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竜児のもとから離れ、電車で数時間揺られ、私はママの新しい家の前に
立つころには、とっくに日が暮れていた。

竜児は、私に全部くれると誓ってくれた。
だからまず、いい子でいよう。そう心に決めて戻ってきたのだ。

どうやって、ドアをあければいい?
家出をした子供が家に帰る方法など、学校ではおしえてくれない。
竜児の場合は特別だ。子供も親も両方ともに家出してしまったのだから。

えぇい、ままよ。
思い切って、ドアをあけ、「ただいまぁ」と言うと、家の中から
バタバタと足音が聞こえ、ママと新しいパパが、私を向かえてくれて、
そして、いきなりほっぺたをぶたれた。


ママ「大河!! あなた、私たちがどれだけ心配したと思っているの!!
   高校生が二人で生きていけるわけがないでしょ!!
   パパも、ママもあなたをどれだけ心配して」
ママは、顔を耳まで真っ赤にして・・・・・ 
私を心配してくれているのだ
大河「ごめんさない。もう、家出なんかしないよ。
  本当にごめんなさい。」
いい子でいよう。だから、素直に誤ろう。私が悪いのだから。
パパ「まぁまぁ。その話は、後でゆっくりとはなすことにして、
  まず手を洗ってきて、ご飯にしたらどうやろ?
  今日は、すき焼きやでぇ。大河ちゃんが戻ってくるて聞いてたから、
  最上級かってきてるぇ。」
何で、新しいパパは関西人なの?、と思いながら、素直に頷く。




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ママの家は、竜児ほどではないにしろ、綺麗に掃除されていて、
さっぱりとしていた。洗面所にもトイレにも変な飾り付けはなく、
手を拭くためのタオルだけがかけられていた。
手をあらい、うがいをして、鏡で顔を見る。
大丈夫、もう泣かないよ。いい子でいるもん。
すき焼きの鍋にひがはいったのだろう、いい匂いが居間から流れてくる。

ママ「大河。はやくきなさあい。パパもまってるわよ」
パパ「ママさん、そんなにあせらせんかてもええでぇ」
大河「はぁーい。いまいく」


すでに、すき焼きはできており、お肉がおいしそうに
ぐつぐつと声を出していた。

ママ「大河、感謝しなさいよね。パパが奮発して、お肉買ってくれたのよぉ」
パパ「そやでぇ。1万円のお小遣いの中から、5000円もはたいて
  かったんやぁ。まずいはずがない。
  もうちょっとおこづかいがあればなぁぁぁぁぁぁ」
ママ「あらぁ?、この間、クレジットカードのお支払いの通知が
  きていたのは気のせいかしらぁ?
  やっぱり、クレジットカードも私があづかったほうがよいのかしらねぇ?」
パパ「そ、それだけはぁ、おだいかんさまぁぁぁぁあ」

パパも、ママも楽しそう。私もたぶんうまくやっていける。
やっていけるよね竜児。家族だもん。




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パパ「いっただっきまーす(はーと)」
大河「いただきまーす。」
ママ「はい、召し上がれ。」

パパのお箸が動いたかとおもうと、私のおさらに、肉がどーん。ネギがどーんと
のせられ、聞き覚えのあるフレーズが・・・・
パパ「もるぜぇ。もるぜぇ、むっちゃもるぜぇ」
ママ「あなた、普通にできないの?」
パパ「まぁまぁそういわずに。大河ちゃん。遠慮せんとたべやぁ」
大河「あ、ありがとうパパ」

おかしい、この家族(いや、パパだけかも)はおかしい。
テンションが変だ。おかしすぎる。

そういや、朝から何も食べてなかった。おなかがペコペコだ。
パパの入れてくれたお肉を口に運ぶ。


少し、甘いかもしれない。

パパ「どう?、おいしい?、ちょっとあまめやけど。どうえ?」


おいしいよ。パパ。
竜児のとは、ちょっと味が違うけど、
竜児のすき焼きより、だいぶ甘いけど。
竜児の買ってくるお肉より、すごくやわらかいけど。
竜児の家のお皿と柄がちがうけど、
竜児みたいに、お皿にお肉をいれてくれるけど、


けど、竜児がいない・・・・・

「おいしいよ。パパ」といったときには、すでにほうを涙がつたっていて、
顔では笑っているつもりなのに、涙がとめられなかった。

涙がとまらないのだ。

ママもパパも私のことを心配してくれる。
お肉はおいしいし、変だけど楽しそうな家族だ。
私は、いい子にしていたい。ママやパパにはもう迷惑や心配はかけたくない。

ただ。竜児がいない、それだけなのに・・・


思わず、顔を下にむけようとした瞬間、私の頭はママの腕と大きなお腹で、
包み込まれていた。





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ママ「大河、ごめんなさい。
  竜児くんとは2度と合わせないとは、今はおもっていないわ。
  ただ、あなたが大人になるまでは、私たちに面倒をみさせてちょうだい。
  私たちの勝手だとはわかっている。
  だけど、やっと一緒に暮らせるようになった自分の娘ですもの。
  生まれてくる弟君も、お姉ちゃん楽しみにしてるよ」

わかっているよママ。ママもパパも私を愛してくれる。
そう信じて帰ってきたんだから。
しばらく、じっと、泣いていた。


大河「りゅ、竜児がね。あの夜、嫁にこいっていってくれたの。」
ママ「うん。」
大河「でも、みんな幸せじゃなきゃだめだって、
   私も、ママとパパと幸せじゃないとだめだっていってくれたの。」
ママ「うん。」
大河「竜児は、家にかえれっていってくれて。
   悩んだんだけど、かえってきたの・」


パパ「だったら、竜児君は、婿にする価値のある男やねぇ。
  ぜひ、うちにまねかばなるまいのぉ。。。
  ってことで、お肉焦げちゃうでぇ・・・
  はよ、はよ食べよ」

やっと泣き止み、ネギを口に運ぶ。おいしい。
受け止めてくれる家族と一緒に食事をできることが何て幸せなことか。




ママ「で、竜児くんは ものにしたのでしょうね?!」
大河「も、もちろんよ、ばっちり唇は、うばったわ!!」
ママ「そうじゃないでしょ、種をもらったかってことよ。
  結婚まで決まっているなら当然でしょ?」

パパ・大河「た、たねぇ!!」


その夜、ママが今まで何人の男をくどいてきたが、
パパが25歳まで女という生物をしらなかったこと、
大河の新しい家族の秘密にしたい秘密を知ってしまうのであった・・・






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おまけ、

竜児「おう。大変だったんだなぁ。
  でも、おまえが、むこうでうまくやっていたことを聞いてほっとしたよ。」
大河「それだけ?」
竜児「はぁ??」
大河「こんだけ、前フリしてやっているのに、やっぱりあんたは鈍犬ね。」
竜児「はぁ?!どういうことだよ。」
大河「このSSで重要なのは、一番最後のところだけよ!!」
竜児「最後?????」
大河「つまり、こういうことよ、覚悟しなさい」
竜児「って、あっれーーーーーー」


おしまい。





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