顔面に衝撃。
 ボールをぶつけられたのだと気付いたのは、地面に倒れてからだった。
「竜児!」
「高っちゃん!」
 大河と春田が駆け寄ってくる。
「わりいな、手が滑っちまった」
 言いながら金髪はニヤニヤとしたままで。
 能登が抗議しているが、審判も同じようにヘラヘラと笑っている。
 くそ、こいつらグルか……
「竜児、しっかりして!」
「らい……丈夫……だ……」
 春田に支えられながら身を起こすが、まだ頭がクラクラする。脳震盪ってやつか?
「……竜児はしばらく休んでて」
 そう言って立ち上がる大河。止める暇もあらばこそ。
「審判!メンバー交代よ!」

 ダムダムダム!
 ドリブルで切り込む大河の進路を金髪が塞ぐ。
 能登にはヒゲが、春田にはノッポがぴったりマーク。
「こりゃまた随分と可愛らしいお嬢ちゃんが出て来たな」
 相変らずのニヤニヤ笑いを貼りつけたままの金髪。
 対する大河は無言の仏頂面。
「どうだ? あんな情けない彼氏なんて放っといてさ、俺達と「デぇストロイっ!」
 大河の咆哮と共に顔面に叩きつけられるボール。吹っ飛ぶ金髪。
 跳ね返ったボールは魔法のように大河の手の中に戻る。
「……てめえ、何しやがる!」
「手が滑ったのよ。遺憾だわー」
 ヒゲの抗議に大河はどこ吹く風で。
「ふざけんな!今のはどう見たって「デストロぉイっ!」
 今度は駆け寄ろうとしたノッポの鳩尾に直撃。
 転がったボールを再び手にする大河。
 今や、その場にいる全員が大河の怒りのオーラを感じていた。
 勘の鋭い者にならば大河の背後に虎の姿が見えたかもしれない。
 ――あとは地獄絵図だった。

 止めに入った審判を一撃で沈め、泣こうが喚こうが逃げようが許しを乞おうが遠慮も呵責も容赦も無く。
「デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デストロイ!
 デぇストロぉイっ!」

 ――コートに倒れ伏す四人が完全に意識を失っているのを確認し、大河は手にしたボールを無造作に放り投げる。
 それは綺麗な放物線を描き、軽い音と共にゴールのリングを通り抜ける。
 3ポイント。





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