「逢坂さん俺と付き合って下さい。」
「…ありがとう。でもゴメンナサイ、私もう決まった人がいるの」

ハァ〜またか…この学校に転校して来て何人目だろう?
昔はいつもイライラして気に入らないものには全て立ち向かって行った、そのおかげで手乗りタイガーとあだ名まで付けられ、名は体を表すと言わんばりに暴れた。
そう、竜児と気持ちを一つにするまでは。

今は不思議とそんなにイライラする事はない、これが恋の魔法なのか心にはいつも余裕がある。だからクラスメイトと自然に会話が出来た、いつの間にか話せる友人も増え笑顔で過ごせる時間も増えていた。

最近気付いた事がある。
笑顔には人を引きつけるチカラがあるみたい、私が笑えば笑う程話し掛ける人が増える、そして私に好意を持ち告白する人も。

昔はよく告白されたが、あのあだ名が付いてからは殆どなかった、でもここにきて増えるとは思いもしなかった。これが笑顔のチカラなのか?
そして困るのが断り方、昔は一刀両断『イヤ』の一言で済んだが、私が竜児へ想いを伝えた時の事を思うと無下には出来ない。
この時が一番辛い、断るたびに優しい竜児の微笑みを思い出す… 逢いたいよ竜児




「逢坂さん!また告白されたんでしょ?」
「えっ!いや…その…」
教室に戻るとクラスメートに囲まれ、聞かれた。
「さっき中庭で見たって言ってたよ」
自慢みたいでイヤだ、それに相手の事を思うと素直に返事は出来ない。
「告白されたんでしょ?ネェーネェーネェー」
「……うん」
「つきあうの?ネェ?」
「ううん、つきあわない」
「エェ〜 なんで〜?」
周りに至た男子聞いてきた
「逢坂って彼氏とか居るの?」
「あっ!それ私たちも気になるよね〜」
うゎ〜ドンドン人が集まって来たどうしょ〜
「ネェーその辺どうなの?逢坂さん!」
「うっ!うん…ぃる」
「エエエェェ〜〜」
キャ〜!!また人が増えてるし!これでフィアンセとか言ったら大変な事になりそうだし、黙っとこ。
「いつからつきあてるの?」
いつから?……そういえば、私と竜児ってつきあった期間ってあるのかしら?あの夜『嫁に来い』って言われて次の日はやっちゃんの実家でしょ、そして次の日には私はママの所へ…… う〜ん

「てっ…転校して来る1ヶ月前くらいからかな…」
「へ〜じゃあ休み日とかにデートとかするの?」
「ううん、逢ったりはしないメールとかだけ」
「エ〜!逢坂さん転校して来てもう4ヶ月近くなるよね、寂しくないの?」
「へ〜逢ったりしてないんだ、俺たちにもまだチャンスあるんじゃね〜」
アァァ〜!寂しいに決まってんだろ!!段々腹立って来たわね、それとあんたらにチャンスなどない!

「ううん、良いの。今はお互いに目標みたいなのがあるから、それまでは…」
「そうなんだ、遠恋って大変なんだね〜」
「でも素敵かも、それだけお互いを信じてるって事でしょ?憧れちゃうな〜」
「応援するよ、逢坂さん!がんばってね!」
「うん、ありがとう」

何だか嬉しくなってきちゃった。
竜児、私はこっちで頑張れそうだよ、だからまた一緒に過ごせる日が来るのを楽しみにしてるよ。








「ったく、売り切れかよ」

あっちに買いに行くか。でも久しぶりだよな、3年なってからは初めてか?
思えばあの自販機にも色々な思い出が… まぁ主に川嶋か。
さあ、今度は売り切れてませんように。アァ?あの足?

「お前まだここに来てたのか?」
「高須君!?…だってここは亜美ちゃんの隙間だもん」
「そうだったな、でも久しぶりだな」
「そうだね、勉強の方は?」
「まぁついて行くのでやっと、ってとこだな」
「またまた〜謙遜しちゃって〜」
「謙遜なんか…」
「祐作も言ってたよ、『高須みたいなのが本当の努力家なんだ』って」

私は高須竜児に救われた、彼を見ていたら変われる気がした、彼と居たら自分が変わって行ける気がした……でも今は友人として
「だから私も高須竜児に期待してる、その努力の結果を、その先を、私にも見せて欲しい。」

「そうか、ありがとう。確かに俺は結果を出さなきゃいけないんだ……」

「逢坂大河の為に…っか、コノッ!ノロケてくれちゃって!!」
「うぉ!痛ってーな!」

「で?どうなの、ちびトラとは?」
「大河とは、たまにメールするくらいで…」
「もしかして、あれから一度も逢ってないの?」
「何と言うか…アイツもその…決意をして行ったから…簡単に逢いに行って良いものかと…それに何か良い友達とかも出来て頑張ってるみたいだし…」
「ハァ!?」
「イヤッ!だからその…俺は今自分に出来る事を頑張って…」
「アァ〜!もう!相変わらずね!!少し自分に正直になりなさいよ!!」
「そうは言っても!!逢ってしまったら……その後が怖いんだ、また逢いたいって気持ちが強くなって勉強が疎かになるとか……」
「ハァ〜自分に自信を持て高須竜児!!もしそうなったら…」
「そうなったら?」
「亜美ちゃんがミスコンの衣装で気合い入れてア・ゲ・ル」
「おまえな〜」


「で、どうなの?実際、逢いたいの?逢いたくないの?寂しいのは高須君だけじゃないよ」
「そりゃ逢いたいさ!」
「じゃあ、こうしない? ちびトラの学校まで行ってあいつが本当に友達なんかと笑ってたら今まで通り、もう辛そうだったり寂しそうだったら逢う、ドーヨ?」
「まぁ、それなら…」
「じゃあ決まりね!」
「でもよ、実際どうやって見るんだよ?外から見たぐらいじゃわかんねえぞ?」
「そこよね〜 ん〜 …そうだ!学祭よ!学祭!!」
「学祭か〜それなら俺達が入っても大丈夫だが、でも先に大河に見つかったら」
「変装すれば良いじゃん」
「変装っても、俺の服は大概バレてるぞ大河に」
「そっか、服ね〜 とりあえず今携帯で学祭の日時を調べてみるから」
「ああ」
「あった、2週間後だ、これなら高須君の服は亜美ちゃんの知り合いに頼めば間に合う、じゃあこの作戦で決まりね!」
「オゥ!」
「あっそうだ、高須君はタイガーが他の男から言い寄られてないかとか心配ないの?実際あいつ相当可愛いよ」
「まぁ多少は…」
「やっぱ心配なんだ〜、わかった」
「で、どんな服を用意するつもりなんだ?」
「それは〜 当日までの〜 ヒ・ミ・ツ!」




「えーっと、川嶋はまだ来てないみたいだな。」

しかし、最後までどんな服か教えてくれなかったけど大丈夫なんだろうな?
何か大河に男が近づくのがとか言ってたのも気になる。頼むからコテコテの若頭ルックだけは勘弁してくれよ、入場すら危ぶまれるぞ。

「おはよー」
「オゥ!川嶋、おはようって…」
「どうしたのよ、高須君?」
「川嶋だよな?髪切ったのか?」
「ちーがうよ〜 高須君、ウィッグよ、ウィッグ、か・つ・ら」
「すげーな!、本物にしか見えないぞ」
川嶋の髪型は軽く耳が隠れる程度の長さになっていた、しかし服装は…
「…川嶋、上は完璧だがその服装はいつもと同じじゃねぇか?」
「だって〜 亜美ちゃんモデルさんだから〜 このカラダのラインは何着ても隠れないんだもん! ハァッハハ……」
…笑ってやがる。
「それにしても!その格好はアピールしすぎだろ!正直、目のやりばに困るぞ!」
「なぁに〜、高須君?この程度で」
「大体目立ってどうする!俺たちはコッソリ大河を見に行くんだろ!」
「だって高須君と居たらどのみち目立つでしょ!!」
「悪かったな、こんな眼で…」

「……ほら!謝るから、高須君の分の服!、早くトイレででも着替えてきて」
「すまなかった、川嶋」
「もう良いから、電車遅れちゃうよ!」
「すぐ着替えてくるから!」

結果から言おう、これは怖い……
しかし、これはこれで有りじゃないか?俺は正直気に入ってる。
丸襟シングルのライダース色は黒、左腕にはワンポイントで白のライン、インナーにシンプルな白のTシャツ、下は少しルーズなブーツカットのジーンズ、そして靴はスエードのエンジニアブーツ、頭にジャストサイズのハンチング、最後はスクエアタイプのサングラス。
う〜ん、怖い中にもオシャレっぽさがある、新境地だ。

「おまたせ!川嶋、どうだ?大丈夫か?」
「う〜ん、良いじゃない!見た目じゃ高須くんとはわからないし、悪くないよ!」
「そうか!」
俺はちょっと嬉しくなって、角度などを変えてガラスに写る自分の姿を見た。
「でも……」
「なんだ、川嶋」
「サングラスの隙間から見える目は怖いかも…」
「それを言うなよ…」

さあ落ち込んでもしょうがない、約半年振りに大河の顔を見に行くか。








「逢坂さん、5番に3つお願い!」
「は〜い」

今日は学園祭だ、私のクラスは普通の喫茶店だ。衣装は至ってシンプル、男子はシャツの上にベストそしてネクタイ、数人の浮かれた奴は蝶ネクタイを着けてた、下は制服のズボン。
女子は白のシャツに棒タイ、下は制服のスカート、そしてクラス全員でお揃いの前掛けタイプのエプロン。
血迷って一部男子がコスプレ喫茶にしようと言ったが、『お前らにメイド服着せたろうか!』と言ったら大人しくなった。

私も竜児と離れて約半年、少しドジか治ってきたと思う、結構お客さんが来て忙しいけど、お冷係りをこぼすことなくこなしている。
大変な進歩だわ!竜児が見たら誉めてくれるかな?
なんかあのアホロン毛なら『タイガーすげーじゃん』とか言いそうね、アイツ間違い無く蝶ネクタイつけそうだし… でも、アイツ作ったプロレスショーも楽しかったな……

「…此処か」
「高須君、眼が怖いわよ…」
「すまん、つい緊張して」
「ほら、サングラス掛けて、私も掛けるから」
「オゥ!じゃあ行くか」

ハァ〜もう忙しいし、お腹はすいたし…
「逢坂さん、休憩に入って」
「は〜い、ふぅ!」
「大河お疲れ!」
「あ〜、お疲れ」
「お昼食べに行こっか?」
「うん!がっつり食べたいわ!そうね…カツカレー!」
「良し!行こ!」

それにしても凄い人ね、この学校にも北村君並みの敏腕生徒会長でも居るのかしら?

「ねぇ大河、噂聞いた?」
「えっ、なんの?」
「なんかね、凄いカップルが来てるらしいの」
「なにが、凄いの?」
「なんかね、女の人は美人で凄いスタイルが良いらしいのよ」
「へ〜」
「そして何といっても男の人! サングラス掛けてるんだけど、その隙間から見える眼がすっごい怖いんだって!何て言ったっけな〜あんな眼つき… 」
「…三白眼」
「そう!そう!見たもの全て殺すぞ!みたいな、もう男子とかビビリまくったって!……どうしたの大河?」
「ううん、なんでもない。…でもね、見た目だけ決めるのは私好きじゃないの、確かに目は口ほどにものを言うってあるけど、わたし目つきは少し悪いけど凄く優しい人知ってるから…」
「…そっか、ごめんね大河」
「ううん、良いの。こっちこそゴメンネ、なんか雰囲気悪くして…」
「気にするな!さぁ〜メシも食ったし、午後部もハリキッテ行こうか〜!」
「おぉー!」



凄く周りの視線が気になるのは俺だけか?
「なぁ、川嶋」
「なぁ〜に竜児!」
「なんだそれ?」
「え〜?だって今日は謎のカップル役でしょ?」
「あぁ、確かに謎のカップルだ。すげー目だってないか俺たち…」
「やっぱり亜美ちゃんの美貌は隠しきれないから〜 ハァハハ……」
…また笑ってやがる
「高須君もさっき言ったじゃん!目のやり場に困るって!キャッ!」
「オイ!腕を組むな!色々当たってる!!」
「当ててんのよ!」
「ッツ!」
本当にコイツだけは毎回…
「ハァ〜……ホントお前は俺をからかうのが好きだな…」
「そんな…… 私は高須君だけだよ、こんな事するの……」
「川嶋…」
「…ぅう…ぅうっ」
「…川嶋?」
「うぅ…うっ…ハッハッハ〜ハハハ〜ハハッ、ハァハァ」
笑ってやがる…… それも豪快に…
「信じた?ねぇ高須君信じた?もう〜亜美ちゃん女優になれっかも〜」
「またお前は俺の純情を踏みにじりやがって…」
「アァー!もう腕はなせ!!大河にでも見られたら大変だ!」
「なぁに〜 照れてるの?顔、赤いよ!」
「アァッ!!」

俺はその時いつもの癖でハンチングから少し出た前髪を引っ張っていた。



さっきの話しでまた竜児を思い出してしまった、随分と慣れたつもりだったんだけど…
ダメ弱気になっちゃ!
さぁ!午後の部行ってみよーか!

「だけどお昼時の喫茶店ってひまね、せっかく気合い入れたのに」
「ウチのクラスは飲み物だけたからね〜」
「そっか」
「ねぇ大河」
「うん?」
「また気分悪くしたらゴメンね、さっきの優しい人ってさ、もしかして前に話した大河の彼氏?」
「…うん、そうよ。少し目つきは悪いけどね、私はその目が微笑んだ時が一番好きなの」
「そっか… きっと本当に優しい人なんだね」


「ねぇ!ちょっと2人とも!こっち来て!!早く早く!」
「なに?」
「ほら!中庭!」
「なに、なんかあるの?」
「あのカップル、いま校内で噂になってる2人よ!」
「うわ〜本当にすごいスタイルだね!私と同じ人間とは思えないね〜 ねぇ大河?」
「…あぁ、うん」
あれっ?
「キャ〜腕組んだ!あれって絶対胸当ててるよね?うわっ今度は豪快に笑ってる?、何なの?」
ばかちー?
「あんな体じゃ、どんな男も落ちるよね〜」
ばかちー!! 一緒に居るのは?
「ハァッハハ!!男の人!ここからでもわかるぐらい動揺してるよね!なんか顔伏せて照れてるみたいだし!」
「!!!」
……りゅうじ?
「ねぇ、大河!?ちょっと大河!どうしたの?あんた!なんで泣いてんの?」
竜児!!!
「りゅーじー!!」
「ちょっと!あんたどこに行くのよ!?たいがー!!」








まったく、コイツだけにはかなわねぇな、まったく。

「川嶋!」
「なに?高須君」
「そろそろ腕離してくれ、凄い見られてるぞ!」
「ハイハイわかりました」
「それじゃ行・こ……」
「高須君?」
「大河だ」
「なに高須君?」
「いま大河の声がした」
「えっ!ウソ?聞こえないよ?」
「いや!間違いない!間違えるはずがない!!大河だ!」
あの日誓ったんだ、もう二度と離さないって。だから間違えるはずがない!
「えっ!どこ?どこ?あっ!高須君後ろ!!」

「りゅーじー!!!」
「大河!!!」

あれまぁ… さっきまで人目ばっかり気にしてたのに、泣いて抱き合って…… 羨ましいじゃねぇか!コンチクショ!!


でも…… 今ちびトラが来たとゆう事は見られてたのかな〜?亜美ちゃんマズイな〜……
まぁとりあえず、人目の無さそうな所へ連れてくか、このバカップルを

「ちょっと!2人共!ちょっと静かな所でも行きましょう」
「オゥ、大河もう泣くな。」
「うぅっ、ぅっ、だって…だって竜児が居るだもん」
「わかったから、もう泣き止んでくれ」
「竜児も泣いてるじゃない…」
「そうだな、嬉しいと泣いちゃうよな」
「…うん」
「さあ、行こう」
「あっ!でも私クラスに」
「クラスってもしかしてあそこ?」
「あっ!」
「なんかすっげぇあんたに叫んで手降ってるけど」
「たいがー!、あとはー!まかせろー!!」
みんな…
「友達なのか?」
「うん」



う〜ん、あれが眼は怖いげ優しい人か…
「ちょっと!凄かったわね!まさか噂の男が大河の彼氏だなんてね〜 最後に一礼されちゃたわよ!」
「そうだねー、やっぱり人は見かけじゃないんだね〜 やっぱ男は中身よ!」

あの人は大河の手を引いて行く時すごい優しく微笑んでた。『運命の二人』私は2人を見て自然とそう思った

まぁこれで大河に手を出そうとするバカは消えるでしょ。



「じゃあ、私はその辺見てくるから終わったら電話して」
「待って、ばかちー」

うわー 早速かよ。

「竜児、わたし泣いてのど乾いたからジュース買って来て」

大河のやつさっきの見てたんだろな、今回の功労者である川嶋を見殺しにするのもな……

「早く!竜児!」
「イヤ!その… ホラ!俺この学校初めてだし、どこに自販機があるか…」
「ハァ?、今日は学祭だからその辺で売ってるでしょ!なかったら外に行く!10分は帰ってこないで…」
すまん!川嶋!!
「わかった、じゃあ行ってくる、でも暴力はダメだぞ」
「ハァァ?!」

高須君… 行っちゃった
「ばかちー」
「はいぃ!」
「いいえ、川嶋さん」
「はい?」
「今日は本当にありがとう」
「はぁ」
「川嶋さんが焚きつけてくれたんでしょ?竜児の事」
「まぁ…」
「川嶋さんは私の気持ち、みのりんの気持ち、そして竜児の気持ち、全部最初からわかってたんだね」
「そんな…私は」
「ううん、今ならわかる。あなたが私たちを見守ってくれてたの… 私はあなたに対して感謝の言葉しかないわ」
「私は… 自分の気持ちもわからなかったし、そのせいでケンカもした、あんたがケガしたのも私のせいだし」
「私はあなたが居たから今があると思うは、ありがとう川嶋さん」
「…今は亜美で良いわよ、大河……ぅうっ…うっ…あんたどんだけ心配したと思ってんのよ!黙っていなくなって……」
「ごめんなさい、亜美……」
「ううん、もう良いよ… でも、みんな大河に会いたいと思ってる…」
「今はダメなの… でも卒業したら必ずみんなに会いに行く」
「絶対よ!約束だから」「うん!」
「じゃあ高須君と楽しんできなよ、あんまり時間ないでしょ?」
「でも…」
「私の事は良いから!帰る時に電話して」
「うん、ありがとう」

やっと大河と素直になれた…… これで本物の川嶋亜美の完成ね、回り道はしたけど今の気分は悪くないわ。
さぁ、もっと女に磨きをかけて私も前に進むか




今日は川嶋のおかげで大河にも逢えた、これでお互いの決意は再確認できた。さぁ、あとは互いの目標に全力で向かうだけだ!

「今日は本当にありがとうな川嶋」
「ううん、私も大河に会えてよかった。これから大河と逢うの?」
「イヤ、卒業するまで逢わない」
「そう…まあ2人で決めたんだね」
「あぁ」
「うん、がんばりなよ」
「オゥ!」
「でもこれで身も心も綺麗になった亜美ちゃんはすっごい事になるわよ!高須君も後悔しないようにね!!」
「あぁ、川嶋は美人だからな将来が楽しみだ」
「彼女持ちの余裕かよ!!」
「痛ってー!!そんな彼女持ち…と……」
「なに?高須君」
「アァァー!!ぁぁーアァー!!!!」
「どうしたの!!」
「忘れた……」
「なにを!」
「大河にまだ好きって言ってネェェェエー!!!」

「……ハァ?!告白してないの? プロポーズしたのに?」
「あぁ…」

「高須君ってバカ?」
「多分…… バカです」








今日で全てが終わる、いいえ今日が始まり、竜児と亜美に約束した日がやっと来た。

校長あんた話しが長いのよ!、あんた誰よ?市議?何それちゃっちゃと喋りなさいよ!も〜!あと何人?何分かかるの?
終わり?終わったの?
やったー!あとは担任を捕まえて〜! …… 居た!

「先生〜!」
「逢坂さん、何ですか?」
「それ卒業証書ですよね?」
「はい、そうですよ」
「私のどれですか?」
「逢坂さんは、え〜っとこっちの一番上ですね」
「じゃあ、いただきます!あと、ありがとうございました!」
「えっ!それ今から教室で」
「あっ大丈夫です!」
「あとアルバム」
「あ〜!」

みんなとの思い出も大事だし、竜児にも見せたいし…… ん〜
「あっ!ママ!アルバム貰っといて」
「なにを言ってるの …あなた大橋高校に行くんでしょ?送ってあげるから早く貰って来なさい」
「ありがとう、ママ!」
これで間に合いそうね。
「大河」
「なに、ママ?」
「今度家に高須君を連れて来なさい、もうパパに紹介して良い頃よ」
「うん」
「あとこれは女としての助言よ、男は犬と思いなさい!」
「いぬ!?」
「そうよ犬よ!犬は躾と美味しいエサよ!前の旦那は躾で失敗したの、なんとなくわかるでしょ?」
「…うん」
「だから第一に躾!そして美味しいエサ、これは言わなくても意味はわかるわね?大河あなたの努力次第よ。これさえ出来れば犬は尻尾を振って家に帰って来るわ」
「はい」
この人は間違えなく私のママだと思った。
確か…… けつみゃく?そう血脈!…少し怖いわね。竜児と私の子供もこんな事言うようになるのかしら?
やっちゃんの血も少し欲しいところね…

「じゃあ、しっかりね大河」
「ありがとう、ママ」

あぁー やっと来れた!みんなに会える。竜児、わたし帰って来たよ。




まだ終わってないみたいね…… あっ!

「先生!」
「逢坂さん!!」
「先生、お久しぶりです」
「お久しぶりですね逢坂さん、今日は?」
「今日はみんなに会いに来ました!」
「そぅ… みんな逢坂さんの事心配してたから喜んでくるれると思いますよ」
「ありがとうございます……… 先生はまだ恋ヶ窪先生ですか?」
「………」
「………」
「…そうよ、先生はまだ『恋ヶ窪』ゆりです!」
「これからですね!頑張って下さい!」
「……ありがとね逢坂さん、中に入るんでしょ?来客者名簿に記入して下さい、あとは自由にして良いですから」
「はい」
「じゃあ、行きましょう」

うゎ〜 たった1年なのにすっごい懐かしく見えるな〜 わたし帰って来た!帰って来た!帰って来たんだ〜!!

「ここに名前書いて…… ハイこれでOKよ、あっ!最後のホームルームが終わったみたいね、先生はみんなを見送りに行くけど逢坂さんは?」

『私は2ーCの教室が見たいです』

やっと終わったか、本当にいろんな事が…… やっぱり大河との出逢い、あの教室の前で………!!!!

高須君何見上げてんだろ?教室……!?
「あれ〜 たかっちゃんなに走ってんだろ?」
そうか… 今度はちゃんと先に見つけたのね。大河、約束を守りに来てくれたのね……

「どうしたの亜美?」
「ううん!何でもない。それより実乃梨、あとで2−Cの教室に行ってみない?」
「イイネ〜! みんなで行って写真撮ろー!!善は急げだ!」
「あっ!ちょっと待ってあげて… いま大事なところだろうから……」

本当に最後までドタバタな2人ね…… 高須竜児、今度はしっかり決めるのよ!

……羨ましいぞコンチクショー!!!


ーおわりー



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