6月20日 生後1週目 はじめてのおふろ

「やっぱりぃ〜、お風呂に入れてあげるのはお父さんの仕事だと思うんだぁ〜☆」

大河と赤ちゃんが退院して、いよいよ家族4人での生活が始まった。
泰子はおばあちゃんになった事が嬉しくて仕方ないらしく、ベビーバスやら服やら色々と用意してくれる。
大河のお母さんもやはり自分の孫というのは気になるらしく、ここのところ週末には顔を出してくれている。
やっぱり、皆に祝福される家庭というのはいいな、とつくづく思う。

「そうよ、竜児。頑張ってね!」
「頑張ってって……お前は手伝ってくれねぇのかよ?」
「横で見ててあげるわ。竜児が遅くなるときは私がするんだもん」
「なんかぁ〜竜ちゃんが赤ちゃんだった頃を思い出すなぁ〜。あの頃の竜ちゃんは水が苦手でぇ〜」
「その話はこないだ聞いたよ泰子……さて、キレイにキレイにしましょうね〜」ニタァ
「ダーー」
「……赤ちゃんまで高須棒でこすらないでね……竜児」


「まずはコイツを膨らませるのか……」
「ベビーバスってちっちゃい子供用プールみたいよね」
「これなら場所もとらないと思ってぇ〜、ビニールのやつにしたんだぁ〜。やっちゃんエライ☆」

泰子はやっぱり死ぬまでこんな感じなんだろうか……。まぁ、今更おばあちゃんらしく変身などしたらそっちの方が怖いのだが。

「……これでよし、っと。ここにぬるま湯を入れて……」
「……なんか緊張してきた」
「大河ちゃん大丈夫よぉ〜。竜ちゃんはスーパーお父さんで、大河ちゃんはスーパーお母さんなんだから!」
「泰子……」
「やっちゃん……」

「よし。準備万端だ。大河、赤ちゃんをこっちに連れて来てくれ」
「はーい……よーしよしお風呂ですよ〜。お父さんがキレイキレイしてくれますからね〜」
「ダーー?」
「なんかやっちゃん緊張してきちゃった〜☆」
「……さっき言ってたことと違うじゃねえか……」




チャプン

「首だけはしっかりと支えてやらないと……」
「キャッ……ウッ……ウエェェェェェ」
「あっちょっ……大丈夫ですよ〜すぐ終わりますからね〜」
「ウエエエエエエエエーーー! ウエエエエエエエエーー」バシャッバシャッ
「わっちょっ……弱ったな」
「やっぱ竜児一人じゃまだまだね。……はーい大丈夫ですよー。ぷかぷか浮かんで気持ちいいですねー」ニコッ
「ピタッ……ダーーー」パシャッパシャッ
「どんなもんよ!」
「ハハ……参ったな。よし、今のうちにやっちまうか! えっとガーゼで……」

その後、顔を拭くときにまた泣き出して大河の世話になり、次は体を拭くときに泣き出して大河の世話になり……となかなか苦労したけれど、何とか無事終了した。

しかし……大河はお母さんになったんだな、とつくづく思う。
やっぱり自分で産んだ子だからなのか、あいつが大丈夫だ、というと赤ちゃんもピタッと泣き止んでしまう。
……俺も負けねえように頑張らないと、な。

スヤスヤと眠る我が子を見ながら、そう思う竜児であった。
一人前のパパへの道は、まだまだ遠い――


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