「交際8年目おめでとう、大河」
「おめでとう、竜児。いつもありがとね」

互いの将来を誓い合ったあの時から8年。二人はもう25歳。立派な大人になっていた。
竜児が社会人になってから、大河は再び竜児の家に来るようになった。高校生のときと違うのはただ一点。大河もこの家に住んでいるということだ。
大河の両親は快く送り出してくれたそうだ。きっと俺の知らないところで色んな努力を大河はしてくれたのだろう。

「なぁ、大河」
「……なに?竜児」
「話があるんだ」

そう言って大河の目を真っ直ぐ見つめる。どうやら少し動揺しているらしい。

「な、なによ急に改まって」
「今日、大河にもう一度伝えなきゃいけない事があるんだ」
「な、なに……?」


「嫁に来いよ。大河」
「!!」
「これ、受け取ってくれ」
そう言って俺は小さな青い箱をちゃぶ台の上に置いた。

「竜児……」





おずおずと大河の細い腕が伸びる。箱を手にとって……
「……あけても、良い?」
「……おう」
大河の手は震えている。緊張しているのだろうか。ゆっくりと、ゆっくりと、リボンを解いて、箱をあける。

「……っ!……綺麗……」
「……受け取って、くれるか?」
「……りゅうじぃ……ヒック」
「お、おい。どうしたんだよ?」
「……ヒック……嬉しくて……ヒック……涙がとまんないの……」
「大河……」

抱きしめたい衝動を堪えて、そっと大河の肩に手を添える。

「……結婚しよう。大河」
「……ヒック……私なんかで良いの?」
「ああ。大河が良い。」
「……後悔しない?」
「ああ。大河が大好きだ。」
「……りゅうじぃぃぃーっっ」

大河が胸に飛び込んで来る。ふわふわの髪からはいつもの大河の匂いがする。

「わたしも……ヒック……りゅうじと結婚したい……ヒック」
「大河……!」

やっと、聞けた。
両腕でしっかりと抱きしめる。大河を絶対に離さぬように。この幸せが零れてしまわぬように。

「絶対に幸せにするからな。大河」
「……うん」


月明かりさえ差し込まぬ質素なアパートの一室。ここに新しい愛が実りの時を迎えた。
永遠の輝きを放つダイヤモンドの指輪が、二人を優しく照らしていた。





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