「大河、悪いが明日から一緒には帰れねえ。こうやってメシを食うのも無しだ」
「そう……あんたは私よりお金を取るのね」
「そうじゃねえ。そうじゃねえが、それも要因の一つであることは認める」
「まあ、仕方ないわよね。でもその前に一つだけ聞かせて……
 竜児のクラスの展示は何をするの?」
「おう、うちは喫茶店だ。それもコスプレで客寄せするようなイロモノじゃなくて、味で勝負する本格的なやつな」
「でも、それだと地味じゃない?」
「その辺にぬかりはねえよ。広報班が学校中で試食用のマカロンを配る計画だ。
 今年の文化祭は二日間開催だから、口コミの効果は去年以上に期待できるしな」
「料理とかお菓子とか、作るのが竜児だけだと大変じゃない?」
「焼き菓子やケーキのスポンジはある程度作り置きができるし、軽食やデコレーションとかは明日から調理班に特訓してもらう予定だ。
 調理室の使用許可も取れたから、設備もスペースも問題なしだぜ」
「調理室って……よくそこまでできたわね?」
「サンプルにケーキ焼いて先生の所に持っていって、『こういったものを出すつもりです』って言ったら意外にあっさりとOKでな。
 ところで大河のクラスはどうなんだ?」
「……秘密」
「何!?」
「ふ、甘いわね竜児。情報を制する者が世界を制す。戦いは既に始まっているのよ!
 恋人だからと油断してあんたがだだ漏れにした情報……うちのクラスの優勝のために有効に活用させてもらうわ」
「糞、負けねえ、負けねえぞ。今年もかのう屋の割引券は俺の物だ!」
「……それを最大の目的にしてるのはあんただけだと思うわ、多分」

「ところでだな、大河。そういうわけだから弁当のメニューのリクエストがあったら昼休みにでも言ってくれ」
「わかったわ。とりあえず明日は……そうね、なんかデザートもお願い」
「おう、ちょうどいいから喫茶店用の試作品を入れとくな。よかったら感想くれよ」





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