日曜日、珍しく大河の両親が揃って休みらしく日常の忙しさから解放され、二人の日常を過ごす。
数ヶ月前までは当たり前だった日常の風景、大河が側に居る風景が今は懐かしい。
今日はあの頃の二人の日常に戻れる。
「本当に良いのか、折角の1日を家なんかで過ごして」
「うん。私この家好きだから、それに昔に戻ったみたいで落ち着くし」
「そうだな。特別な事する必要なんてないよな」
俺はのんびりテレビを見て、大河は側に座って本を読む。
座る距離は近づいたが、それ以外はあの頃と変わらない日曜日。
「珍しいな、雑誌以外の本を読むなんて」
「ケガした時にホテルで暇だったから途中まで読んでたの、少し共感できる言葉があったから…」
「へぇ、アイリス・マードック。知らないなぁ」
「アッ!見ちゃダメ」
本を奪いパラパラとページを捲る、何度も読んで癖がついたのかピタリと止まった。
そのページを眺めてるとある一文が眼に止る。
『愛すること教えてくれたあなた。今度は忘れることを教えて下さい。』
雪山の風景がフラッシュバックする。
「……だから見ちゃダメって言ったのに」
「ごめん」
「気にしないで、今が在るから」
「竜児はいま私の側に居る、どんな心境ですか?」
「…とても落ち着くし、凄く幸せだ」
「私も一緒!だから過去なんてどうでもいい、一緒に未来を見ましょ!」
「そうだな。さしあたっての未来は昼飯か!」
「賛成!私も手伝う」
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