「逢坂さんと高須さん、ですね」
俺と大河は一緒に免許を取りに来た。
手続きを終え、今日からでも講義と実習が可能ということで、早速講義を受けた。
大河は終始つまらなさそうにペラペラとテキストを流し読みし、次いで簡単なハンドル操作の練習をさせてもらった。
講義が終わると初めての実習だ。
それは構内にあるコースをAT車でアクセルを踏まずにドライブのみで運転してみる、というものだった。
もちろん隣には教官が乗っていて、助手席にもブレーキがついている為、それほど危険は無い。
だが、車庫にある車に早速乗り込む、という瞬間になって問題が起きた。
「あ、そうだ。乗る前にまずはSS宣言をして下さい」
「SS宣言?」
SS宣言って何だ?と俺が首を傾げていると、隣にいる大河が震えだし、次いで怒りだした。
「SS宣言……ですって?」
「え、ええ」
あまりの剣幕に教官がたじろぐ。
「私に、この私に自らがSSサイズである宣言をしろって言うの!?」
「え?あ、いやちが……」
どうやら大河の勘違いのようだが、大河は収まらないらしい。
「竜児、この教官ぶっ飛ばしていい?」
「お、落ち着け大河」
「だって!!このクサレ教官私にSS宣言しろって言うのよ!?自ら体の小ささを認めて宣言しろって言ってんのよ!?私の胸が小さいって宣言しろって言ってんのよ!?」
いや、別に誰もそこまで言っちゃいねぇよ。
「ク、クサレ……」
ほら見ろ、初めてうけるかような暴言に教官が呆然としちまったじゃねぇか。
「大河、きっとアレだよアレ」
指を指す。車庫の壁には大きなポスターが貼ってあった。
『SS宣言、シートベルトの着用運転、スピードダウン運転の励行、シルバー高齢者に優しい運転を心がけます。SSS運動』
「きっと車に乗る前にアレを宣言するんだよ」
「え〜?だって車に乗るのにいちいちあんな事を言ってる人いないよ?」
「ここは学校なんだから仕方ないだろ?免許欲しいんだったらちゃんとしろ、な?」
「う〜、わかったわよ。免許は絶対欲しいし」
「すいませんね、で、あれを宣言すれば良いんですよね、先生?」
暴言を吐かれ、呆然としたまま置いてけぼりをくらっていた教官にようやく話を振る。
「あ、はい、そうです」
これでようやく車に乗れる。
しかし、車に乗ってすぐには発進を許され無い。
「まずはドアロックのチェックです」
大河が内心「めんどくさ……」……言葉にだすなよ……。
ドアロックも終わり、ようやく発進だ。
発進してからは、大河はウキウキだった。
アクセルを踏まないとはいえ、自分が車を動かしているのだ。
俺もやってみたが、最初はなかなかに感動した。
曲がる感覚って奴が初めてで難しかったが、それでも、
「最初はこんなものだよ、がんばって」
と励まされた。
それから、俺たちは毎日のように通いつめ、そしてとうとう公安局での免許試験に合格した。
「これでようやく資格を手に入れたわ」
「資格?免許も資格っちゃ資格だが……」
「これで誰にも無免許なんて言わせないわ!!」
「あ、ああ。確かにこれでお前も俺も免許持ちだな。けど何をそんなに興奮してるんだ?」
「私、早速この免許を使って竜児に乗るわ」
「は……?」
「………………」
「………………」

ギシギシアンアン





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