「ねぇ、竜児。最近よく一人で出かけるけど、どうかしたの?」
「別に…。買い物とかいろいろあるからな」
「買い物なら一緒に行くのに、なんで誘ってくれないの?」
「………」
「あんた、最近私に冷たくない?話しかけても気づかないフリする時もあるし…」
「じゃあ正直に言おう。大河…俺、実は他に好きなやつができたんだよ」
「へ?」
「綺麗で思いやりがあって料理もできて、何に関しても万能なんだ。そいつを好きになっちまった…」
「うそでしょ…?」
「正直、料理も掃除もろくにできないお前とこの先一緒に生きていける気がしないんだ、別れよう、大河」
「そんな…ね、嘘でしょ?全然面白くないよ…。今なら忘れてあげるから、今の言葉取り消して。お願い」
「…………」
「竜児ぃ…なんとか言いなさいよ、竜児ぃ!!」

***

がばっ!

「竜児ぃ!!…はぁはぁ…あれ?夢…?」
「ん…どうかしたのか、何か怖い夢でも見たか?」
「あ…う…竜児ぃ…ひぐ…」
「おうっ!? 大丈夫か…?」
「りゅうじぃ…お願い、どこにでも行かないで…捨てないでよぉ…」
「捨てるぅ?何言ってんだ…。少し落ち着け、抱きしめててやるから」
「ふにゅ…」

「落ち着いたか?」
「うん…ごめん」
「いいよ。それより何があったんだ?辛くなかったら話してくれよ」
「あのね、竜児が他の子を好きになって、私から離れようとするの」
「ほう」
「一緒に帰ってもくれないし、買い物も連れてってくれないの。家に帰っても私ほったらかしにして、すぐにどっか出かけるの」
「……」
「それで、問い詰めたら別れよう、って…。そんなのヤだよぉ…竜児ぃ…」
「安心しろよ、俺は絶対別れようなんて言わねぇからさ」
「じゃあ一つ聞いてもいい…?竜児、浮気とかしてないよね?」
「んー…。その前にいくつか質問していいか?」
「何で答えてくれないの…?」
「落ち着け、睨むな睨むな。絶対答えるから、その前に質問だ。大河は朝起きて一番に見る人間は誰だ?」
「竜児」
「そうだな、一緒のベットで寝てるもんな。で、朝飯作って弁当作って手ぇ繋いで一緒に学校行くのは誰だ?」
「竜児」
「大正解。で、同じクラスで勉強して昼飯食って一緒に帰るのは誰だ?」
「竜児」
「ご名答。では一緒に買い物して同じ部屋で喋って夕飯食べるのはどこのどいつだ?」
「竜児」
「ピンポン。じゃあ一緒に風呂入って後は寝るだけだ。この間に浮気ができると思うか?」
「竜児。…じゃなかった、できないよね」
「なぜそこが疑問系なのかは知らんが、普通できねぇな。離れるのはトイレの時くらいだ。トイレで逢引ができるか?」
「できないね」
「臭ぇもんな。普通したくねぇよ。休日はデートとかして、丸一日一緒だ。つまり浮気をする暇がない。その気もないんだよ、大河」
「…りゅうじぃぃぃっ!!」
「よしよし、いい子だな。このまま抱きしめててやるから、もう寝ろ。明日…まぁ厳密に言うと今日だが、遊園地行くんだろ?デートなのに眠いのは御免だぞ」
「うん…うん…ありがと、竜児。ずっと一緒に居てね?」
「離れろって言われても離れる気はねぇよ。じゃあおやすみ、大河」
「うん…お休み、竜児…本当にありがとね、竜児ぃ…」





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