空は快晴。
雲一つ無く澄み渡る空は今日のこの日にはうってつけだ。
最近雨ばかりが降っていたので少し不安だったが、天気予報の太鼓判通り、今日は久しぶりの快晴となった。
「随分晴れたなぁ」
そう呟いて竜児は辺りを見回す。
草木が生い茂る気持ちの良い公園。
ここは大橋からそう遠くない自然公園だった。
ニヤリと、悪巧みでもしそうな笑みを竜児は浮かべる。
天気が良いというのはそれだけで気分を良くしてくれるものだ。
洗濯物の乾きも早いし。
その例に漏れず、竜児も今朝からご機嫌だった。
最も、そんな竜児の機微を理解出来る人間は少ない。
「ねぇ竜児」
「おぅ何だ大河?」
「随分機嫌が良いね?」
しかし、逢坂大河は数少ない竜児の機微を理解できる人間だった。
「おぅ、そりゃなんてったって晴れだからな。今日は晴れてないと意味が無いだろ」
「まぁ別にアンタの天気の好みなんてどうでもいいんだけど。狙いは別でしょ?」
「おおぅ、なら聞くなよ」
竜児は少し傷つきつつも、今日使うものを手に取った。
画板と鉛筆。
「あ〜あ、絵を描くなんてめんどくさい。なぁ〜にが大橋高校絵画コンクールよ」
そう、今日は学校総出で絵を描きに来たのだ。
生徒会が急遽企画した絵画コンクール。
優秀賞にはスーパー狩野屋の割引券がもらえることとなっている。
その為、竜児は今日この日を楽しみにし、あわよくば割引券をゲットするためにいい絵を描きたいと思っていた。
だからこそ快晴を心から喜び、かつやる気が漲っているのだ。
「まぁアンタがやる気だしてるのは良いけど、私は正直パスしたい気分だわ。メンドイし」
「まぁそう言うなよ大河。生徒会も必死なんだからさ」
「?どういうこと?」
竜児は、この間友人の北村祐作、現生徒会長から聞いた話をしだす。
「北村から聞いたんだけどよ、大橋高校伝統の行事がどんどん減っていってるらしい。実はウチの高校、昔は合唱コンクールもあったらしいんだが、今は知っての通り無い」
「そういやウチの高校、体育際とかも無かったわね」
「ああ、文化祭が一日なのもそうだ。昔は二日開催だったらしい」
「へぇ」
「まぁそれでだ。減らした理由はいろいろあるにしろ、このままではたいした学校行事が残らないと北村は危惧して、今回の企画を前面に押し出したそうだ」
「なるほど。行事を残すための足がかりとして、というわけね」
「ああ。今回はコンクールという名文になってるが、これはもともとウチの高校でやってた写生会の復活の一歩だそうだ」
「……なん、ですって?」
それを聞いた途端、大河は驚きワナワナと震えだした。
「?……だから写生会を復活させるんだと」
「なんてこと……そんな会があったの……」
「大河……?」
「竜児、今すぐズボンを脱ぎなさい。始めるわよ『射精会』」
「は?……いやまてお前。絶対勘違いしてるだろ!?」
「問答無用!!これも狩野屋割引券の為よ!!」

ギシギシアンアン




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