんなわけないじゃないばかじゃないの?」
顔が火照ってしょうがない。ちっ、言わなきゃ良かった…………

「だ、大体、ご主人様を乗せてるってのに勝手に暴走するバカエコカーなんか最悪なのよ?」
「なんだよ、俺がいつ暴走したよ?」
「いまよ、今、たった今! あんた分からないの? あんたは私の運転通りに動かなきゃいけないのよ!」
「そ、そうなのか? …………最近の男女はそうなのか?」
「そうなの! それがエコカーってもんでしょ、少しは足りない脳みそで考えなさいよね!」
「エコは全然関係ねえよ…………」





「それなのに、あんたときたら私の気持ちとかお願いとか全部ぶっちぎってくれちゃって」
「う……お、おう、それは……」
「ほんっとスクラップにして丸めて捨ててやろうかと思うわ。……というか今から潰すから」
「わ、悪かったって……頼むから潰すのはやめてくれ!」
「……ったく。……悪いと思ったらあやまりなさいよね?」
「おう、まぁ、なんだ。済まなかったな。ちょっと調子に乗り過ぎた……」
「ちょっとだぁ!?!?」

ギラリと殺気を乗せて睨み付ける。
そう、怒ってる部分も、あるんだから。


「聞いて、竜児。私だけ良くしてくれちゃっても意味ないのよ?」
「そ、そうか? でも、俺はおまえに感じて欲しくて、それはそれで俺も嬉しいし……」
「二人で一緒に……二人で同じくらい感じ合って、抱き合っていたいの。傍らにって言ったでしょ?」
「それは……まぁ、分かる」
「私だけ先に突っ走ってっちゃったら、一人になっちゃうでしょ? その逆でも同じことなのよ?」
「…………おう」
「だから、今度は、私が気持ちよくしてあげるからね? さぁ喜びなさいエコカー野郎!」
「お、おう? いいのか? それは嬉しいな。それじゃ頼む」
パァァと花が咲くように竜児の顔が明るくなる。まるで子供みたい。

「あ、今日はだめ。無理。だって苛められすぎて力が入んないんだもん」
「そ………そうか、ま、まぁ俺がしたことだしな…………」

ガックリと肩を落として沈み込む竜児。
あらあら、そんなに残念だったのかしら?
ふふん、あー愉快ね! すぐ調子に乗るからね、こいつは!





ふっと竜児が顔を上げる。なにかしらの決意を感じる。そして嫌な予感も感じる。

「それじゃ、罪ほろぼしの意味も込めて、反対側の胸もきっちりしてあげるからな」
「ほえ???」
「こっちの胸も同じようにたくさん感じさせてやるぞ、って言ってるんだ」
「ぇ……えええええぇ!? なんでそうなるのよ? もう十分舐めたでしょ、あんた!?」
「おう? 別に変な事じゃないだろ、こっち側だけしないなんてかわいそうじゃないか」

なぁ〜右胸ちゃん♪ とか言いながらうっとりした顔で(キモい)右胸を撫でられる。


「いいいいいいやいやいや、いい、いい、いいわ、いいよいいわよいいです!」
「遠慮するなって、今度はおまえを置いていかない。しっかり一緒に気持ちよくなろうな」

だめ、だめだめだめ、絶対だめ! 止めないと止めないと!
あんな……変態偏執認定証が出せそうなさっきの行為をもう一回やる?は?

「むむむむ、無理むりむり。あ、そうだ、私が竜児のことしてあげるね! ね、ね、ね、そうしよう、ね?」
「いや。おまえ、今日はもう無理だって言ったじゃねえか、だから今日は俺の番だろ?」
「そ、そそそそれは、そうだけど、そうじゃなくて! ああああ! あの、ええと……」
「よし決まりな。おう、そうだ大河! 俺の事は心配しなくてもまだまだ平気だからな、フフフ……」

いや、あんたのことなんかこれっっっぽっちも心配してないって!



「何せハイブリッドだからな〜♪」

ご機嫌である。
その禍々しく見えて一点の曇りもない笑顔を目の当たりにする。
なんて単純なのかしら……そう、これね? これが竜児の手綱の握り方なのね?





そして竜児はさっきと逆の方に顔を動かして、右の腋の下に、ちゅ、と唇を押し当ててきた。
その感触で我に返る。やばい、やばいやばい始まっちゃう!
どうする? どうするどうする? いっそこの際、絞め落としてしまおうか…………


そうだ!!


両手はもう自由なんだ、押しのけようと思えば…………って、あれ?力が入らない。
竜児の頭を軽く押すのが精一杯。あれ、あれあれ?全然力が入らないよ?


「このまま可愛がるだけじゃ芸が無いな……よし! 君のために歌おう、聞いてくれ右胸ちゃん!」

なんて、真剣すぎる眼差しで右胸を凝視してる。いや、正確には右乳首を、か。

「ちょっ! ちょちょちょっとあんた、さすがにキモイわよっ!?」

私の言葉なんてお構いなしに竜児の指が乳房の上でタップを踊る。
上半身が左右にリズミカルに揺れ始めたのは、オーケストラの指揮者気取りだろうか?


「ラーラーラーラー♪ ルーラーラーラー♪ トゥールーツーツー♪ トゥートゥトゥー♪」

だ、第九!?!?!? 

私ですら知ってる。よく年末に歌うやつだ。下手なビブラートまで付いてる。
乳房の上で指先がタクトを振るかのよう。動きは荘厳。眼差しは真摯。だが見つめる先は乳首…………
唖然とする私の眼下で、もはや誰も触れられない領域に達する竜児。


「こ、これは……K・T・フィールド!? うかつだったわ……」
「ん? けーてぃー……ふぃーるど? 何だそれ? あぁ、夕方やってた再放送のやつか?」

「キモイ・高須・フィールドよっ!!!!! あ、キモ犬でもいいわ! キモすぎて近寄れないのよっ!!」

「どっちもキモイのは変わらないんだな。……まぁいいか。
 ……そんなことより、お待たせしてすまなかったね、右胸さん。構ってあげなくてごめんよ。
 もう寂しくないからね。さぁ、このサバンナにある高須竜児のテーブルに座ってくれ。
 君のためのごちそうも用意してあるんだ。とびきり腕を振るってあげるからね♪」



「…………あ、圧倒的ね…………」






「そうだ大河!」

と、歌を中断した竜児が顔を上げて覗き込む。
ビックゥ!と身体が揺れる。もはや竜児の言葉は不幸の前兆ですらない。

「今度は下も一緒にしてあげるからな、こっちも放っておいたらかわいそうだしな〜ラーラー♪」

その言葉通りに空いている片腕がつつーっと私の上半身をすべっていく。

――――分かってない。竜児はさっきの話を全く、これっぽっちも分かってない。
そして私はその腕を捕まえられない。力が入らない以上、抵抗できない。何もできない。

やばいやばい。これは止められない!必死に呼び掛ける。

「ね、ねぇ、竜児? まままままずは胸だけにしない? ねぇ、ねぇってば! 竜児ってばぁ!」

ルールー歌いながらくるくると竜児の指が踊る。
指先をおへその周りでターンしながら下腹部へ

「あんっ……くすぐったっ。……ちょ、やめ……」
「タンタンタンタン♪ タータータッタンタン♪ ラーララ ラッラ♪ ルーラーラッ♪」

……掃除してる時に垣間見える、あの顔がそこにあった。
止まらない。竜児は止まらない。この竜児は誰にも止められない。
未来を悟った私はあうあうと顎を動かすだけで声も出せない。

いや、いや。いや……ぁ。とふるふる頭を揺らす。
そんなのだめ、おかしくなっちゃう…………
脳みそつるつるのお馬鹿さんになっちゃう…………


「ターラーラーラー♪ ルーラーラーラー♪ トゥールーツーツー♪ 土〜手ちゃ〜ん♪」

……土手って何だ?



そして竜児の指が密かな盛り上がりを越えて辿り着く――――

「いっ、いやあああぁぁあああああ――――――――――っ!!!!!!」




◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




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