「私は仕事ばっかりだけど、アンタは夏の予定は何かあるの?」

「うぅん…… 竜児は受験があるから」

「…そう。ならしかたないか」

あらま、珍しく健気なこと言って……
恋は女を変えるのね。

***
「またそこに挟まってのか」

「まぁね、落ち着くから」

「そうか、みんな受験でピリピリしてるしな」

「そうね。高須君もたまには息抜きしたほうが良いよ」

川嶋の言うように自分でも気負い過ぎだと思うしな……

『〜♪輝く予定が今年はある♪〜 何より優先するよ〜♪』

「何だその歌? 前に聴いた事ある様な」

「随分前に流行った曲よ。まぁ曲自体は冬の恋人がテーマなんだけど」
「でも私はこのフレーズを聴くと夏をイメージするの」

「へぇ、そうなのか」

「そう。恋人達が初めての夏を迎えて、輝く太陽下でどんな思い出を作ろうかって互いに期待する気持ち」

「初めての思い出か…」

「そう、初めては一度限りだからね」

***
「……本当に良いの」

「あぁ、今年の夏は二度とないからな」

「嬉しい!素敵な夏にしようね」

「オイ!?危ないぞ」

あ〜ぁ、廊下で抱き合っちゃて。
ムカつくんですけど。

でもこれで亜美ちゃんも『お節介オバサン』の仲間入りかぁ… 虚しい。





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