「竜児、あんた女だったら誰でもいいわけ?」

平日はほぼ毎日行っている4時間の授業を終え、昼飯を頂こうと席についた時であった。
なぜか不機嫌モードの大河はいつにも増して機嫌が悪い。ご機嫌斜めどころか真上を行っている。
「突然なんだよ?俺が女に媚売ったとでも言いたいのか?」
「違うっ! 違うよ…でも、あんたはみのりんが好きなんでしょ?」
そうだよ。俺は櫛枝が好きだ、1年の頃から好きだ。そして今もそう、変わらない。
それがどうしたと言うのか。付き合ってもいない櫛枝を他所に浮気をしたとでも言うような言い草だな。
「そうだ。つか学校で堂々と言うな、誰かに気づかれたらどうする」
「…でも、好きな女の子がいるのにあれはないと思うよ」
あれ?あれってなんだ?
「だから、あんたさっき古文の授業の時後ろの席の子触ってたでしょ」
思わず口にしていた烏龍茶を吹き出しかける。
「あれは後ろの席の子が寝てたから。それでプリントが回らかったら他の人に迷惑だろう」
そう、竜児の席の後ろの子は、面白くもない古文の授業を放棄してドリームワールドで出かけていたのだ。
しかしそこは気遣いの高須、みすみす内申点が下がりつつある人を目の当たりにしてほっておくわけにはいかない。
それに、後ろにプリントを回すという寝てる人がいるだけで後ろの席の人にまで迷惑が掛かる、これは見過ごせない。
「あれは他人に迷惑がかかるから、それに本人のためにでもある。だから俺はわざわざ起こしてやった、それだけだ」
「でもあんた体に触れてたじゃない。鼻の下伸ばして」
「体って言っても肩、な。それに鼻の下など伸ばしてはいない。それに」
「それに、何よ」
「なんでお前がそんな事気にするんだ?」
すると、うっと空気がのどから漏れる仕草を見せる。若干顔が赤い、風邪か?
「…別に。あんたが気にする事じゃないわ」
「お前が勝手に言ってきたんだろうが…」
「だから!私が言いたいのはみのりんの事狙ってるんなら他の子に触るな、以上!」
そう言うと、こちらへ来た時と同じようにズカズカと自分の席へ戻っていった。
「…なんだってんだ?」

気遣いの高須と崇められてはいるが、この筋に関しては小学生よりも鈍い。
大河の気持ちに気づくまで、あと数ヶ月。大河と本当の意味で結ばれるまで、あと数ヶ月。


Fin





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