『傷ついちゃうの 傷つけちゃうの 純情プレパラート
 頭の中は いつも一人の 純情プレパレード』

 曲が終わる。
 一瞬の空白の後、ホール全体が大歓声に包まれる。
 舞台の上で観客に手を振るのは三人の美少女――櫛枝実乃梨、逢坂大河、川嶋亜美。
「みんなーっ!ありがとだっぜーっ!」
 うおぉぉぉ!『みのりーん!』
「ほんとに、ありがとねー!」
 うおぉぉぉ!『タイガーっ!』
「みんなみんな、あいしてるーっ!」
 うおぉぉぉ!『あーみーん!』

 やがて会場が落ち着きを取り戻してから、実乃梨が口を開く。
「えー、実は今日、みんなに大切な報告があるんだ」
 その後に亜美が続く。
「多分、ショックをうける人もいると思う……だけど、だからこそ、自分達の口からきちんと発表しようと思ったの」
 そして、大河が一歩前に出る。
「私達……結婚しました!」
 たちまち会場に飛び交う悲鳴と怒号。涙を流す男達もいる。
 その中で三人は声をそろえ、ステージ奥から歩み出てくる人影へを手を差し伸べる。
「「「紹介します。私達の旦那様……高須竜児君!」」」


「……という、夢を見たのよ」
「……」
「ちょっと竜児!人に話させておいて完全無視とかしてるんじゃないわよ!」
「だってお前、朝から妙に機嫌悪いから何事かと思ったらそんな下らない夢が原因とか……呆れる以外にできる事ねえだろ」
「下らないとかよく言えたものね!三つ股だけでも許し難いのに、重婚は犯罪よ犯罪!わかってるの!?
 まったくあんたのエロさときたら、もうエロ犬ってレベルじゃないわね。ドエロ犬だわ、ドエロ犬」
「いや、だからそれはお前の夢の中の話だろうが。俺はなんもしちゃいねえぞ」
「きっとあんたがエロエロな犬電波を発振して私の脳に干渉したせいなのよ。そうでなきゃ私があんな夢を見る理由がないもの」
「俺はどんな超能力者だよ……夢ってのは大概ワケわかんねえものだろうが」
「ともかく謝罪と賠償を要求するわ。具体的に言うと今日のおかずは肉。あと食後にプリンも」
「……へいへい。肉の種類はスーパーで特売のやつでいいな?」
「まあいいわ、それで許してあげる」
「……まあ、なんだ。電波飛ばせるかどうかはともかく、今度は北村の夢が見られるように念じといてやるよ」
「……ふんっ!」
「いってぇ!何で蹴るんだよ!」
「うるさい黙れバカ犬」
「おい大河!俺何も悪い事言ってねえだろ!? 何で急に怒り出すんだよ!」
「黙れって言ってるでしょうがこのグズ!駄犬!」
「何なんだよお前!もうワケわかんねえよ!」





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