大河がどうやら夏風邪をひいたらしい。
「びええっくしょい!!!!」
「…女子にあるまじき豪快なくしゃみだな…」
「うるさい」
「具合でも悪いのか」
「そうなのよ。なんかだるいし、頭も痛いし。…ああ遺憾だわ」
「どれどれ」
竜児はそう言うと、自分の顔を大河の顔におもむろに近づけてゆく。
「え、ちょ、何?」
「動くなよ。じっとしてろ」
竜児が大河の両肩をつかんで顔をそっと近づける。すると、
「やめんかーーーい!!」
真っ赤になった大河が、竜児の手を振り払って竜児を足で踏みつけた。
「グハッ!な、何をいきなり…」
「ひ、人が風邪で弱ってる時に、キ、キ、キスしようとするなんて! この変態エロ駄犬!!
 ああ、なんて汚らわしい犬なの! 触れただけで足が腐れるわ!」
「ゴホッゴホッ、何を言ってるんだ大河。俺はただ熱が無いか確かめようとしただけ…」
「え?」
「ったく、いったい何考えて…」
「ふんんん!!!!!!」
「ぐあああ!!!なぜ、さっきよりも強い力で踏みつける?」
「まぎらわしい事するんじゃないわよ、このグズ駄犬!!」



「でも良かったよ」
「はあ?踏みつけられて良かっただなんて、あんたドMなの?」
「そうじゃねえ!お前が元気そうで良かったって言ってんだよ。
 人を踏みつけるくらいのパワーが残ってるんだから、ひどい風邪では無いな」
ようやく静まった部屋。その数分後、大河が竜児に声をかけてきた。
「ねえ…しなくていいの?」
「ああ、そう言えばそうだったな」
竜児は思い出したように大河に近づき、自分のおデコを大河のそれにくっ付ける。
「うん、大丈夫だな。熱は出てないみたいだ。いや…でも顔は赤くなってるような気が…」
「え?竜児、しなくていいの?」
「いや、熱は無いって今言ったろ。なんなら体温計を…」
「だから…そうじゃなくて…」
「お前、顔が真っ赤だぞ。どうしたんだ」
「だから…その…キ、キス…したくないの?」
「って、そっちかよ!」





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