私はクラスで目立つこともなく特徴も無い、言うなれば名も無き女子A。

こんな私でも人並みに男の子を好きになったりした。
見た目は近寄り難い人だけど、本当は凄く優しい人。私だけが知ってる特権だと思ってた。

想い続けていれば、きっといつか彼は私に気づいてくれる。私の立ち位置は彼の隣に有ると思ってたのに…… 儚い夢だったな

「どうしたの?」
「えっ?あぁ、最近なんだか逢坂さんが綺麗になったなぁと思って」

「確かに前より表情も柔らかくなって話し易いしね。でも何で逢坂さんなの?」
「私って地味で目立たないじゃない?だから逢坂さんみたいにハッキリ物を言ったり、思ったことを即行動で表す人に憧れるの」
「へぇ〜そうなんだ」

結局はその『憧れの人』に『想い人』を持ってかれちゃったんだけどね。でも何だか悔しくはない、逆に2人を見ていたら清々しい気分になる。
ベクトルは違うけど、2人は私にとっての憧れの人に代わりはないんだなぁ…



「あのッ!…ちょっと良いか?」
「高須君?!それに逢坂さん!…どうしたの?」

「あっ、あのさ…」
「もぅ〜!じれったいわね!私が話すから退きなさい!」

「あのね、竜児がクッキー焼いて来たの。スッゴくおいしいから食べない?」
「……ありがとう、でも何で私に?」

「…調理実習の時に言ってくれただろ?俺の作ったクッキーを見て『美味しそう!』って」
「だからね、竜児が『実習室ごときでは真の実力が見せられない』って家で作ってきたの」

「そうなんだ… じゃあ、いただきます」

口に入れると甘い香りが広がる、ホッとする味。

「美味しいでしょ?」
「うん!流石は高須君、美味しいよ」
「でしょ!竜児は料理だけは上手いのよねぇ」

まるで自分のことみたいに喜んじゃって… 可愛いな逢坂さん、やっぱり私じゃかなわない。
こんな2人が恋人じゃないって本当なの?

「……前に逢坂さんが言ってたけど、やっぱり2人は恋人同士じゃないの?」

「……プッ!!ナイ!ナイ!竜児が私の彼氏ってことでしょ?絶対ありえないよ」
「うん、無いな。間違いなく未来にもそんな歴史は無いと思うぞ」

そうなんだ… そうは見えないけどなぁ、誰が見たってお似合いの2人だと思うよ。

「残りは友達とでも食べてくれ」
「うん、ありがとう」

「竜児!早く行かないとみのりんたち待ってるよ」
「分かったから!引っ張るな」

あれで恋人じゃないって言うだもんな… 参ったな。
でも2人はお互いに惹かれ合ってるんだよね?まだ自分の気持ちに気づいてないだけだと思うな。

せっかく同じクラスに居ることだし、私が憧れた2人の恋の行く末を見守ろうじゃないの。
あの2人ならきっと退屈させない、ドラマチックな恋を私に見せてくれるでしょ!





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