「ねえ父さん、オレンジタルトの作り方教えてくれない?」
「おう、かまわねえけど……急にどうしたんだよ、竜河」
「ん、いや、ちょっとね」
「へっへ〜……俺知ってるもんね」
「なになに?詳しく教えなさいよ泰児」
「お兄ちゃん!母さんも!」
「いやさ、昨日・一昨日の合宿に父さんが皆で食べろって作ってくれたの持ってったじゃん?
 それを食べた後輩がさ、『竜河さんってケーキ作るのも上手いんだね!』って」
「ほっほ〜う。で、竜河はその勘違いを訂正できなかったわけね」
「訂正するどころか、俺が言おうとしたら机の下で足踏まれた。指の骨折れるかと思ったよ」
「……まあ、それでちゃんと自分で作れるようになろうってんだから、いいんじゃねえか?」
「ちぇ、父さんは竜河に甘いよな〜」
「ところで泰児、ひょっとしてその後輩って」
「お、鋭いね母さん。ずばりオ・ト・コ。しかも竜河のクラスメイト」
「ふふん、まあ私はどこかの鈍感犬とは違うからね」
「……ひょっとしてそれは俺の事を言ってるのか?」
「あんた以外の誰の事だっていうのよ」
「……まあいいけどよ。で、泰児、そいつはどこの誰なんだ?」
「父さんまで!?」
「ひょっとしたら父さん達も見たことぐらいあるんじゃないかな?
 狩野コタロウ、かのう屋の一人息子だよ」
「げ、あの黒猫男の息子?」
「『げ』ってのはなによ母さん」
「泰児、そのコタロウってのはどういう字を書くんだ?」
「ああ、虎に太郎で『虎太郎』だよ」
「……」「……」
「なに、どうしたのさ父さんも母さんも妙な顔して」
「……なあ大河、これってただの偶然だと思うか?」
「……妙な因縁めいたものを感じるのは確かね」
「……運命……とは言いたくねえな、さすがに」
「まあ、なんにせよ最終的に選ぶのは本人次第よね。竜児や私がそうだったみたいに」
「ちょっと、父さん、母さん、何を二人だけでわかった会話してるのよ?」
「竜河、今からあんたにいい言葉を教えてあげるわ。昔から虎と竜は――」


――とらドラ・ネクストジェネレーション!――





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